もうすぐ着くというのであたふたとして、バスタオルの柄が気になったので風呂場にいると、彼らはいつの間にか密かに存在する裏口から家の中に入っていたのだった。両親でも親戚でもない、実家の近所に住む親子だった。
「遠方から大変だったでしょう」
「都会の暮らしはどうだ?」
僕は借りていた本のタイトルを出して、ちょうどそのような感じだと言った。
「どんな内容だね?」
「うーん……」
まだ全部読み切っていなかったのだ。
「伝えるには、まだ早いんですよね」
それから3人で黙々とお茶を飲んだ。
目印に置いていた前方の車は曖昧な位置にいた。器用なドライバーが隙をつくように追い抜いていく。やがて目印はローカルな道に折れる。その手前では、数台の車が不吉な貼紙を目にしたように急に停止してはターンしていった。パトカーが脇をかすめるようにして追い抜いていった。はっとする。
「一方通行?」
そうではなかった。何か不吉な気配がし引き返すことにした。横道に頭を突っ込んでバックした。サイレンをつけたパトカーが仲間をつれて戻ってきた。周りを囲まれたので、車を降りた。1人が僕の胸元を指差した。
「シートベルトなし。逮捕します」
すぐに僕は逮捕され、みんなの前を歩いた。心構えをする暇もなく、涙が滲んでくる。
怒れ! 怒りで涙が凍りつけ!
調理室の前を通過する。どうか母が出てきませんように。僕はそれだけを祈った。
どこにも逃げられはしないのに、先生は犬を引っ張るように僕を引き獣道を歩いた。やり場のない反抗心が、道に高く伸びた植物の先に僕の手を伸ばした。引き千切ろうとしたのだ。
「何を取ったの?」
後ろから女子生徒の声が聞こえた。
何も取っちゃいないよ。取れないんだから。取りたかったけど、取れなかったんだから……。
どうして僕がこんな目に……。
黒い水の溜まった神殿の中に先生を突き落とした。先生は真っ黒に汚れながらも、威厳を失うことはなかった。
「私の汚れはすぐに落ちる。すぐに誰にだって会えるわ。あなたの犯した罪は、一生消えることはないでしょう」
誰にでも会えるという自由が、強く胸を打った。
みんなから遠く離れた場所で、とうとう涙があふれ始めた。
「遠方から大変だったでしょう」
「都会の暮らしはどうだ?」
僕は借りていた本のタイトルを出して、ちょうどそのような感じだと言った。
「どんな内容だね?」
「うーん……」
まだ全部読み切っていなかったのだ。
「伝えるには、まだ早いんですよね」
それから3人で黙々とお茶を飲んだ。
目印に置いていた前方の車は曖昧な位置にいた。器用なドライバーが隙をつくように追い抜いていく。やがて目印はローカルな道に折れる。その手前では、数台の車が不吉な貼紙を目にしたように急に停止してはターンしていった。パトカーが脇をかすめるようにして追い抜いていった。はっとする。
「一方通行?」
そうではなかった。何か不吉な気配がし引き返すことにした。横道に頭を突っ込んでバックした。サイレンをつけたパトカーが仲間をつれて戻ってきた。周りを囲まれたので、車を降りた。1人が僕の胸元を指差した。
「シートベルトなし。逮捕します」
すぐに僕は逮捕され、みんなの前を歩いた。心構えをする暇もなく、涙が滲んでくる。
怒れ! 怒りで涙が凍りつけ!
調理室の前を通過する。どうか母が出てきませんように。僕はそれだけを祈った。
どこにも逃げられはしないのに、先生は犬を引っ張るように僕を引き獣道を歩いた。やり場のない反抗心が、道に高く伸びた植物の先に僕の手を伸ばした。引き千切ろうとしたのだ。
「何を取ったの?」
後ろから女子生徒の声が聞こえた。
何も取っちゃいないよ。取れないんだから。取りたかったけど、取れなかったんだから……。
どうして僕がこんな目に……。
黒い水の溜まった神殿の中に先生を突き落とした。先生は真っ黒に汚れながらも、威厳を失うことはなかった。
「私の汚れはすぐに落ちる。すぐに誰にだって会えるわ。あなたの犯した罪は、一生消えることはないでしょう」
誰にでも会えるという自由が、強く胸を打った。
みんなから遠く離れた場所で、とうとう涙があふれ始めた。
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