人の列は数えるほどで順調に流れてすぐに自分の番がきた。
「異世界行き1枚」
「すみません、もう一度」
「異世界……」
「そんなものはない。後ろを見なよ」
急に声のトーンが変わった。
「えっ?」
駅員に言われるまま振り向いた。
「食われちまうよ」
僕の背後には無数のゾンビたちが列を成していた。さっきまではいなかったはずだ。僕が先頭に立ってからしばらくの間に、状況が作られたに違いない。
「本当にないんですか」
背中に圧を受けながら食い下がった。彼は間違いなく人を見ていた。異世界行きの切符はあるのだ。
「お客さん理由はあるの?」
駅員が口を開くと中から鋭く光る2本の牙が出てきた。
ああ……。それ以上声が出なかった。尖った銀色の先を見つめている内、僕は身動きができなくなった。誰かが僕の肩の右に触れ、続いて左に触れた。
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うたかたの読者になってさまよえばカクヨムは異世界の趣
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