花耀亭日記

何でもありの気まぐれ日記

光悦と琳派展

2005-07-05 21:32:32 | 展覧会
土曜日、上諏訪にあるサンリツ服部美術館で「光悦と琳派展」を観てきた。
http://www.shinshu-online.ne.jp/museum/sanritsu/sanritu4.htm

展示数は少なかったが珠玉の..と形容したくなる佳作品で構成された展示内容だった。中でも一際オーラを放っていたのが本阿弥光悦・作 国宝『白楽茶碗 銘 不二山』である。最近茶陶の面白さに目覚めた私には、楽と言えば長次郎からの黒楽と、光悦の傑作『熟柿』の赤楽のイメージが強かったが、この『不二山』は意表を突くかのような白楽だった。
http://shinshu-online.ne.jp/museum/sanritsu/sanritu2.htm

全体に白釉がかかっているのだが、低い高台から胴の中ほどにかけて濃淡のある灰褐色に窯変している。上部の白釉が雪をいただき天に向ってそびえる富士山を想像させるところから『不二山』と命名されたと言う。その釉景を観ながら、私は初めて茶碗の「景色」というものを自分なりに了解しと思った。灰褐錆色の景色は富士の裾野でありながら見る者の心に添ってさまざまな景色を見せてくれるのだ。
その景色を生かしているものこそが手づくねにヘラで形を削った茶碗自体の絶妙な造形美である!飲口部分の削り具合、筒形の微妙なゆがみこそ、渋く落ち着いた趣で不二の景色を映している。光悦はこの茶碗を振袖で包んで嫁ぐ娘に渡したと言う。多分、光悦としても形見と言える会心の作だったのだろう。

光悦作品の他にも、宗達、乾山、光琳、抱一等々目を惹く作品は多々あったのだが、詳細はいづつやさんのブログを参照していただいた方が良いかもしれない。
http://izucul.cocolog-nifty.com/balance/2005/07/post_4f37.html
なにしろ、いづつやさんの紹介文章を拝見して上諏訪まで駆けてしまった花耀亭である。

さて、今回の展覧会には奈良の大和文華館から3点の出張作品が展示されていたのだが、その中に伝・俵屋宗達筆「伊勢物語図色紙・六段芥川」があった。背負った女の問いに答えるかのように見遣る男….。背景のたらしこみによる山並みの青緑のうつくしさ、手前に流れる芥川。その狭間に立つふたりの衣装から覗く艶やかな紅がとても印象的だった。

この伝宗達筆の色紙を観ながら、先日亡くなった塚本邦雄を想った。昔、『露とこたへて-業平朝臣歌物語』(文藝春秋・刊)を読んだことがある。今は実家の本棚に埃をかぶっているのだが、題字は塚本自身の高野切風筆跡だったように思う。

白玉か何ぞと人の問ひし時 露とこたへて消えなましものを

(草の上に降りた露を、真珠ですか、何ですか?とあの人が尋ねた時
 「露です」と答えて、そのまま私も露のように消えてしまえばよかったのに…)

芥川の段、業平と高子の恋愛逃避行物語を、思えば塚本にしてはさらりと描いた作品だったような気がする。