眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

さらば理想の上司

2021-02-17 01:31:00 | 無茶苦茶らくご
 親は選べないと申しますが、上司だって選べないもんでござんす。苦労して意中の会社に就職できたはいいが、そこの上司が酷い奴だったとあればさぞがっかりでございましょう。上司というのは、毎日毎日顔を合わせるものでございます。贅沢は言わないまでも、最低の上司だけは避けて通りたい。それが人情ってもんでございますな。

「下手でもいいじゃないか。
半沢!
好きなように踊ってみたらどうだ?
お前が思う以上にお前は下手かもしれん。
それは誰からも誉められたりしない。
馬鹿にされたり、笑われたりもするだろう。

だがな、半沢!
それは人に勇気を与えるんだ!
お前のような下手くそこそが、皆に大きな勇気を与える。
そうだ、お前の捨て身の舞が力になるんだ。
だから、思いっ切り踊ってみせろー!
なあ、半沢!」

 悪い上司というのは、面倒な仕事は全部まとめて部下に押しつけるもんでござんす。そのくせ後で美味しいところだけ持っていってしまう。全くとんでもねえ野郎がいるもんでございます。反対にいい上司というものは、面倒なところを引き受けて部下にいい感じでバトンを渡すんですな。後方を援護しつつ部下の力が発揮できるような道を作り、全体として仕事が円滑に回るようにしてしまうんですな。そりゃもう人間の度量と申しましょうか、器が違うんですな。残念ながら、部下は上司を選ぶことができません。会社の情報はリサーチできても、上司の人間性までも知ることは極めて難しい。しかしながら、本当にいい会社ならば人材も整っているはずでございましょう。ろくでもない上司がいばっているような会社はろくなもんじゃねえや。やめちまえってなもんだい!

チャカチャンチャンチャン♪

「半沢!
私の言いたいことはここにまとめておいた。
あとは皆にお前から伝えてくれ!
ここに長々と書いて、はんこも押しておいた。
はんこもこれが最後になるかもしれん。

お前の方が息が続くだろう。
抑揚をつけて皆に訴えかけてくれ!
お前の声はなかなか響くじゃないか。
だからお前に任せようと思う。
多少細かい表現は変えてくれて構わない。
そこはお前の好きにやってくれ。
その方がお前もやりやすいだろう。
信頼できるお前だから、私も任せられる。

半沢!
あとのことは任せたぞ!」

 仕事というのはチームワークが大事でござんす。よいチームというのは1+1が2になるどころが3になる。もっとよいチームなら10にも20にもなる。色んな化学反応が起きて個の実力からは考えも及ばないくらいのチームが作られるものでございます。悪いチームではこうは事が運びません。1+1が2になるどころか1のまま。もっと悪いチームならゼロにもマイナスにもなるのでございます。足しているはずが実際は引っ張り合っているんですな。力が合わさるどころか弱まりながらバラバラになっていくのですから、そんなチームはチームとして最悪です。一人でやった方がましってもんでございます。いったい誰のせいでそんなチームになっちまうんでしょう。えーっ、なんなんだーい!

チャカチャンチャンチャン♪

「迷った時には人の仕事から先にやるんだ。
その方が仕事が上手く回るぞ。
仕事を回すということは庭を作るようなものだ。
どこに何を置けば美しいか、全体からみて考えねばならん。

半沢!
油断はするな。傘を持って行け。
それから薄手のセーターか何かも、持って行ったらどうだ。
向こうはこちらより寒いからな。
心配するな。ちゃんと申請は済ませてある。
現地に着いたら、早速クーポンを受け取ってくれ。
遠慮なくお前の好きに使え。
クーポンとはそういうものだ。

いいか、半沢!
仕事は遊びだ! 
だから胸を張ってクーポンを受け取ってこい!
そして受け取ったら、忘れずに使え。
使いそびれたクーポンは、ただの紙屑だ。
そうならないためにも、どうか存分に使ってくれ!」

 いったいこの仕事は自分に向いているのだろうか。誰しもそんな疑問を抱くもんでござんす。好きなことが向いているとは限らない。向いていることが好きだとも言い切れない。なかなか難しいものでございます。思わぬミスが続くと自信がなくなってミスがミスを呼ぶ悪循環に陥るなんてこともございます。頑張っても頑張っても結果が出ないともう逃げ出したくもなりますな。ミスを責めるくらいなら誰でもできる。そんなものは上司の仕事じゃございません。ミスをネチネチ責めるなんてのは、いい上司でもなければ人としてもろくでもねえもんだ。そんな会社はとっととやめちまえ。逃げ出しちゃえーってなもんだい!

チャカチャンチャンチャン♪

「半沢!
人間いい時も悪い時もあるぞ。
世の中いい奴ばかりではあるまい。
それと同じだ。ははっ。
お前はいいものを持っている。
だが、今は少し迷う時のようだ。
言ってみればスランプだ。

なあ、半沢。
スランプを引きつけけてみろ!
バネのように引きつけるんだ。
駄目な時は、何をやっても駄目だ。
どうやっても上手くいかんのだ。
しかしな、半沢。
ある瞬間、必ずターンする時が来る。
そういうものだ。
辛い時を乗り越えれば逆転するんだ。

なあ、半沢。
だったら耐え甲斐もあるじゃないか!
失敗しない奴がいるか。
今はたくさん失敗して、先で笑えばいいじゃないか」

 世の中には自分そっくりな人間がいるそうでござんす。「あんた日曜日の夜あそこにいましたね」なんて言われると思わずドキッとするものでございます。冷静になって考えてみるといるはずがない。ところが相手方は否定してみても一向に引き下がらないから困ったものでございまして。「いやいや絶対いたって」思い込みの激しい人はいるもんでございまして、しかし人間というものは同じ瞬間に別の空間に存在することはあり得ないわけですから、当人がいないと言っている方が確かなはずでございますが。「いやいや絶対いたって」といつまで経っても引き下がらない、その絶対という自信を他に取っておいたらどうだいお前さん。えーっ、どーなんだい!

チャカチャンチャンチャン♪

「おい、半沢!
その後調子はどうだ?
少しは前が向けるようになったか。 
飯は食ったか?
何でもいいから食べないと駄目だぞ。
カレーでもラーメンでもいいじゃないか。
パンだっていいんだぞ。
菓子パンもいいじゃないか。
なあ、半沢。
聞いているのか?
返事は?

おい! 半沢!
聞いてるのかと言ってるんだ。
どうなんだ、半沢。
聞いているのかと言っているを聞いてるのか?
聞いてないのか?
聞いているのか?
聞いている振りをして聞いてないのか?
聞いてない振りをして聞いているのか?
それを私に聞かせてほしい。

おい、半沢!
どーなんだ!

おい!
半沢半蔵!

はっ?
お、お前は……
いや、
こ、これは失礼した。

ちょっと姿勢がよかったものでな、
つい勘違いしてしまっていたようだ。
もしやと思ったが、
いやこれは、お恥ずかしい限り、
大変な人違いであった。
どうか、お許しいただけたい。
全面的に私の落ち度を認めさせてもらう。
この通りだ。
誠に、
誠申し訳なかった。

では、さらばだ!」


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