眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

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2012-01-17 23:28:24 | 夢追い
 風で倒れた自転車を片手で起こしたけれど思ったよりも重くて途中で投げ出しそうになった。知らない人の自転車だ。道は工事中のために突然細くなる。働いているのはみんな外国人ばかりだ。「おじいさんは絶対片手で回すの」タオルを頭に巻いた女が言った。あの人は安定を目指さなかった故に……。マスクが必要なくらいに、土煙が舞っている。
 残り時間は僕の方が少なかったが、ある時を境に形勢は逆転した。完全に敵陣を突破してから僕が勝つことはもはや時間の問題のようだった。けれども、彼は時計を操作してきたのだ。逆さまにしたり、針の数を増やしたりした。時計そのものが四つになった時、何が正確な時間だったかわからなくなった。1つの時計は完全に止まっていて、それは押しても叩いてもまるで動かなかった。それから彼は時計全体を黒く塗った。幾つかの針がまだ進んでいたけれど、それを正しく読み取ることは困難だった。「君のがゼロだ」と彼がつぶやく声がした。遥か昔に終わった勝負の話をしているのだと思った。「もういい」叫んでいるのは僕だった。「負けでいい!」僕の負けでいいから。早くひとりになりたかったのだ。僕が持ち場を離れると間もなく彼がシュートを放ち、ボールは誰もいない空間に向かって易々と吸い込まれていった。窓の外を見た。目の前にはエレベーターが停止した状態で、誰かを待っていた。帰ろう……。早く、帰ろう。
 成績優秀者が(すべての参加者の意)順に呼ばれて、壇上を通過する時に好みの景品を取って戻っていく。紛らわしい名が呼ばれて、僕はその場で動けないでいた。やがて、あれはあなただったのではと誰かが言う声に押し出されて、僕も歩き出した。あえてセットになっていない方の石鹸を選んで席に戻る。会長が壇上に上がり、話を始めた。「もう既にご存知の方もいらっしゃるかと思いますが……」同時に皆が帰り支度を始める。鞄を閉めるチャックの音がそこかしこでしていた。

 故郷駅の名を路線図の中に見つけた。それは別の銀河の上にあるようだった。たどり着くためには、幾つもの川を越えなければならない。見たこともない土地の名前が大挙して分厚いバリアを築き上げていた。ピアノの演奏が速まると人々もそれに合わせて駆け足で椅子の周りを回った。順番に切符を手にするために、みんな踊らされている人々だった。ストップ! 音楽が止まって真っ先に中心にたどり着いた人だけが1枚の切符を手にして、輪の中を抜け出していく。落胆の余韻が引いた頃に、またゆっくりとピアノの節が歩き出して、ゲームが開かれる。僕は遠い場所に来てしまった。
 階段はとても狭く、僕らは横に並んで上っていくことはできなかった。上っても上っても下りてくる人々にはねつけられてなかなか順調に進むことはできなかった。「どうしてさ?」2番目の少年が立ち止まって不満を口にした。「ルールでは、左は上ることになっているはずだよ」そうだ、そうだ、と僕たちは心を1つにして階段を上った。けれども、上っても上っても下ってくる人々に厳しくはねつけられてほとんど痛い目に遭い続けなければならなかった。「どうしてさ?」3番目の子がぶつかった大人の1人に言ったけれど、答えているのはそれから数人先の大人だった。その答えは、しかも無言だった。きっと話す時間が足りなかったのだろう。(どうしてさ?)僕はただ言葉を呑みこみながら、先頭を歩いた。苦難の上りが続き、見上げれば道は遥かに遠く、振り返れば転げ落ちてしまいそうだった。もはやそれは当たり前のようになり、誰も疑問を口にすることはなくなった。風が吹き、ついに僕らの体は宙に舞った。転げ落ちる、その時が来た。けれども、近づいたのは空の方だった。優しい女が、僕らを迎え入れ、引き上げてくれたのだった。
「飛び級だよ」
 僕らは一気に何段階ものステップを乗り越えることができた。けれども、女は自分の行き先を見失っていた。
「私、フィギュアだったかな?」
 どうして、助けてくれたのだろう?
「僕たちが探すよ」
 僕らは一緒に彼女を探すことを決断した。


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