物理と数学は切っても切れない関係にあります。実を申しますと、私は数学があまり得意ではありません。もっと数学ができたら別の地平が拓けるのになーと思ったことは、一度や二度ではありません。数学嫌いを乗り越えようと、以前から色々と努力を重ねてきました。
物理数学の書籍も読み込みましたし、かの有名な
高木貞治著「解析概論」岩波書店
といったものまで手をのばしました。しかし、なかなかどうして数学の女神は微笑んではくれませんでした。その後も手を替え品を替え、色々と試してはみるものの、一向に状況に変化がみられませんでした。そんなときに何気に手にしたのが、今回ご紹介する
前野昌弘著「今度こそ納得する 物理・数学再入門」技術評論社
です。
少々長いのですが、まえがきを引用しますと『「自分が何を計算しているのかをはっきりわかってから計算するのでなければ、計算しても意味がない。」ということだった。つまり、昔の私は、そもそもラプラシアンが何なのかという根本的な部分から全くわかっていなかった。わかっていなかったのだから、その計算方法が納得できないのも当然だったのだ。ラプラシアンというものの持つ意味について、上の式が正解であることは間違いなく納得できる事柄になる。私がこの本を読んでくれる皆さんをどこに連れて行きたいかというと、まさにこの「なるほどこうなるのは当然だ。こうじゃなくては困るじゃないか!」という「今度こそ納得」の境地なのである。』-以上-
ラプラシアンは、直交座標系(デカルト座標系)で書けば簡潔な形で表されますが、極座標系で書くと複雑怪奇な式になってしまいます。私も学生時代一度だけ、計算してみました。計算用紙3~4枚程度必要だったでしょうか、長い長い計算の末やっと正解にたどりつきました。私の計算力からすれば、正解が分かっていたからこそ到達できたと思います。当然のこととして、著者の指摘にありますように「何を計算しているか」も分からず、ただやみくもに計算したといったものでした。当時は、単に計算をやり遂げたという満足感に浸っていただけでした。それ以上に深く考えることは無かったのです。
本書は、見事に私の学習に関する問題点を指摘してくれていると思います。なぜに数学(物理や他のことも同様)が上手くならないかを端的に分からせてくれたように思います。
本書では、19個のテーマが取り上げられております。それぞれにイラストやグラフが多く用いられ、理解を助けてくれます。私的には、「仮想仕事の原理」と「最小作用の原理」が面白かったように思います。解析力学を学んだ時、こんなもんかなーといった漠然としか理解できていなかったものが、すとんと落ちたような気がします。
まだ一読しただけですが、再読することでどのような境地へ連れて行ってくれるか楽しみなことであります。
しかしながら、数学に対する苦手意識を克服するには至らないでしょう。そんなに簡単なものだとは思っておりません。数学は私にとって、永遠の課題であり、永遠の憧れなのかも知れません。