眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

Happy New year (やまとなでしこ)

2013-02-04 23:23:12 | アクロスティック・メルヘン
「やったね! 当たったね!」
まずは何から買おうか
とてつもない大金を手にして
何からすればいいものか
哲夫くんにはわかりません
種々の願望が競い合って
これというものが現れません

屋根裏に潜みながら
まずは何から手に入れようか
とりあえず
長いトンネルを掘ろう
手当たり次第に掘って掘って
シャンパンを開けようじゃないか!
今夜はパーティーだ

屋根裏に隠れながら
まるでありもしない金のことを思いながら
時が過ぎていきました
何でもいいから空想できればよく
手当たり次第に耽って耽って
深海に潜って行くことが何より
心に良いことなのでした

「やっぱり顔を出したくないね」
「まだ人に会うのは早すぎるね」
「年が明けたばっかりだからね」
「何も考えずに出歩くのは危険」
「敵も味方もなくなったように」
「祝福の言葉を投げなくっちゃ」
「今年もよろしくなんてね」

「ヤモリ300匹分の妖しさだったよ」
「まるでわからないね」
「都会の子には難しかったかな」
「何百匹でも関係ないや」
「手の上には載り切れないってことさ」
「新春よさらば!」
「これこれ」

「優しさならばタモリ40人分だったよ」
「まる40人?」
「当然まる40人だよ」
「なるほどタモリにするとよくわかったよ」
「手に余るあたたかみってことさ」
「新春よあっち行け!」
「これこれ」

「やなんだよー」
「まあ落ち着きなさい」
「ところでおじさんは誰なの?」
「なんとまあ生意気な」
「天界の人か何か?」
「知らない人とあんまり話すんじゃない!」
「ここは月の裏側?」

「やなのかい?」
「まるでめでたくもないのにやだよ」
「逃亡仲間のおじさんだよ」
「何から逃げてきたの?」
「天下無敵のめでたさからだろう」
「新春よ逃げよ!」
「これこれ」

「ヤドカリの話が聞きたい」
「まだその話は早い」
「歳はいくつだったの?」
「何に置き換えればいいかな?」
「手間が増えるだけだよ」
「しかし置き換えなければわかるまい」
「子犬にもわかるようにね」

「椰子の木に置き換えるとしよう」
「また元に戻せるの?」
「時が来ればいくらでも戻せるのさ」
「何に戻るのかな?」
「天が決めた形に戻るだろうさ」
「新春の終わりに?」
「恋の終わりにさ」

「やがて雨が降るのだ」
「待ちましょう。雨を」
「時が過ぎるのは早いものでな」
「夏よ来い!」
「手を振って、さよならするとしよう」
「新春よあばよ!」
「これで幕が下りたのだな」

屋根裏の中に隠れながら
まどろみに似た季節を越えて
遠い昔にいたような気がした
懐かしい人のいる世界へと
哲夫君はもう
新春は去って行ったのだから
木枯らしと一緒に

屋根裏を駆け下りてみると
「まあ、おめでとう!」
と言うではありませんか。
長いようで長くはなかったのです。
「哲夫君、おめでとう!」
祝福の嵐が哲夫君をあたたかく包み込みました。
「今年もよろしくお願いします」


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 12月の歌 | トップ | 山肌音楽堂 »

コメントを投稿