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遠い昔のTV番組を再現しようというムチャな試み

待合

2011-10-11 17:06:05 | 本と雑誌

ちょっと休憩、遠い昔「文藝朝日」という雑誌があった頃のこと(昭和39-40年)、飯沢匡がここへ「私の盗作」なるクイズを連載していた(ちょっと前、若い同僚に「飯沢匡知ってる?」と訊いたら「井沢元彦なら知ってます」とのことだったが)、海外の短編を翻案するから元ネタを当ててくれというもの、私は今に到るもわからずじまいのものが多いが当時も正解は少なかったハズ、飯沢という作家、独創的過ぎて「マネ」は下手だったんだなと、今になればわずかに記憶してる翻案と元ネタを比較してよくわかる

たとえば-「家で厄介者扱いされてる少年が誘拐されて見事に犯人をノックアウト」というのがあった、こう書けばO・ヘンリーの「赤い酋長」だろとバッチシ当てるヒトもいるかも、だけどそれは私がうまく要約したからで実際は「厄介者」少年の性格が違い過ぎてとても同じお話と思えなかった

あるいは-「占い師におまえはヒトを殺すと言われた男性が占い師を殺して占いを実現させる」、これは知ってるヒトならわかるよね、ワイルド「アーサー卿の犯罪」、だが飯沢の犯人はとんだウジウジ君でその殺人は実際には未必の故意すらない全くの事故だった、ずっと後に元ネタを読んであくまで意志的に行動するアーサー卿の毅然ぶりに感心したものである、こういうのを作家のできが違うというのかも

さらに-「夫婦が恋人をフリで待合に泊まる、翌朝夫は自分が浮気するかもしれないと思う」、オヤジが読んで即「モーパッサン」と言い、中学生の私は「そんなら解答出せば?」と言ったのだがオヤジによれば「ワシにわかるようなもん誰でもわかるに決まっとるでつまらん」だった、私も後で読んだが(タイトル忘れた)、浮気を予感するのは妻の方なんだね、これまたこっちの方がずっとよかった

何の話ってこれを読んだから私は長らく「待合」とは「連れ込み」のことだと思ってたんだよ、モーパッサンの夫婦が泊まるのは「連れ込みのできるキャバレ」だったし

だけど違うものみたいね(こちら)というのが「すばる」の新連載「めぐり糸」(青山七恵)、若い作者が戦後間もない時期の「三業地」を描く、出だしはなかなかに快調・・・だと思う、今時間ないので以下次号

追記-私が待合を誤解してた事情、やっぱ飯沢の文章がよくなかったと思う、若い奥さんが「待合って何、お女郎と遊ぶところ?」と訊くのだ、本来なら中年のダンナは「それは遊郭、待合は男が芸者さんを呼んで宴会するところだ、カタギの女はそんなとこへ行かない」と言ってオシマイだったハズ、モーパッサンの翻案になんかなりようがなかったのだ

さらなる追記-飯沢匡、当時50代半ば(こちら)、オヤジさんは官僚にして政治家、「待合政治」を知らなかったハズはないんだがなあ・・・・・


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