緑色の服に身を包んだ男たちが大通りの方を向いて立っていた。みんな手にライフル銃を持っている。僕はその背後を静かに通り過ぎた。彼らの関心は向こう側に集中していた。けれども、突然その中の一人が振り返ってライフルを構えた。あまりに急だったので手を上げることもできず、その場に固まってしまった。大きな音がしたが、幸いに空砲だったようだ。偶然に僕が持っていた拳銃があらぬ誤解を招いたのかもしれない。僕はあえて銃身の方を握りしめて歩くことにした。なんだネズミかくらいの感じで、彼らもそれ以上の関心は示さなかった。
いつもの道を通って階段を下りた。いつもと違って地下構内には人の姿がまるで見られなかった。ボタンを押してエレベーターを待った。エレベーターは最下層から這い上がってきて、普段とは違う大きな響きで到着を知らせた。乗り込んでボタンを押そうとするとどこからともなく男が乗り込んできた。緑色の服ではない。男は黒のスーツを着ていた。
「ナガイか?」
「はい」
僕は動揺して口を滑らせた。
「いいえ。ナガイじゃありません」
自分がナガイではないこと。緑の集団に関わる者ではないこと。ただの一般人であることを急いで説明した。
「通勤路なんです」
「それで来たのか?」
男は驚いた様子だった。
「まずいな……」
「帰らせてください」
男は黙って首を振っている。獣のうなり声を上げながらエレベーターは急降下していた。扉が開くとほとんどそこは闇の中だった。
「行くぞ!」
男が背中を押した。足下が不確かで転びそうになる。薄暗い迷路の中を男の手に引かれて進んだ。何度も角を折れてもう一人で後に戻る自信もなくなった。男は一つのドアの前で立ち止まった。ドアを開けるとロッカーに荷物を入れるように僕の体を押し込んだ。
「寝ろ!」
そこは人間が一人なんとか眠られるだけの空間を持った穴だった。軽率だったばかりに、こんなことになるのか。何かわからないけれど、あのイベントが終わるまで、ここで夜を過ごさなければならないのか……。しばらくの間、軽率な自分を責めて穴の中にいた。
それにしても、充電器ないしな。Wi-Fiないし。それはなんとも耐え難く許せないことだった。ドアを開けてみた。鍵はかかっていない。
「おーい! 誰かいるのか」
闇を見ていると徐々に目が慣れてきた。迷路の中に穴のあいた空間がいくつも存在している。
「おーい!」
返事はない。けれども、微かに人の息のようなものが聞こえていた。
我々の
種きた道を
知るために
蓋を開いて
ネット参照
折句「渡し舟」短歌
いつもの道を通って階段を下りた。いつもと違って地下構内には人の姿がまるで見られなかった。ボタンを押してエレベーターを待った。エレベーターは最下層から這い上がってきて、普段とは違う大きな響きで到着を知らせた。乗り込んでボタンを押そうとするとどこからともなく男が乗り込んできた。緑色の服ではない。男は黒のスーツを着ていた。
「ナガイか?」
「はい」
僕は動揺して口を滑らせた。
「いいえ。ナガイじゃありません」
自分がナガイではないこと。緑の集団に関わる者ではないこと。ただの一般人であることを急いで説明した。
「通勤路なんです」
「それで来たのか?」
男は驚いた様子だった。
「まずいな……」
「帰らせてください」
男は黙って首を振っている。獣のうなり声を上げながらエレベーターは急降下していた。扉が開くとほとんどそこは闇の中だった。
「行くぞ!」
男が背中を押した。足下が不確かで転びそうになる。薄暗い迷路の中を男の手に引かれて進んだ。何度も角を折れてもう一人で後に戻る自信もなくなった。男は一つのドアの前で立ち止まった。ドアを開けるとロッカーに荷物を入れるように僕の体を押し込んだ。
「寝ろ!」
そこは人間が一人なんとか眠られるだけの空間を持った穴だった。軽率だったばかりに、こんなことになるのか。何かわからないけれど、あのイベントが終わるまで、ここで夜を過ごさなければならないのか……。しばらくの間、軽率な自分を責めて穴の中にいた。
それにしても、充電器ないしな。Wi-Fiないし。それはなんとも耐え難く許せないことだった。ドアを開けてみた。鍵はかかっていない。
「おーい! 誰かいるのか」
闇を見ていると徐々に目が慣れてきた。迷路の中に穴のあいた空間がいくつも存在している。
「おーい!」
返事はない。けれども、微かに人の息のようなものが聞こえていた。
我々の
種きた道を
知るために
蓋を開いて
ネット参照
折句「渡し舟」短歌
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