片貝孝夫の IT最前線 (Biz/Browserの普及をめざして)

Biz/Browserの黎明期からかかわって来ました。Bizを通じて日常を語ります。

映画「舟を編む」の制作に深く携わった三省堂辞書編集部長の山本さんにお会いしてきた。

2015年04月10日 | 感動したこと
右という字を、ことばでどう説明しますか?
そんな会話から始まる「舟を編む」。
言葉の海。辞書とは、その大海に浮かぶ一艘の舟。
人は辞書という舟で大海を渡り、自分の気持ちを的確に表す言葉を探します。

今日三省堂の辞書編集部長の山本康一さんにお会いした。
山本さんは、映画「舟を編む」の制作にあたって辞書作りの現場がどんなものであるかを、制作スタッフにしっかりと伝えた方。
 
山本さんの指導ぶりがどんなものであったかは、下の文章でわかる。

「三省堂さんや個人の方に大量の本を借りたんですけど、本の並び方とか、やっぱり本物は見る人が見ればわかりますよね。それで、セットができたときに、ご指導を受けた三省堂の山本さんが来られて言った言葉が、「懐かしい」っていうのと「今すぐ、ここで仕事ができます」って。それを聞いた装飾部は泣いていましたね。良かったって。感極まってましたよ。

山本さんの指導を受けたセット作りは徹底していた。
語彙を収集するために持ち歩くカードや原稿用紙などは、本物そっくりのもので、社名だけ映画用に変えたのを作る。1995年設定なので、机上のパソコンはWin95ではなく、Win3.1の画面が出ていないとダメということで、マシンもWindows3.1ソフトも用意したりして時代考証は徹底的にやったらしい。

これを聞いて思わず目からウロコが落ちる思いだった。小説は読者が勝手に想像するから何を書いてもいいが、映画は観客が映像の隅々まで見るから、ごまかしが効かないのだ。小説に比べると映画は単純だとばかり思っていたが、どんでもない勘違いだった。映像に映るものは、その時代の物でなければないらないのだ。その時代にそぐわないものが一つでもあったら、それを知った観客はいっぺんに興覚めしてしまうだろう。それが、山本さんから、すぐ仕事ができると言われたので、苦労が報われたと思って泣いてしまったのだろう。

山本さんからは、映画に出てきた語彙を集めるために持ち歩いているメモカードを見せてもらった。










辞書というのは、15年から25年くらいかけて最初作り、完成したらすぐに改定に入るのだそうだ。これはシステム開発と似ている。システムも完成すると同時にメンテナンスフェイズに入り、細かな修正を加えながら時代の要請に応えて改定を重ねていく。

私にとって、映画「舟を編む」は、近年見た映画の中で最も印象深い映画だったので、山本さんのお話を聞いていて興奮している自分が、よくわかった。帰りがけに、肌身離さず持っているという、映画にも出てきた「語彙」収集カードの実物をもらった。宝物をもらったような気分でいる。

実は山本さんには、7月の目からウロコの新ビジネスモデル研究会で講演していただくのだ。そのためのご挨拶に今日伺った次第。
7月が楽しみ!!どうぞみなさんご参加ください。





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