眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

クリスマスマグロ

2013-12-20 00:55:01 | クリスマスの折句
 先日、昔住んでいた街中を歩いておりますと、見覚えのある大きな硝子が見えました。硝子の中身は歯医者さんで、数年前に通ったことがあったので覚えていたのでした。その外観は少しも変わりなく、その筒抜けの中の様子を覗き込んで見ると待合所の椅子の様子も、壁に埋められたテレビの大きさも、何1つ変わりがないようでした。私はしばし懐かしさに浸りながら中で待つ人々の背中や、その向こう側のテレビを眺めていました。
 カウンターの周りで動き回る女性の少し愛想の悪い面影も、昔と同じでした。けれども、その奥から現れた大柄な男は、全く見覚えがありません。彼こそは海の男でしょうか。
 海の男は今朝仕入れてきたばかりのマグロをカウンターの上にでーんと載せ、手馴れた動作で包丁を振り下ろすと、手際よく巨大なマグロをさばいていくではありませんか。これにはニュースを見ていた老人も、アンパンマンと遊んでいた子供も手を止めて、すっかり心を奪われている様子です。
「しっかり治して、旨いものをたくさん食べましょう!」
 みんなが海の男の声に頷きながら、改めて歯の大切さを自覚する姿を眺めていると、私も部外者ながらそのパフォーマンスの説得力に心打たれてしまったのでした。すっかり心打たれながら次のような歌が浮かんできました。それはクリスマスの折句でした。

クルーズは
領土によって
数千の
マグロの中で
スカイプをする 

 死んだマグロのような目で包丁の光を見つめていると、歌を得た魚はゆっくりと逃げていくようでした。

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