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「八月の路上に捨てる」 伊藤たかみ

2021-11-09 | 読書

2006年上半期芥川賞受賞作に、賞後の短編を併載。

説明はこっちかな。

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敦はシナリオライターになりたいと思いながら、今は飲料の自販機に飲み物を補充し代金を回収するバイトをしている。二人一組で車に乗るのはシングルマザーの水城さん。その二人のやり取りで物語は進行する。

敦は、大学で知り合った知恵子と結婚している。知恵子は編集者を目指していたが、挫折、今はマンションの販売の会社で働いている。

小説の場所は東京。二人はアパートで暮らし、たまに外で食事をし、そして若い人間の常としてお金がない。二人とも生き方に迷っているところがあり、些細なことがきっかけで喧嘩もする。敦は行きつけの居酒屋の女性客と、投げやりな浮気もする。

15年前の作品だけど、状況は今も変わらないと思う。と言うか、東京で若い人が暮らすのはもっと大変になっているはず。

どこにも持って行きようのない鬱屈がうまく書けていると思った。

修復するのが面倒で二人は離婚する。それは敦の30歳の誕生日のことだった。水城さんは再婚して、内勤に替り、千葉の営業所に移る。

結婚がいいとか悪いとかではなく、一人一人にそれぞれの物語がある。それをうまく掬い取っていて、面白く読んだ。

もう一つのは受賞第一作なので、力まずにまとめた佳編。感動はもちろん表題作にありました。

若いのは何かとしんどい、私も経験がある。暮らし方が定まるのまでは、何かと衝突した。それも最早遠い景色。今さらあれを繰り返したくはない。と言うことは、若い時代に戻りたくもないということ。

最近体が軽くなった気がする。体の密度が薄くなった感覚。もう嫁ではなくなって、気が軽くなった心の反映かなと思う。この気分を早くから味わってきた人もいるけれど、私は今になった。今になったからより深く味わえるということもあるわけで。

年取るって、悪くないなあと最近思っている。体に気を付けて、なるだけ長く、この境地を味わいたいもの。


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