美濃屋商店〈瓶詰の古本日誌〉

呑んだくれの下郎ながら本を読めるというだけでも、古本に感謝せざるを得ない。

島原の城化物(老媼茶話)

2015年04月28日 | 瓶詰の古本

松倉長門守島原の城に居玉ひし時。広間の入口の座敷にて。或夜燈の光有り。其夜の広間に番せし士供。燈の光を見て何となく物すさまじく。誰行んといふ人なし。時に士二人行て見るに。大広間の障子を開き。六尺計の大女。髪を乱しゆかたを着し。側に行燈を置庭を詠(ながめ)居たりけるが。人音を聞て。振返りたるつらつき。眼(まなこ)大きく口耳の際迄さけたるが。につこと打笑たる気色を見て。一人即座に死す。一人は気を失ひけり。其隙に件の女行衛なく失けるとなん。

(「老媼茶話」)

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