事件記者のページ

遠い昔のTV番組を再現しようというムチャな試み

飯沢匡

2015-07-22 15:24:26 | 本と雑誌
私の盗作
升五郎と升六 39年10月 オー・ヘンリー 赤い酋長
右か左か?   39年11月 ワイルド アーサー卿の犯罪
無作法な青年 39年12月
新鮮な夜  40年 1月 モーパッサン かるはずみ
変なサンタ  40年 2月
歓迎される客 40年 3月 
シャープさん 40年 4月 
口紅  40年 5月
尻啖え観音 40年 6月
面壁九年  40年 7月
恐るべしインターネット(というか国会図書館)、昭和39-40年の文芸朝日が(目次だけとは言え)揃っちゃったのである、いやあなつかしい、ヨドチョウさんの名前を最初に見たのもこの雑誌だった、乾信一郎「動物の出て来る話」は中学生にも面白かった、連作短編「ただいま16歳」という連載もあって近藤勇を司馬遼太郎、由比正雪を何と風太郎御大が書いておられたのだが残念ながらどちらも記憶にない、印象に残ったのは寺内大吉の「高橋お伝」だけ、何と阿部お定と比較してたのが今思うとおかしい、お定さんは愛人を殺したわけじゃないと思うけど、お伝さんは立派な強盗殺人犯、当時なら死罪は当然だったのだ(これが風太郎御大の手にかかると「恋人に頼まれたから」になっちゃうのだが・・・)

おっと関係なかったね、問題は飯沢だった、これだけ年月が経ってると全く思い出せないのも多い、「歓迎される客」って何か変、「歓迎されざる客」じゃないかしらん(全然思い出せんけど)、元ネタが確実(かつ正解者あり)だったのはここに書いた3つだけ、平凡な青年がたまたま高級な洋服を着ちゃったおかげで有名人と間違われるという話があったハズだがどれだかわからない、正解はケラーの「馬子にも衣装」、まさにその通りのお話らしいのに正解はなかった(確か)とのこと、当時岩波文庫で入手可能だった、つまりそんなレア物ではなかったハズだから解せぬ話である、因みに「変なサンタ」は競馬で大穴を当てた青年がそのお金を(一部)見知らぬ少女にプレゼントする話、「口紅」は双子の子守に雇われた二人の女の子が・・・はてどうしたんだったかな?という話、誰か心当たりある?

堂々と「盗作」を標榜してるとは言えこれはクイズ、そのまま舞台を日本に置き換えただけじゃ知ってるヒトにはすぐわかるから捻りを入れなきゃいけないのは当然だが飯沢の捻り方は(いかに捻りだと言っても)かなりな悪意を持ってネジれてたんじゃないかと思う、モーパッサンの世間知らずだが聡明らしい奥さんが世間知らずな只のアホになってたり、毅然としてるべき男性が只のウジウジ君だったり、中でもヒドかったのが「赤い酋長」だった(って10のうち3つしかわからないんだがね)

升五郎升六の兄弟は歌舞伎役者の息子、升五郎(推定6年生)は背の高い美少年でアタマもよいが生意気だというのでマスコミ受けが悪い、升六(推定3年生)はチビでいささか鈍いがかわいいとTVでも人気、オヤジがどう思ってるのか書いてなかったが、何とはなし素直な弟の方が役者に向いてると思ってたフシがなくもない(どっちかが妾腹とかそういうことはなかったと思うけど)・・・
ってこれ性別が違うだけで有吉佐和子の「連舞」そのままじゃない?(と昨日突然気がついた)スマートで優等生だが踊りの評判はいまいちの姉と小柄で勉強は苦手だが踊りならド天才の妹、母親はもちろん世間も妹贔屓・・・まさかと思って調べたら「連舞」は昭和38年初出、しかも有吉は当時同じ雑誌に長編を連載中だった、何たる厚顔無恥な盗作(!!)という投書絶対来たと思うな

さて升五郎が二人組のならず者に誘拐された、拉致されたわけではなく誘い出されたのだが賢い少年はすぐに誘拐だと気づいて・・・どうしたかと言えば犯人をケチャップのビンでノックアウト、おいおい子供が大人二人相手にそんなことできるかよ?何でケチャップかと言えば元のタイトルが「赤い酋長」だからというジョーク(のつもりだったのじゃあるまいか?)、盗作として全くなっちゃないのもさることながら普通の小説として駄作だよね、蛇頭蛇尾もいーところ

ではどうすればいいかというと(オマエにゃ訊いてないって?まーいーじゃない)、少年が「僕、殺されるの?」とおびえちゃうってのもちょっとだし(あの頃誘拐されたら必ず殺されるとは決まってなかったような、また犯人たちもそれほどの悪人には描かれてなかったハズ)、かと言ってこの少年に元ネタのマネはできそうもないし
升五郎「僕、誘拐されたんだよね」
犯人「バレちゃしょうがねーな」
升「身代金いくら?」
犯「百万円」(記憶ないけどそれぐらいが相場だったかと)
升「高すぎ、五万円ぐらいにしときなよ」
犯「いくらなんでもそら安すぎだろ」
升「僕、そのくらいの値打ちしかないよ」(これ赤塚不二夫のマネ)
犯「マンガのマネするんじゃない」
升「盗作だからね、どうして弟をさらわなかったの?父さん、アイツになら百万円出すと思うけど」
犯「あの子は一人にならないだろ」
升「僕が協力してもいいよ、アイツ、僕の言うことなら聞くから」
犯「オマエ、意外と悪だな・・・・ってその手に乗るか!!」

ああ、どう逆立ちしたって盗作らしく落とせるわけはない、設定違い過ぎだよ