眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

クリスマスアップル

2014-01-21 00:00:37 | クリスマスの折句
 眠り時とされる時が訪れ、眠りを迎え入れるすべての形を整えても当の眠り自身が訪れませんでした。
「おーい。こっちだよ」
 誘ってみてもまるで駄目でした。それはあまりにも策のない誘い方だったからです。どれほど魅力的な夢の筋書きが待っているからとか、夢の国にかつてないほど美味なパンが焼きあがっているからとか、それなりに引きつけられる題材が必要なのだけれど、私の声はただ私のいる方向を示しただけで、工夫のかけらもないものだったからです。けれども、いつまで経っても誘うことに慣れませんでした。私は私自身に話しかけているような気がして、工夫を凝らすことが恥ずかしいことだと思っていたせいです。
 仕方なく他人の日記やつぶやきの中に潜り込んで、挫折感を紛らわすことにしました。関心はどこまでも薄く、一字一句を噛み砕くことなどできません。ただ筋力を使わないジョギングのように、傷つくことのない真夜中の獣道を、幻の風を感じながら下りていくのです。どこかで眠りを持ちわびながら、幾度も繰り返される更新。やがて、それにも終わりの時が訪れて、私は足を止めなければなりません。時の行き止まり。それが私の現在地。私は呆然と真っ白い壁を見続けています。
「誰も訪れませんよ」
 私の枕元に跪いて、忍者が言いました。
「待っていれば、誰かが訪れるはず」
 あるいは人ではない、何かが……。
「時代が終わったのです」
 無情に忍者が言いました。人の目を見ず、膝小僧を見つめています。
「そこに何があるのですか?」
 私はそこに秘密の抜け道があるのかもしれないと考えました。
「ご注文をどうぞ」
 注文はとっくの昔に通したと私は答えました。
「ご注文をどうぞ」
 私は新しい注文をひねり出さなければならない必要に迫られたのでした。そして、迫られていると次のような歌が浮かんできました。それはクリスマスの折句でした。

首筋に
林檎をつけて
ストリート
マップの中の
スイーツを追う

 忍者の膝小僧を見つめる内に、私は徐々にうとうととしてきました。


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