眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

ガチャの終わり

2020-04-29 19:22:00 | ナノノベル
「いらっしゃいませ」
「あいつを中に入れてから、お客さん増えましたね」
「確かに」
「ありがとうございました」
「またか」
「みんなガチャ好きですねえ」
「ガチャ目当てじゃないか」

「いらっしゃいませ」
「まあでも、お客様はお客様ということで」
「意味ねえよ。ドアが開いてドアが閉じるだけさ」
「ついでにもっと奥まで入ってきてくれればいいのに」
「ありがとうございました」
「用だけ済ませて帰りやがって」
「まあまあ店長」
「ネットショッピングか。もっときょろきょろしろよ」

「まあまあ。みんなお忙しいんでしょう」
「忙しい奴がガチャなんてするかよ」
「しますよ。ガチャをするのに忙しいんですよ」

「いらっしゃいませ。はい、どうぞ」
「暇つぶしの遊びじゃねえか」
「遊びが主役になったんじゃないですかね」
「何だそりゃ。SF小説か」
「はい?」
「世の中ひっくり返ってんなあ」
「ありがとうございました。またお願いします」
「ガチャお願いしてんじゃねえよ」
「まあまあ。一応お客様ですから」

「いらっしゃいませ。はい、どうぞ」
「ガチャばっかじゃねえか」
「外は治安が悪いから、あそこでいいでしょう」
「義理も人情もないのかね」
「外で荒らされるよりはましですよ」
「冒険心はないのか」
「ガチャは手の中の冒険かも」
「もっと奥まで未開のアマゾンまで入って来いよ」
「そんなとこじゃないでしょう」
「遠慮してんのか」
「ありがとうございました」
「ジャムパンくらい買っていきゃいいのに」
「お腹空いてないんですかね」

「ガチャガチャガチャガチャ何が面白いんだ」
「何か出てくるところとか」
「何が面白いんだ」
「何が出てくるかわからないところとか」

「よし。もっと奥へ置くとしよう」
「なるほど。流石店長」
「何が出てくるかなんてだいたいわかるだろうよ」
「でもだいたいしかわからない」
「何が面白いんだ」
「この辺にします?」
「もっと奥まで運ぼう」
「やっぱり小さな冒険じゃないですかね」
「何が面白いんだ」
「手の中に生まれる感じとか」
「ポエムか?」
「はい?」

「いらっしゃいませーい」
「鳥が卵を落とすみたいなとことか」
「さっぱりわからんね」
「この辺でどうでしょう」

「もっと奥だ!」

「店長。そっちは……」
「バックヤードに片づけてしまえ」
「えっ、そんな」

「すみませーん。ガチャガチャしたいんですけどー」
「店員さーん」
「ほら、店長」
「すみませーん。ガチャガチャ……」
「ありませーん! ガチャ終わりましたー!」


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