眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

ドミノ

2009-09-14 13:27:28 | 猫の瞳で雨は踊る

順調だったよね
完璧だったよね

ずっと
ずっと

うまくいってたよね

不安はなかったよね
問題はなかったよね

まるで
まるで

*

「ねえ、ノヴェル。何書いてるの?」
マキが近寄ってくると、猫は瞬時にケータイを閉じてしまう。

----見いちゃ、ダメ!
小さな顎の下に子猫を隠すようにした。黒さに紛れてそれは見えなくなった。

「私のケータイでしょ」
けれども、猫は耳を貸そうともせずに伏せていた。
しばらくの間そうしていて、マキがいなくなるのを待って、再び取り出した。
ケータイを器用に開くと、それよりもっと器用に文字を打ち始めた。
マキから盗んだものではなく、それは猫自らが選び出す言葉だった。

*

まるで
まるで

平和だったよね

完成も
間近だったよね

なんで

忘れちゃったんだろ


ねえ

とても

順調だったよね

順風だったよね

とても


ここに来るまでは

*

こっそりと近づいて、マキは画面の中を覗き見ていた。
「ねえ、って……」
「あんた、ドミノ倒しでもやっていたの?」

----見いちゃ、ダメ!
猫が気づいて、再びケータイを閉じた。
降りてきたばかりの夜の中に、猫はケータイをくわえて駆けていった。
夜の色にすっかり溶けて見えなくなった。
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