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【小説】竹根好助の経営コンサルタント起業 4章 迷いの始まり 15 初めての注文は相本との連係プレー

2024-06-14 12:03:00 | 【小説】竹根好助の経営コンサルタント起業

  【小説】竹根好助の経営コンサルタント起業 4章 迷いの始まり 15 初めての注文は相本との連係プレー  

 
■ 【小説】 竹根好助の経営コンサルタント起業 
 私は、経営コンサルタント業で生涯現役を貫こうと思って、半世紀ほどになります。しかし、近年は心身ともに思う様にならなくなり、創業以来、右腕として私を支えてくれた竹根好助(たけねよしすけ)に、後継者として会社を任せて数年になります。 竹根は、業務報告に毎日のように私を訪れてくれます。二人とも下戸ですので、酒を酌み交わしながらではありませんが、昔話に時間を忘れて陥ってしまいます。それを私の友人が、書き下ろしで小説風に文章にしてくれています。 原稿ができた分を、原則として、毎週金曜日に皆様にお届けします。

【これまであらすじ】
 竹根好助は、私の会社の後継者で、ベテランの経営コンサルタントでもあります。
 その竹根が経営コンサルタントに転身する前、どのような状況で、どの様な心情で、なぜ経営コンサルタントとして再スタートを切ったのかというお話です。

 1ドルが360円の時代、すなわち1970年のことでした。入社して、まだ1年半にも満たないときに、福田商事が、アメリカ駐在事務所を開設するという重大発表がありました。
 角菊貿易事業部長の推薦する佐藤ではなく、初代駐在所長に竹根が選ばれました。それを面白く思わない人もいる中で、竹根はニューヨークに赴任します。慣れない市場、おぼつかないビジネス経験の竹根は、日常業務に加え、商社マンの業務の一つであるアテンドというなれない業務もあります。苦闘の連続の竹根には、次々と難問が押し寄せてくるのです。

◆4章 迷いの始まり 15 初めての注文は相本との連係プレー

  ※ 直前号をお読みくださるとストーリーが続きます。
     直前号 ←クリック

 待ち遠しく思っていた見本も見積書も、翌々日には着いた。よくできた見本である。早速、例のダウンタウンにある文具卸商に電話して、その日のうちに訪問をした。
 見本と見積書を見て、即座に十個の見本注文を取ることができた。日本から送るので、代金は前金で欲しいと要求すると、その場で小切手を切ってくれた。百ドルにもならない注文であるが、アメリカでの第一号の注文である。それも、かほりとの連係で決まったことが、竹根の喜びを倍増させた。もちろん、テレックスですぐに送るように手配をした。
 地球儀のブックエンドの見本を持って、文具卸商を回り始めた。小さいながら、注文がポツポツ入るようになった。しかし、これだけでは竹根の人件費や家賃をまかなうにはほど遠い金額である。戦略と言うほどの大げさなことではないが、竹根は考えた。当面の行動計画として、四項目を挙げた。
  ①ブックエンド及びそれに類するデスク上の小物ビジネス
  ②オフィス家具ビジネス
  ③レタリングセット
  ④統計器
 デスク小物については、相本が次々と見本と見積書を送ってくるので、それをブックエンドの顧客に紹介すると注文に繋がり、日銭稼ぎができるようになってきた。相本との連係がうまくできるようになってきた証であろう。
 竹根は、見込み顧客を訪問しても、はじめは会ってもらえない、会ってもらっても子ども扱いされてしまう、名前をなかなか覚えてもらえない、等々営業活動以前の問題で悩まなければならなかった。そこで竹根は対策を考えた。相手のバイヤーと商談をすると、その場でタイプライターを借りて、商談確認書を作成することにした。どのような目的で訪問し、誰と、どのような話をしたか、等々をその書類に書いて、両者がサインをし、オリジナルをバイヤーが、コピーを竹根が持つようにした。そのようなことは、アメリカのセールスマンはしない。
 竹根が要領よくタイプをする様を見て、「タイピングがすばらしいね」と言って、女性数人を呼び寄せたバイヤーもいた。そのときには、数人のタイピストを相手に、スピードと正確なタイピングの飛び入りコンテストをやらされた。竹根がトップの成績で、一同をうならせたこともある。
 竹根のやり方が、相手に印象付けを強くすることにつながり、再訪問でもすぐに商談に入れた。そのために、リピート・オーダーが来るようになってきた。
 しかし、デスクトップ小物だけでは単価が安いだけに、件数は増えても金額は張らない。手間もかかる。次第に一人だけではやってゆけそうもなくなった。本社に秘書を入れたい旨を伝えたが、角菊からはつれない返事が返ってきた。せめて、経費費分だけでも稼げという指示である。

  <続く>

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