眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

ゴースト・バストラン

2023-11-11 16:05:00 | 運び屋
 少し先を行く自転車から白い煙が見える。タイヤからではない。煙は男の指先から出ているのだ。あんな乗り物は認められない。俺はそれ以上自転車に近づくのが嫌だった。曲がれ曲がれどこかに消えろと念じても通じない。ならば俺から動くまでだ。真っ直ぐ進んでから曲がるか、先に曲がっておいてそれから真っ直ぐ進むかは、俺が自由に決められる。クエストを選べる自由を失ったが、まだルートを選ぶ自由は残っている。


 近づきつつあったピックアップ先のピンが突然消えた。消えたと思った次の瞬間、動いた! あべの筋を南下して動き続けている。今までの経験にない現象だった。ゴーストレストラン、いや移動式レストランか? アプリ上のピンは前方に加速して行く。もしやあのバスか? 俺は前傾姿勢になり時速30キロでバスを追った。交差点に差し掛かる手前で、バスはバス停に停止した。俺は端に自転車を寄せるとバッグを背負ったままバスに乗り込んだ。

「いらっしゃいませ」

「お疲れさまです」

「ああ、ウーバーさん、番号を」

 俺は命をかけてガイドさんから伝説の木の葉丼を受け取ってバスを降りた。信号は青だ。報酬の300円を得るため、俺は全力で交差点に突入した。

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