眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

クローズド・クローゼット(折句)

2018-03-28 01:49:59 | 短歌/折句/あいうえお作文
君のしたことは悪くなかった。クローゼットに冬服を片づけたところまでは。
「どうしてこんなに鍵をかけたの?」
念の入った仕事を姉が責め立てた。ちょうど忘れかけた寒波が町に押し寄せていた。君は4つ5つと厳重に鍵をかけていた。
「鍵は大切なものを守る時にだけかければいいの」
鍵は橋の上から投げ捨ててしまった。
「いったい何の影響なの? 映画の見過ぎよ」
そう言って姉はため息をついた。
「悪い意味でよ。そろそろちゃんと先のことを考えるようにしなさい」
工具箱から道具を引っ張り出すと姉は強引に鍵を破壊してしまった。扉には鍵ばかりでなく釘も念入りに打ち付けてあった。
「なんてことをしてくれるの。台風でも来るの? ここは家の中よ」
釘抜きを使って1本ずつ釘を抜いていく。不吉なカウントダウンが始まっていた。
「わかってないのね。夜の花見は随分と冷えるのよ」
釘の散らばったクローゼットの前に邪魔をするように君は立っていた。
「花見って面白いかな?」
「あんた、まだ何か隠しているのね」
君はクローゼットの奥に封じ込めたもののことを、恐ろしくて口にできなかった。
「まさか魔物を……」
その時、どこかで硝子をひっかくような音がした。



エアコンに
お世話になった
真冬から
一歩離れて
あけるファスナー

折句「エオマイア」短歌


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