眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

クリスマスマミー

2014-02-03 23:47:05 | クリスマスの折句
 先日、歩道の上を歩いておりますとちょうど同じ頃、亀も私の隣を歩いていました。甲羅に小さなリュックを背負って着実に進む亀は、私の歩くペースよりも少しだけ遅く、私の少し後を少し遅れながらついてくる形でした。けれども、私が何かに気を取られている間に、気がつくと亀は私を追い抜いて私の前に出て歩いているのでした。
(寝かせておく)という言葉を覚えてから、色んなものを寝かせておいた。寝かせておくということは捨てずに取っておくということだ。それが後に必要とされたり再評価された時に寝かせておいた自分を誇りに思うために。多くのお菓子は、寝かせておける時間の感覚を誤ったためにカチカチになったりパサパサになったりして、ただ自分を愚かに思わせることが多かった。
 そんなことがあったなと思った後、正気を取り戻すと私は再び亀を追い抜いて、亀の前に出ました。私だって、私なりのリュックを背負っている。歩くことは、頭の回転をよくするのだ、と父が言っていた。それは本当なのかもしれない、と少し思いました。
もう話すこともできないのだと思っていて父が、突然起き上がってテレビを見るために悪戦苦闘したり、リモコンを持って延々とチャンネルを変え続けたり、夕食がくるとベッドから抜け出して私の隣にやってきてパイプ椅子に座った。動いた。立ったり歩いたりもできるのだ。売店が閉まるぞ、と教えてくれた。薬を開けてくれ、と頼んでくれた。明日は何日だ、と訊いてくれた。
 祝日か水曜日かと思っていると、その間に亀が前を歩いていました。再び現在に戻ってきた私は、すぐに亀を追い抜いて、亀の前を歩くだろう。これは長いレースになるのだ。歩みのぶれない好敵手と張り合っていく覚悟を決めていると次のような歌が浮かんできました。それはクリスマスの折句でした。

9時前の
隣人ちょんと
座っては
マミーの傍で
ストローを持つ

「どうしてそうなる?」
 父の声が聞こえてくると歌は12月の先頭を向いて歩いていきました。


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