「嵐が丘」を書いた作者の心底にある作意。主人公を幸せにするも不幸せにするも作者次第であるということを、読者ににべもなく知らしめるために書かれた小説。主人公の運命を自在に翻弄させることによって、作者の影をはっきりと頁に落とすための小説、と同時に、ひょっとすると幸せ、不幸せに左程の差異はないことに作者自身書き進めているうちに気が付いて行く小説。あるいは、自分に起こりつつある不条理を受け容れるしかないことが必ずしも誰にとっても苦悩であるとは言い切れないのではないかと告げる小説。
病患を得て生死の分かち難いことを思うとき、再読に堪えるかどうか試してみたい小説。
最新の画像[もっと見る]
-
辞書は大小を超越する宇宙書物である 9年前
-
ラブクラフトが夢想した『コンゴ王国』 14年前
-
乱歩「孤島の鬼」は西日を浴びて読む 16年前
「瓶詰の古本」カテゴリの最新記事
自分自身を小説に投影するを良しとする作家は、ドン・キホーテを鑑として滑稽視さ...
自分自身を小説に投影するを良しとする作家は、ドン・キホーテやサンチョ・パンサ...
「新文學辭典(天弦堂藏版)」序・白(加藤朝鳥・中村一六)
言葉によって心は生まれ変ったり激しく揺れ動かされたりするものだから、そうなる...
私利以外の全てに不真面目な知恵者は故意に異を立て奇を衒うことで耳目を集め、先...
故意に異を立て殊更に奇を衒う人々は、相似た臭味を放ちながら負けじとばかり世上...
読破無用の古本病者にしてみれば、辞書とは一片の後ろめたさも感じることなく矢鱈...
「掌中新辞典」といえば、この増補改刪版のほかに『タモリ倶楽部』で紹介された別...
友人の晃から聞いたという、文字にまつわる不思議な話(小泉八雲)
作家が原稿を火中に投じるのは、自分の生み出す物語が自分の運命をも(勝手に)動...