花耀亭日記

何でもありの気まぐれ日記

「日本の四季―雪月花」展

2006-01-13 01:20:19 | 展覧会
山種美術館で「日本の四季―雪月花」展を観た。
http://www.yamatane-museum.or.jp/

東京に来てからは、四季ごとに山種を訪れているような気がする。正月は干支や富士山などの新春にちなんだ作品が展示されており、なにやら心が晴れやかになる。今回は日本の四季、それも雪月花をテーマに、日本らしい四季の移ろいと月の風情を織り込んだ作品が並んでいた。

やはり展示が明治以降の日本画作品中心であることもあり、酒井抱一(1761-1828)の《飛雪白鷺》が一際その存在感を放つ。
http://www.yamatane-museum.or.jp/html-works(L)/sakai-hoitsu-A0533.html
雪の精にも見紛う白鷺の舞い戻る羽音に飛び散る粉雪。水辺の葦のしなう風情も抱一らしい瀟洒な趣がある。胡粉を含ませた筆を振って散らしたのだろう、雪の飛沫の軽やかな美しさには見惚れてしまう。

今回嬉しかったのは菱田春草の「月四題」の「春」「夏」「秋」「冬」を初めて並べて観ることができたこと。それぞれの季節と月の味わい深さを楽しんだのだが、特に「夏」の群雲の月に柳葉の揺れる濃淡の風情に惹かれた。月は群雲とは確かに…とうなずいてしまった4幅対だった。

実は今回の展覧会で一番興味深く面白いと思ったのは、同じく四季を扱った千住博「四季」(4幅対)であった。千住の作品は「春」「夏」「秋」「冬」に移ろう景色を描いているのだが、何とそれぞれの絵の上にその季節の月を置くという、極めて斬新な4幅の掛け軸になっている。その絶妙な仕掛けは表装に負うところが極めて大きい。古典柄と西洋柄をみごとに駆使した色彩の調べは、絵と表装のコラボレーションによる相乗効果というべきであろうか。
千住の日本画には現代的なシャープさが漂う。四季の風景もワールドワイドな風景を各地からそれぞれ切り取ったかのようである。そこから望む月の面ざしもそれぞれに異なる。が、それぞれの時空を隔てた地球と月の在り様は太古の昔から変わらぬのかもしれない…。四季の風景から地球へ月へ宇宙へと想像を掻き立ててくれた素敵な4幅対だった。

今回の展覧会は新春にふさわしく、日本らしい和やかで華やいだ良作品にあふれていた。日本の四季の美しさ、日本の美の象徴である雪月花、新春のひとときを殊更に喜ばしいものとしてくれたような気がする。