版画草子 All That Print Work

自作版画作品と日常の写真を日記形式で紹介してゆきます。
(画像の無断使用は固くお断りします。)

新しい楽しみー短歌投稿

2016-10-12 16:27:26 | 作品 Works




前回も一首 版画作品と共に和歌を掲載しましたが 
この病を得てから 短歌を作る楽しみを覚えました。

以前 このブログでも何度か自作俳句を紹介しましたが 作るのは俳句が中心で
和歌にはあまり馴染みがありませんでした。
でも 状況や感情 想いを表現するには 俳句の象徴的あるいは点景的で凝縮された言葉の表現よりも 
より散文的な和歌が合っていると気付き かなり冒険ですが三十一文字に挑戦してみました。

癌病というとんでもない状況に遭遇した機会ですので
テーマを「癌」にしぼって 今の心情・生活を詠む事にしました。

ただ 作句の場合もそうですが 一人で楽しむのも勿論いいのですが
独りよがり 自己満足に陥ってしまいそうで 
尚かつ 長続きもしないように思えて
何か励みになる刺激と 客観的に自作を評価してくれる場が欲しいと考えて 
新聞に投稿することにしました。

だいぶ前から 購読の朝日新聞に一週間に一度月曜に掲載される
「朝日歌壇・俳壇」を愛読していたので まずはこちらに投稿してみる事にしました。

(無謀というか 怖いもの知らずというか… 
 なにせ「朝日歌壇」は明治43年(1910年)石川啄木が選者として始まったものです。
 啄木以降の選者には 島木赤彦・佐佐木信綱・斎藤茂吉などそうそうたる人々が勤めています。
 現在の選者の一人馬場あき子さんは 女流第一人者として歌壇の重鎮であります)

一回に2首 毎週投稿を自ら課して 9月の中頃から始めました。
数十回あるいは何十首も投稿しなければ 採用なんてされないだろうと思って気楽に出したのですが
何と!!! 今週の月曜 二回目に投稿した一首が初めて採用されました。
お見舞いにいただいた夕張メロンを織り込んだ一作です。

こちら


2016年10月10日付け朝日新聞より


自分で言うのも何ですが 快挙です!
海外からも含めて毎週数百首 あるいはそれ以上の作が応募される中から 選者4人によって40首選ばれます。
そんな狭き門を2回目で通過して採用されるなんて 思ってもみませんでした。

(余談ですが 私の作の右となり 松田わこさん(中学3年生) 一人置いて 松田梨子さん(高校生)姉妹は
お母さんの松田由起子さんと共に朝日歌壇のスター的存在で 
その隣に掲載されたというのが 何だか年甲斐も無く嬉しかったです) 

どうもこの先 調子に乗りそうです…..


でも 不安定な体調と気持ちの落ち込みを防ぐには この上ない効果と思って これからも励むつもりです。

残り少ない時間を目一杯 楽しむ事が出来そうです。
 









小康状態

2016-09-28 11:34:08 | 作品 Works




癌進行のあまりの早さと 数種類の癌(未分化癌・粘液癌等)の中に超悪性のスキルス胃癌(印環細胞癌)が入っている事などで
今年の夏は まず越せないだろうと思っていました。
ですので前回の「友人へのメール」を更新した頃は かなり 切羽詰まっていて
我武者らに死を覚悟し 葬儀屋を決め 遺影を選び 
死後の連絡先と 残された作品の扱い等を相方に頼んだりして それはもう 悲壮な状態でした。
 
ところが どうせ気休めだろうと高をくくっていた
抗がん剤(TS-1とドセタキセルの組み合わせ)が想像以上に効果を上げて
現在は拍子抜けする程 小康状態を保っています。
腹膜内の癌細胞数を表す 腫瘍マーカー(CA19-9)も1700から150まで減りました。
(正常値は37以下)
同じく CEA は4(正常値は5以下)

吐き気等の 副作用が少なかったせいか 食欲も少しづつ戻って 体重も1~2kg増え
この分でいくと年内は持つのではないか あるいは来年の桜も見られるのでは と 欲を出すまでになりました。

しかし 私の癌はそんなに甘くはないようです..... 
事実 先日中間検査の後に担当医から 完治はないでしょうと 正直すぎる言葉を貰いました……
(この先生 初回の面談での会話から すべてを話そうと決めたようで 何でも話してくれます。
 私も気に入っていますし 信頼しています)
 

で この小康状態がチャンス この間に作品をできるだけ創ろうと決心し 今までに2点完成させました。
体力がまだ完全に回復していないので 小品ですが
今回はこの作品を見ていただこうと思います。


まず1点目
相方が家の近くで摘んできた名前も判らない野の花を一輪挿しに挿したものです。




「野の花」絵サイズ 156×126mm 紙サイズ 210×180mm ED 50部

この作品には和歌を付けてみました。

  病得て 常には見過ごす野の花が 目にも新たに 見ゆるこの頃





2作目は これも我が家の近くに咲いていた「月見草」です。
この花 暗くなると咲き始めて 朝明るくなると枯れてしまいます。
一晩だけの命です。
次の晩は別の花達が咲き競います。
その儚さと可憐さに惹かれました。




「月見草」 絵サイズ 146×114mm 紙サイズ 210×180mm ED 50部

こちらの作品には俳句を添えました。

  振り向けば ひと夜の夢か 月見草

まぁ 辞世の句と 気取ってみました。


何も考えず 脅えず 制作に没頭し 和歌や俳句を捻るのが 今の私にとって 一番の薬のようです。

上記以外にも 小品1点と 大判1点の構想ができているので
これらを 何とか完成まで持って行きたいと思っています。


致命的な転移が始まらないよう祈るのみです。








猫踊り

2015-04-08 16:39:17 | 作品 Works




突然ですが 今日「鰊の切り込み」を仕込みました。
2年振りに形のいい鰊が手に入って 3匹は塩焼き 2匹を切り込みに。
一週間ほどで食べ頃になります。
追ってレシピと共にご紹介しますね。




さて 今回は久し振りに新作の紹介です。
テーマは「猫」
今我が家には17歳になる一匹の猫がいますが かつては5匹飼っていました。
そんな彼らを思い出しつつ描いたのが今回の「Dancing Cats」です。



「Dancing Cats」ED70 160×291mm

猫は様々な動きや 時には信じられない姿態を見せて 我々を楽しませてくれます。
特に交尾した直後の メス猫の動きは「猫踊り」とも呼ばれて 実に艶かしく面白い動きを見せてくれます。
事がことだけに 猫達もなかなか見せてはくれないシーンですが 
私はかつて2回見た事があります。

1度目は小学生の頃 近くの公園で見たのですが
いつもと違う猫達の動きと メス猫の狂ったように動き回る様子が
何か「いけないもの」を見てしまったようで 
妙に動悸が激しくなったのを覚えています。

2回目はこの家に越した頃(25年程前) 
この辺りのボス猫でしょうか 
いい面構えの茶トラが メス猫を連れてよく庭に遊びに来ていました。
そのボスが 白昼 我が家の庭で堂々と やらかしたんですね。
そのボスも見事ですが メス猫の「歓喜の踊り」にも感動しました。

もちろんこの時は 仔細に観察したのは云うまでもありません。

(この頃まだデジカメも携帯も無かったので画像を残せなかったのが残念です)
  
この絵も「猫踊り」をベースにしています。








「いぇ~ぃ」という彼らの声が聞こえそうな動きを出すのに 苦心しました。



と云う訳で この猫シリーズ
「CATA & BOYS」「CATS & GIRLS」「DANCING CATS」と続きましたが
もう少し描いてみたいと思っています。








さてさて 漸く更新です

2014-12-21 17:12:38 | 作品 Works


さてさて いつもこのブログを見て下さっている皆様 
すっかりご無沙汰して申し訳ありません。

いや何 何処かへ出かけていた訳でも
また 胃潰瘍が悪化した訳でも ありません。

たまたま 滅多に無い わたくし事の用事が めちゃくちゃ集中し
いつもの わたくしの仕事・新規制作・笛の絵付けが 重なったせいなのですが......

忙しいとは言え 毎日しっかりお酒もいただき
同期達と酉の市なんかにも遊びにいったり もちろん投票もしました。

しかし何ですな.... 投票しがいの無い選挙でしたね.....



そんな訳で 今回はさらりといってみます。


裏庭の落ち葉

今年からこの落ち葉を集めて いつも野菜をいただくご近所の市議さんへ持っていく事になりました。
堆肥を作るそうです。
今回はドラム缶に換算して6本ほど かなりの量です。
この落ち葉が美味しい野菜の栄養になるなら 枯れ葉集めも苦ではありません。




これは毎年 今時期咲く「シャコバサボテン」です。
クリスマス頃咲くので クリスマスカクタス とも言うそうです。
言われてみれば何となくクリスマスっぽいですな。
二鉢あるんですが どちらも見事に咲いてくれました。
「老花眼」を楽しませてくれる素敵な花です。




さて最後に 先月のことですが
22日の浅草「酉の市」に同期達といってきました。
本当はこれだけでブログに掲載するつもりでしたが つい出しそびれてしまって.....
で 今回はほんのさわりだけを



酉の市がおこなわれる鷲神社へ入る前の行列です。
入り口の鳥居まで この時は40分!
夜たけなわの時間ですと ゆうに2~3時間はかかるそうです。
凄い人気です。



その賑わいです。
我々17人は はぐれて迷子にならないよう 境内2ヶ所で確認集合した程です。

下町の活気溢れるお祭り 結構でした!


で 最後はいつもの打ち上げ宴会



浅草寺裏筋にある大衆酒場「水口食堂」
店名がいいですよね。
フライ盛り合わせとか タマネギと豚肉の炒めたものとか.....
注文すると「ご飯付けて定食にしますか」 と聞かれたりする
まごうことなき大衆酒場でした。

浅草の夜も更けて 二次会はホルモン通りで ホッピーと焼きトン
仲間と遊ぶ楽しみを満喫した一日でした。



といったところで
次回は やはり かなり 先になると思いますが 
新作のご紹介を予定しています。
猫達が踊りまくる小品です。






 

 







新作「Melancholy KAGUYA 2014」

2014-11-18 16:33:18 | 作品 Works




さて 久し振りに新作をご紹介します。
お伽草子シリーズ あるいは昔話シリーズに属する作品です。

この作品の構想を想い至った動機は ある日突然来ました。
頭の何処かにしまい込まれていたデューラーの銅版画「Melancholia」と
「かぐや姫」が 何の前触れもなく 無理なくぴったり重なったのです。
「これはいける!」
鳥肌が立つ程のわくわく感
何かの啓示のごとく 向こうからイメージが近づいて来た感じでした。

では 順に説明してみます。



「Melancholia」     (wikipediaからお借りしました)

ドイツの画家・版画家アルブレヒト・デューラーが1514年に製作した銅版画
多分エングレービング(直刻技法)と思います。

かなり知れ渡った作品なので 版画好きの方なら見覚えがあるんではないでしょうか。

wikipediaの解説には
<「憂鬱」をテーマにしたもので、天使が憂鬱に沈んでいる。
魔方陣をはじめとして、寓意的な画題がいくつも描かれており、様々な解釈がある>

この版画のテーマ「憂鬱」を本歌取りとして
かぐや姫の「憂鬱」と 現代の私の「憂鬱」を描き込んでみよう というのが私の目論みです。
とは言っても この想いを具体的なイメージに変換するのには だいぶ手こずりましたが.....



そして仕上がった作品がこちら


「Melancholy KAGUYA2014」 540×440mm ED70 28色35回刷り

天使の頬づえポーズと同じく かぐや姫も頬づえを付いています。
天使の様な深刻な憂鬱ではなく 姫はどこか遠くを見つめて 想いに沈んでいる表情です。
近々不本意ながら 月に帰らなければならない 気持ちの整理が付かない そんな目線です。

「憂鬱」というより「物思い」感の方が かぐや姫には合っている様に思います。 





半分開いた丸窓の外には キノコ雲が月を隠さんばかりに わき上がっています。
この部分は右下の和歌と連動して 今の私の憂鬱を出してみました。



歌は逆さまなので読みづらいですが 抜き書きしますと

 天(あま)かくす 
 くも立ちのぼる迷乱古里(めらんこり)
 早や 忘れいる
 様ぞ うらめし 

(もちろん自作です 和歌と云うより狂歌ですかね)

和歌の左には 何か漢数字が書かれていますが これは篠笛の譜面です。
曲は「さくら」
かぐや姫が右手に握っている赤い笛と連動しています。
(Melancholiaでは天使の右手にはコンパスの様なものを持っています)



三毛猫が赤とんぼを狙っていますが 多分捕まえる事は出来ないでしょう。
その奥には「火蝋燭」が夜の時を刻んでいます。
この三点はかぐや姫の「物思い」の時間の長さを感じさせる道具として 描きました。


いかがでしょうか。
「Melancholia」のような寓意性はありませんが
ふっとすると 気が沈み込んでしまいそうな 現代の気分を かぐや姫を借りて表現してみました。










新作紹介 その2

2014-06-25 16:56:16 | 作品 Works



さて W杯も日本は順当にランキング通りの結果となりましたが.....
初戦を部分的に観ていた相方によりますと
「何か..... サッカーセンスが全然違うみたい....」と言っておりましたね。
(私は観ていないのでわかりませんが)
2戦目はまさしく「90分の無駄走り」のようで....

ただ ゴミの後片付けでいい評判が残ったのが 唯一の成果でしょうか...
ちょっと寂しいですな。



と云った所で新作2作目です。



CATS & GIRLS 170×271mm ED 70 21色26回刷り

娘一家の孫二人をモデルに 1歳から4歳位までの動きや表情に留意してを描いてみました。
女の子ですが かなりやんちゃです。

UP







登場している猫達は かつて我が家にいた猫を思い出しながら描いてみました。

子供達がそれぞれ夢中になって遊ぶ様子 
それを笑いながら眺めている瞬間 これこそ穏やかで平和な時間 他に変え難いひと時です。 


この子達が成人する頃にはもう私は居ないかもしれませんが
その頃には どのような世界になっているか.....
果たして 日本は今以上に 住み良い安定した国になっているか....
 
残念ながら 昨今の状態では そのようになるとは思えませんな....

実際 今の状況からして 
集団安保・自衛権などを しゃにむに実現化しようとしているのですから....
この問題ひとつを取っても
実現すると 死ぬ可能性の高くなった自衛隊に応募する若者は確実に減るでしょうし
逆に 現隊員は見切りをつけて退職する人が増えるかもしれません。
それでなくとも 少子化・人口減が確実で....
人員が足りなくなったら.... 行く先は徴兵制....

いやはや この子達の将来は決して穏やかではなさそうです。


今回の絵を描きながら この子達のために
少なくとも「戦争を放棄する」という条文を絶対 無くさせない 空文化させてはならない
という思いを あらためてした次第です。





 







新作紹介 その1 とお知らせ

2014-06-11 11:50:55 | 作品 Works



何とも鬱陶しい梅雨になりました。
今年は突端なから雨が多くて蒸し暑いようです。
この様な高温多湿の時期は 
版画制作・保存にとっては 黴(かび)が発生しやすいので気を遣います。
こんな湿潤な環境なのに 昔から版画が盛んなのは 不思議と云えば不思議ですが。


と云った所で 新作のご紹介ですが 
その前に全道展のお知らせを



今年も審査に参加できず 会員として責任を果たせなくて 申し訳ない気持ちです。
案内状の木村由紀子さんの作品写真を見ても 
今回も力作が揃っていそうで 大いに期待できる展覧会と思います。
多くの皆さんに観ていただきたいところです。


さて 新作ですが
我が家には今一匹の猫しか居ませんが かつては五匹もいて 賑やかでした。
猫が少なくなった代わりに 今は孫が四人になって これまた賑やかです。

そんな我が家の状態を小振りの可愛い作品にしてみました。
こちら


「Cats & Boys」 170×291mm ED 70 20色25回刷り

息子の所の男の子2人をモデルにしています。
(孫達は我が家の猫とは実際に遊んだ事は無いので 
ー猫がさっさと逃げてしまうのでー これは私の想像上の情景です)

UP




1歳から3歳位の男の子らしいやんちゃさを 何とか出したいと描いてみました。




子供の動きや表情と 猫の様子などは 日常の中で自然に身体で感じ得た結果と 
意識的に観察しえた環境のお陰でしょうかね。

子供達が無心に遊んでいる情景こそ 何より大切にしたい今日この頃です。


次回は 娘一家の女の子2人をモデルにした作品です。










 

泣き嫌料理 その17

2014-05-26 17:45:24 | 作品 Works



10ヶ月振りの「泣き嫌料理」の話題です。
今回は相方に代わりまして私が書き込んでまいります。

そしてそのお話は「ラーメン」です。
このブログでも何回か登場していますが
(例えば「緑茶ラーメン」とか こちら
今回もちょっと変わったラーメンです..... と云うより メンではありません。

若い頃はラーメンと半ライスのセットを昼食によく食べました。
もっと昔の食べ盛りの頃は 
家でラーメンを食べた後 スープにご飯を入れて スープ茶漬けにしてかき込んだものでした。
ラーメンとご飯って 良く合うんですよね。

そこで相方は閃いたのでした....
「ラーメンスープでご飯を炊いてみよう!」

出来たのがこちら



具はラーメンの定番 メンマ・豚肉・海苔・半熟卵・ネギ・胡椒 です。
ご飯を口元に運ぶまでは ラーメンそのものの香り
口に入れると ご飯 でも まんまラーメンの味
「すすらないで食べる」ところが違うだけ

うぅ~~ ナマラいけます! 

UP


名付けて「ラー飯」

その昔 インスタントラーメンに量を増やすため ご飯を混ぜて食べた事がありますが
「麺入りおじや」ではなく 「炊き込みご飯」にしぼったところが ミソでしょうか。

特にレシピは無くともお分かりですよね。
(炊くときに刻んだメンマを入れています)
インスタントラーメンの余ったスープを利用しても出来ますし。

「ラーメン」はもうすでに World Food として 世界中に愛されている今日では
どこかで同じ様な「ラーハン」が作られているかもしれませんな。

ちょっとしたお昼ご飯に お試しを
(ビールのつまみにも合います そして冷えても美味しいんですよ)



さてさて 
相変わらず我が家はオカシナ事ばかりやっていて 飽きれている方が多いかもしれませんね。

気を取り直して
次回は 新作2点をご紹介します。





新作紹介 その2

2013-12-04 10:37:02 | 作品 Works


さてさて 「運用」を誤ると大変な事になる というのは
2年前にも経験して 未だに苦しんでいる状況があるのに
またも 一歩「運用」を間違うと 危険この上ない法律が 妙に急いで作られようとしている昨今
皆様いかがお過ごしでしょうか。


今回は引き続き 新作のご紹介
五大おとぎ話の一つ「花咲か爺」をテーマにした「花咲か爺と木伐り爺」です。

(ちなみに五大話とは 桃太郎 金太郎 浦島太郎 花咲か爺 です。
 その後につづくのは さるかに合戦 一寸法師 舌切り雀 鶴の恩返し 笠地蔵
 誰が決めたのかは判りませんが.....)


「ここ掘れワンワン」で始まる「花咲か爺」は皆さんも良くご存知と思いますが
このような 良い爺ぃと悪い爺ぃ(あるいは婆ぁ)が出てくる話として
「瘤取り爺」「舌切り雀」などがあります。

共通するのは
正直で 欲は控えめ 文句も言わず 優しくて 我慢強い 良い爺・婆
方や 嘘つきで 強欲 人を羨んで 意地悪 楽して生きようとする 悪い爺・婆
そして 結果 良い爺・婆が幸せになる。

仏教的・儒教的な影響が大きいのでしょうが
いかにも時の権力者に都合のいいモデル達です。

でも現代では このままではちっとも面白くはありません。
そこで今回の作品では ひとひねりした爺達を登場させました。


2013年制作 SIZE 540×455mm ED 70部 23色29刷 赤貝箔使用



枯れ木に花を咲かすなんて 誰もやった事がない 成功したらみんな驚くだろう 
無駄かもしれないけど ひとつ試してみようと想う 夢を追いかける浪漫的な爺




一方 
咲かない木なら 伐って薪に替え 跡は畑にした方がよっぽどいいと想う 
無駄が嫌いで 実利追求の現実的な爺




さてさて どちらの爺がいい結果を得るかは...... 判りませんな......



本来の話からは 随分かけ離れた構想ですが
私的に現代の「花咲か爺」として制作してみました。

そもそも昔話・おとぎ話は時代と共に人と共に かなり変えられてもいます。
そこが私にとっては創作上大きな魅力になっています。
これからも昔話をベースに 大胆に変容させつつ 納得できる作品を制作したいと想っています。



来年の制作予定として 次作は昔話とはちょっと違いますが「牛若丸と弁慶」
そしてまたまたかぐや姫をテーマにした「MELANCHOLYかぐや」
の2点を構想しています。
今からワクワクしながら原画を描いています。











  



新作紹介 その1

2013-11-24 11:22:32 | 作品 Works



旬の札幌秋景色を優先し 前回は胃が破けたお話をして
自作紹介がすっかり遅くなりました。

私の場合 作品を完成させてしまうと 急にその作品への興味が薄れてしまう事もあって
自作を語るのもつい億劫になってしまいます。
常に関心があるのは 出来上がった絵ではなく 次に作る作品群の事ばかりなものですから。

とは言いながら 今回は久し振りに版画草子らしいお話をいたします。



まず最新作「羽衣伝説 天女2013」です。


2013年制作 SIZE 540×443mm ED 70部 26色31刷 赤貝箔・虹彩箔使用


「羽衣伝説」はご存知の方も多いと思いますが 
1200年前の 滋賀県長浜市の余呉湖を舞台した伝説が最も古いようです。
その話が日本各地に伝播して 最近話題の三保の松原にも似た様な物語が伝えられています。

ざぁっと解説しますと
「白鳥の化身の天女が 羽衣を脱いで水辺で水浴する様子を男が見ていて
あまりの美しさに羽衣を隠し 天に帰れず困っている天女を妻にしてしまう。
子までもうけた天女は しかしその後漸く羽衣を見つけて天に帰ってゆく」

(諸説・変形話が各地域に存在するようです)

言ってみれば 覗き見 下着ドロ 拉致・略奪結婚 というとんでもないお話なんですね。
現代ならば当然犯罪として扱われますが
昔話のおおらかさというか いい加減さというか 
夢と憧れを身勝手に詰め込んだところが 私は気に入りました。




版画の持つ大きな特質・魅力として「軽み」と云うのがあります。
荘厳なOPERAではなく 砕けた可笑しみや艶もあるOPERETTAの世界
あるいは 俳句に対する川柳表現 の様なものでしょうか。 

今回の作品はこの軽みに重点を置いて制作してみました。




羽衣を取られた天女は「ちっ」と舌打ちしながら 
有頂天になっている男に 指鉄砲を向けていますが
その天女もあの羽衣では 天に帰れそうにない程 太ってしまっています。


思わずニヤッと笑って この絵を楽しんでいただければ 私の思惑は大成功です。 


つづく





二つの版画展

2013-10-10 17:28:48 | 作品 Works



今年のヤクルトスワローズは惨憺たる結果に終わってしまいました.....
小川泰弘投手はルーキーで16勝をあげて最多勝&最高勝率を獲得したのにもかかわらず
バレンティンが輝く60本ホーマーを達成したのにもかかわらず..... です。
ファンとしては寂しい限りです。
打てずに打たれる1年だったんですね.... しょぼっ.....
来季は無理をしてでも神宮に応援に行かねば!


と云ったところで
今回は二つの版画展のお話です。

まず 上野都立美術館で開催中の「日本版画協会展」

このところ上野公園は悪い意味で すっかり整備されてしまいました。
煙草を楽しめず ローストし過ぎの不味いコーヒーを出すスタバなぞが 進出したり
妙に小戯れたcafeもできて(もちろん禁煙)
なんか 気取ってんだよねぇ.....
良い意味でのざっかけない公園が姿を消してしまいました 嗚呼.... しょぼっ....


さて 版画展

入り口です



今年は特別企画などが無いので いまいち盛り上がりに欠けていた様に思いますが
それでも圧倒されるような超大作が がんがん出品されていましたね。
若い作家の意欲を感じますが いやいや 制作はさぞ大変だろうなと察します。
(お金も体力も)



会場の一角で恒例の「小版画チャリティー販売」が行われていました。
なんか あまり売れていない様な.....

で 私の出品作



この2点に関してはいずれこのブログで詳しくご紹介いたします。




版画協会展と時期を同じくして「CWAJ現代版画展」も開催されています。
9日のレセプションに行ってきました。


開会式

2年前に建て直された新装アメリカンクラブに 総勢188人の版画作家の作品が展示されました。
相変わらずセレブな雰囲気の中で ワインなどいただきながら 
出品者は 招待客・版画コレクターの方々とお話して さりげなく自作をアピールします。



やはり そうそうたるメンバーの作品が並んでいるので 同じ作家の立場でも見応えがあります。

最近の不景気のせいか 売り上げも少なくなったそうですが
それでも3日間で二千万円くらいは売られるようです。



自作「猫姫」の前で (老けたなぁ....)


このCWAJ展は10月18~20日まで神戸外国倶楽部でも開催されます。
機会がありましたら是非ご覧いただきたいと思います。



てなわけで
日本現代版画を網羅する「版画協会展」と「CWAJ版画展」のご紹介でした。





次回は季節的にもぴったりの「鍋」のお話





 




篠笛の絵柄

2013-03-22 17:30:29 | 作品 Works


東京は早くも桜が満開となりました。
上野・千鳥が淵など ニュース等で見事な桜が紹介されています。
我々テクテク隊7名も24日に花見見物を予定していますが
昨日までは当日は雨の予想..... でも最新の情報では なんとか曇りのようです。
さて どうなりますか.... 早めの花より団子宴会となるやも.....


というところで 今回は篠笛の絵付けのお話です。
お陰さまで
前例のない「箔で絵を施した篠笛」ということで 数多くの篠笛愛好者に利用していただいています。


多くは「定番」として3種の絵柄から選んでもらっています。



上から 黒笛「天の川」「花吹雪」「雲形」 赤笛も同様 
笛本体としては他に茶笛もあって同じ様に絵柄を施します。

いずれも日本の自然を感じさせる形象をデザイン化したもので
眺めても飽きず 華やかで 持っている事自体 喜びになる様な笛を目指して制作してきました。 


たまに定番3種以外に 自分だけのデザインが欲しいという奏者のために
オリジナルデザインも受けています。



家紋の「下がり藤」を入れて欲しいという注文で 
紋だけでは寂しいので華やかな花吹雪を組み合わせたものです。




家紋ですと笛に合わせて大きさを調節するのはさほど難しくはないのですが
篠笛のたて幅(直径)はほぼ20mm前後なので デザイン化も難しい場合があります。




これは 花札の「猪の鹿蝶」の鹿を入れて欲しいという注文でした。
結構難儀なデザインでしたが 花札の縦に長い鹿を 強引に走らせて横柄にしてみました。



この絵柄は何とかこなせましたが もし「麒麟の絵」を なんて云われたら きっと悩むでしょうな。
(麒麟が昼寝している絵になるかもしれません.....)


最近では 京都の方から「満月と雲」という注文がありまして





銀散らし・金箔雲形・虹彩箔満月をあしらったゴージャスな篠笛を3本制作しました。
この笛で演奏する舞台は さぞ華やかなことと思います。


写真が残っていないものでは 



2点のデザイン図です。
上は「鳳凰」 
発注者からネットにあったという画像が送られてきまして それを元にデザイン化したものです。
発注者がどの様なイメージを持っているのかを推測しながら 
幅20mmに収まる絵を制作するので やはり難しい仕事でした。

下は「蓮」
蓮紋様を黒笛に入れて欲しいという注文に さてさて 困りました。
というのは 黒地に金の蓮を描くと ほとんど「仏壇」風になってしまうからです。
この場合も 何とか華やかさをだして 発注者に満足してもらいました。


オリジナルの特注デザイン笛は 思いがけない要望があって 
面白くもありますが 悩みも多いです。
でも 苦労して完成させ 喜んでもらった時は 絵描き冥利ですね。



蛇足ですが もっと興味のある方 あるいは発注したい方は
どうぞこちらも御覧下さい。

http://rippei.com/


 


新年おめでとうございます

2013-01-06 11:58:10 | 作品 Works





いよいよ今年も始まりました。
何となく不安な想いは 昨年よりもいや増していると感じるのは私だけでしょうか.....

と言っても 何とか乗り越えるしかないんですがね.....


で 少しでも元気が出るように お正月らしい新作をご紹介します。
新作と云っても昨年10月に完成して 
日本版画協会展に出した作品なので ちょっと古めですが.....


「金太郎」540×445mm ED 70部 18色28回刷り

江戸末期には干支の絵と共に 子供の無事な成長を願って金太郎の絵も飾られたそうです。
5月5日の節句に使われ始めたのは どうも明治になってからの様です。

ご存知の方も多いと思いますが
金太郎は幼名 長じて坂田金時 「金時豆」の由来
あるいは 姉だか 妹だか はたまた息子だか.... 定かではありlませんが,金平という名の力持ちがいて 「キンピラごぼう」の由来とか
いずれにせよ 日本人には馴染みの深い 金太郎です。

そのUP



今年の正月も我が家に孫達(3 ~ 0.7歳 4人!)が来襲して
金太郎に負けじ劣らず まぁ その賑やかな事 元気な事 
私も相方も圧倒されて くたくた.......   でも 幸せな事ですな。

それにつけても 子供達すべてが 元気に無事に 育つ世界であって欲しいものです。



さて 今回はもう一つ話題

昨日 相方が出先での時間調整にマクドナルドに入った時の事。
クリスピーチキンとホットコーヒー(計¥200)を注文して¥500玉を出したところ
どうも「おつり」がなかったようで 何やら店員同士があわてている様子
そうこうしている内 対応した店員がおつりと共に 下記のカードを差し出したそうです。 



そうなんです
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60秒以内に注文品を出すにあたっては 店員達は相当練習したでしょうに....
よりによっておつりでつまずくとは お気の毒に.....
 
しかし相方にとっては
「こいつぁー 春から~~ 縁起が いいわい」







新作の紹介 その2

2012-08-10 17:00:42 | 作品 Works


先日 埼玉県狭山市の中学校のプールに金魚が4~500匹泳いでいたのを水泳部の生徒が発見したというニュースがありました。
これを読んだとき何となく 夏場らしい話題で 可笑しいような 楽しいような そんな感じをうけました。
入れたのは市内の女子中学生3人で お祭りの余った露天の金魚をもらったけど 飼いきれなくてプールに忍び込んで放したとの事
これぐらいだったら ちょっと説教すればいい話し と思ったのですが.....
ところが 警察に届け出た女子中学生3人は「建造物侵入」と「器物破損」で書類送検されるそうです......

なんとも余裕の無い話です....

事程左様に 昨今の日本はどうも堅苦しい空気に溢れて 余裕の無い社会になりつつあるようです......
嫌ですな.....

ちなみにその放たれた金魚は中学の生徒達と近所の住民が引き取ったそうです。





で 新作の続き

何のお話かお判りの方も多いかと思いますが こちらが完成作


「一寸法師 飛躍」 540×470mm ED 70部 31色38回刷り


こちらが原画



一寸法師の話は良くご存知のことと思います。
「一寸(約3cm)以上大きくならない少年が お椀の船と箸の櫂・針の刀を持って都に出て 鬼を退治し 
 その宝物の打ち出の小槌で大きくなって 財宝も嫁も手に入れ 最後は中納言にまで出世する」
というのが良く知られているお話です。

これは明治以降に作られ定番となった話のようで 
平安期のお伽草子では 細かい所は少し内容が違っていますが 
おおむね小人が大きくなって幸せになるところは共通しています。

苦労しながらも 憧れ・羨望を具現化する 夢のお話
大なり小なり 時代が変わっても 人間の普遍の望みのようにも思います。
冷静に見ると そこに儚さ(はかなさ)・悲しさもちょっぴり感じられる..... 
そんなところが 私がこの一寸法師に惹かれた理由ですね。

他にも似た様な「小人話」には アンデルセン作の「親指姫」や
内容は違いますが アイヌ伝説の「コロポックル」などもあります。
その内コロポックルは作品化してみたいと考えています。

では UPを









そうそう 穴開け治療をした指ですが だいぶ良くなりました。



まだ爪の付け根の腫れが取れず グニョグニョして仕事が不自由なので 明日またクリニックに行こうと思います。



次回は井上君のニセコ便りです。





新作の紹介と夏の虫 その1

2012-07-28 17:33:59 | 作品 Works


ロンドンオリンピックが始まりました。
私も録画ですが 開会式 見ましたねぇ。
毎回のことですが 開会式を見る度に 私は妙に感動するんです。
「世界中から若者が集まる」というだけで じーーーん としてしまいます。
単純なんですかね.... ただ 歳取っただけなんですかね.....


といったところで 今回は新作のお話
秋に開かれる日本版画協会展出品用の作品です。
  
都立上野美術館改修のためここ2年は 京都市立美術館で行なわれていましたが 
今年は3年振りで上野での開催となります。
また協会創立80周年にもあたる年なので 規模的にはかなり大きな展覧になるようです。

まず 内容をお話せずに 制作過程をお見せして どんな作品なのか想像してもらおうと思います。

ではどぞ


ここまでの過程は
1 白インクによるファンデーション(下地)のベタ刷り
2 同版で青と紫によるグラデーション刷り
3 2のグラデーション刷りを中帯として残して 上下に金箔を貼る
4 金箔を保護するため 3の同版でクリァーインクを刷る
とまぁ ここまで4段階の刷りを繰り返します。


ベースが出来上がったところで 次々に絵柄を刷り込んで行きます。


この状態で6割ほどの仕上がりです。


だいぶ出来上がってきました。
ここまでで 29色36回刷り の過程を経ています。

「お伽草子」シリーズなのですが 何のお話を題材にしているか お判りでしょうか。


この続きは 次回で..... 



話しは変わって 
先日の夜 我が家の裏口に大きな「虫」が飛び込んで来ました。
相方に 恐ろしくもけたたましい悲鳴を上げさせた虫とは....



大きなかぶと虫! 体長6cm位
大きさが判る様に新書に乗せてみました。



「俺は男だ!」と言っている様な そりのある角が立派でいいですなぁ。

毎年家の周りで 小型のクワガタ虫などはよく見かけますが これほど大きいカブト虫は初めてでしたね。
孫達に見せたいと思ったのですが しばらく我が家に来る予定が無いので 裏庭に放してやりました。


次回も我が家に紛れ込んで来た「珍虫」をご紹介します。