眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

裏通りの占い師

2020-01-21 03:18:00 | ポトフのゆ
 トライアングルの中をふらふらと歩いていると暗い夜道に出てしまい、とろみがかった白身魚のフライがチラシを配る周りには、夜の魔物たちが群がっているのだった。この世は恨みつらみばかりでござんしょとスライムが言い、随分とつらいことがあったようだねと村井が言ってちらりとマラソン選手の方を見たが、その時にはもうマラソン選手は走りすぎていて、小枝がゆらゆらとしているだけだったので、スライムはケラケラと笑った。「コースを間違えたかな?」と村井は言い、「いつから参加していたの?」とスライムはくらくらとした。「参加するにはカードがいるのよ」そんなことも知らないのとスライムは馬鹿にした口調で言った。「だったらどうしたらいいんだい?」少しへらへらしながら村井は訊いた。「だったら村一番の占い師のところへ行くのね」

 裏通りより更に裏手に入ったところにその占いの館はあった。
 占い師は散らかったテーブルの上を片付けると、胸元から小さな箱を、そしてそこから取り出したものをテーブルの上へ並べ始めた。

 いくつもの歌はいつまでも伏せられたまま呼吸をすることがやっとの状態だった。本当は自らひっくり返りたいのに裏こそが表であるのに、強い風が吹いて、あるいは誰かが強くその上を叩いてひっくり返してくれる日を、ただ耐えて待ち続けているのだった。「伏せられたまま命尽きるのは嫌」けれども、伏せられたままの歌声は大地を少しだけ湿っぽくせただけだった。誰の心にも届かなかったのである。

「裏を返してごらん」
 と彼女は言った。
 村井は一枚のカードを選びひっくり返した。そこにあるメッセージを見つけるために。
「はっ、何もない!」
 老婆はわが意を得たりという表情を浮かべた。
 老婆は言った。
 しかし、その僅か前に村井が言った。
「どういうことだ?」
「それで残念に思う人もいれば、それで助かる人もいる。そういうことさ」
 と言って老婆はうがい薬を差し出した。
「さあ、家に帰ったらこれで口をすすぎなさい」
「どういうことだ?」


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 二人の会話(花と散る) | トップ | ヒット麺 »

コメントを投稿