物理と数学:老人のつぶやき

物理とか数学とかに関した、気ままな話題とか日常の生活で思ったことや感じたこと、自分がおもしろく思ったことを綴る。

黄金比

2010-06-05 12:00:35 | 数学

6月1日の朝日新聞の天声人語に「黄金比」が説明されていた。

「ミロのビーナス」の美しさの秘密は「黄金比」にあるそうだ。線を2分するとき、短い部分と長い部分の比が、長い部分と線全体の比に等しくなる割合をいう。おおむね1対1.6となり、古来、人間にとって最も美しい比率とされてきた。

ビーナス像の寸法を測ると、上半身と下半身の比、お尻と胸の幅、顔の縦横など、いたる所に黄金比が潜んでいるそうだ。万人に愛でられるゆえんだろう。そんな黄金比に縁はなさそうだが、日曜の新聞を手にして、「縄文のビーナス」の優美な写真に引きつけられた。

以上が新聞からの引用であるが、この文を読んでこれだけのことから黄金比1:1.6が決まるのだろうかと気になった。いままで黄金比について書いたエッセイとか書籍を見かけたことがなかったわけではないが、立ち止まって考えたことはなかった。

答えをいうと、比が上に記載されていることだけで決まるのである。ところが私はとんまというか頭がのろまであるので、比が決まるということが分からなかった。

線の全体の長さをaとし、この線を2分するときの長い部分の長さをb、短い部分の長さをcとすれば、b/a=c/b が成り立つので、b^{2}=ac が成り立つことがわかる。ところがこれだけでは比は決まらない。条件が足らないと思って文をよく見直せばよかったのだが、それをしなかったのでそのままになって数日過ぎた。

その後、二項定理のエッセイを書いている暇を見て、ブルーバックスの「現代 数学百科」の黄金分割のところを読んでしまった(自分でよく考えるべきだった)。その記載から、私は一つの条件を見落としていたことを知った。

それは線分の長い部分bと短い部分cの和は線分全体の長さaに等しいということである。これは中学生でもいや小学生でもわかることである。その条件を付け加えれば、a=b+cが得られる。

そうすると二つの方程式が得られたことになる。

    a=b+c
    b^{2}=ac

いま線分の長い部分の長さbをxと表して、そのxを求めることにする。そうすると短い部分の長さc=a-xと表される。

この連立方程式を解くと

  x=(a/2) (sqrt {5}-1),   a-x= (a/2) (3-sqrt {5}) 

となるから、比をとると

  x : a-x = 1.236 : 0.764 =1.62 : 1

となる。これで確かに天声人語の「おおむね1.6 : 1」というのは正しいことがわかる。

こんな計算はわかってしまうとなんでもないことだが、いままで関心をもったことは一度もなかった。