季節は夏で着ていく服が決まらない。色やサイズや生地で迷い、一度着た服がベッドの上に乱雑に重なっている。分解されたPCは暗号がきつく、なかなか組み立てられないのでアラームが鳴らない。逆算すると新大阪着24時30分。そんな列車があるのだろうか。
「あんた。何やってるの。ほれ、時刻表」
「ありがとう」
分厚い。いつのだ。いやそんな時代じゃない!
「何の音? 風?」
「猫がドアをノックしてるのよ」
「まあそうですか」
「どうせよその猫だから」
アプリが改悪されていてダイヤが調べ辛い。スマホを表にしたり裏にしたり操作性の悪さに焦る。
「ちゃんと働きもしない……」
兄が隣で僕の悪口を言っている。そんなはずはないのにな。兄は何も言わないはずなのに。改札を出てやたらと長い階段を上っていくと空が見えた。ああ、もうこんなとこでおしまいか。
「いらっしゃい」
階段を下りると会社に着いた。
「椅子の上を歩いてください」
飛び石を渡るように丸椅子の上を歩かされるおかしな会社だ。椅子はどれもみんな不安定で恐ろしい。
「落ちても大丈夫ですよ」
「うわーっ」
会社の向こうはコンビニとつながっている。コンビニと会社とを行き来するのがこの会社の仕事だ。
「毎度、ウーバーです!」
小窓を通って戻る度に何かぼけなければならない。おかしな会社だ。
「親子でっか? いや頼んでへんわー!」
ああ、もう面倒くさい。
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