眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

どうして人は日記をつけるのか ~一行日記のすすめ

2023-11-07 01:47:00 | いずれ日記
「いつだったかな……」

 伯父さんが家に来たと母が言ったが、それがいつだったかは定かではない。あまりに最近のことだからだ。先週だったか。9月かも。だんだんと自信がなくなってくる。盆だったかな……。盆ではないことは確かだった。わからなくなるから日記をつければと僕は言った。以前はつけていたが、2年前にぱたりとやめてしまったという。

 10月は祭りが多いと母が言った。あれは11月か……。それから過去の記憶に遡って、子供の頃の祭りの話をしてくれた。昔は、夜通しの舞があったという。午前0時頃に出かけて舞を見に行ったこともあったという。祭りにはお芝居もあって、遠方より劇団が来たという。芝居は(つづく)で終わり、日をまたいで人々の興味を引きつけたという。電話越しに母の声は生き生きとしていた。今ではすっかり過疎化してしまってとても考えられないという。祭りがあっても集まる人は少ないだろうし、神主さんも地元に残っていないかもしれず、外から呼ばなければならないくらいだとか。昔話なら、湯水のように湧き出てくる。記憶に深く刻まれているからだ。

「一行でもいいじゃない」
 僕は母に日記を再開してほしかった。

「あんたは書いてるの?」
 勿論、僕が書いていないわけがない。僕は日記しか書いていないのだ。

 書いても書かなくても、いずれにしろ日々は過ぎ去っていくばかりだ。書き出すことは楽しい。続かなければそこで終わってもいい。そうしてまた明日書き出せばいい。眠る前の10秒でも時間を割けばできることだ。
 ささやかな一行も、明日を指す矢印になってくれる。書き連ねていけば、やがては物語にもなるだろう。

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