花耀亭日記

何でもありの気まぐれ日記

横浜美術館「ホイッスラー展」を観た。(4)

2015-02-12 01:05:41 | 展覧会
昔から浮世絵にはあまり惹かれなかった。先の「ホイッスラー展が楽しみ」でも触れたが、面白いと思えるようになったのは近年になってからである。葛飾北斎「富嶽百景」や歌川広重「東海道五十三次」など、今ではその構図の見事さが良くわかるようになった。そんな美術ド素人でさえ凄いなぁと思うのだから、欧州の画家たちが驚いただろうことは想像に難くない。


歌川広重《京橋竹がし》(1857)


ホイッスラー《Nocturne: Blue and Gold - Old Battersea Bridge circa》(1872-75)テート・ブリテン

ホイッスラーも構図に大きな影響をうけていることがわかる。しかし、広重の月明かりの下で行きかう橋上の賑わいや橋下の船人に比べ、ホイッスラーは全てをひっそりと濃紺の諧調に落とし込む。スモッグの空に月はけぶるような淡い光を見せ、月明かりを映す川面に浮かぶ艀は静かな水音をたてているのだろう。屹立する橋脚のデフォルメは画面に緊張感を与え、艀人を危うくカロンに仕立て上げそうだ。いや、もしかしたらテムズ川の彼岸はトゥオネラなのかもしれない。

ホイッスラーとジャポニスムの関連を示す展示コーナーも設けられていたが、興味深かったのは「ピーコックルーム」の映像展示室があったこと。


《陶器の国の姫君》(1863 – 64)フリーア美術館

フリーア美術館のピーコックルームは窓が全て閉じられているのに、この映像では窓や扉が開け放たれた様子を見ることができるのだ。あの息の詰まりそうな耽美的空間が生活空間として機能ができることがわかったのは幸いである(^^;


「ピーコックルーム」(1876-77)フリーア美術館

つくづくピーコックルームの家主だったレイランドさんは偉いと思う。ホイッスラーと絶交した後もあの部屋を使い続けたそうだ。はっきり言って芸術空間としては素晴らしいのだが、実際の居住空間としてはどうかなぁと思ってしまう(^^ゞ。確かに唯美主義は美しく素敵なのだが、カラヴァッジョのリアリズムを好む者としてはどうも居心地が悪いのだ。ごめんね(^^;;>ホイッスラーさん

ということで、最後はかなり端折ってしまったが、「ホイッスラー展」感想文は以上で終了だ。ああ、終わって良かった(^^;;;