美濃屋商店〈瓶詰の古本日誌〉

呑んだくれの下郎ながら本を読めるというだけでも、古本に感謝せざるを得ない。

すぐに融けた雪

2009年03月05日 | 瓶詰の古本

   群馬県では、夕刻の降り始めから翌朝の雪景色を期待したものの、地面をうっすらと蔽った雪は、夜明けから二、三時間と待たずに融けて消えてしまった。それだけ暖かいということだろうか。それにしても、一泊目の夜は、恐ろしい夢を見た。
  布団に潜って眠り込んでいる自分に紐が繋がっている。そして、その紐を何物かが引っ張るのである。襖だか衝立だかの陰から得体の知れない何物かが、ここにいるんだ、ここにいるんだよと言わんばかりに、つんつん紐を引っ張るのである。それと前後定かでないが、紐を引っ張り合って近くまで寄って来たその何物かの足元が一瞬布団の穴倉から垣間見え、それは片足が人間の、もう片足が毛物の脚をしていて布団の縁の方へ向いていた。
   脚そのものがひどく一生懸命になっていることがありありと分るのと、紐を引っ張り続ける何物かの執拗な薄笑いが今にも見えそうなのとで、怖ろしいことこの上ないのである。悪夢の中で、声にならない声を張り上げようとして苦悶する自分自身の呻き声で目が醒めた。そのあとは、ぞくぞくっと波のような身震いが繰り返し襲って来て、まんじりともしないまま夜が明けてしまった。これまで味わったことのない感覚がまだあるのかと考え始めたのがいけなかったのかも知れない。
   一泊目に奇怪な寝不足に陥ったおかげで、二泊目は同じ部屋、同じ布団でぐっすりと眠ることができた。仕事もまずまず順調に進んだ。

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