扉が開くと中から明るい光が射し込んで来て、そこは初めて私がみる世界でした。みんな緊張した面持ちで、静止したまま自分の出番を待っているようでした。トマトは少し頬を赤らめ、チーズは不自然な姿勢を保ったままチーズであり続け、大柄なウーロン茶だけは、少し波打ちながら胸の内を隠し切れない様子でした。水っぽいレタスと、ごつごつとしたじゃが芋の間に、ご主人様はそっと私を置きました。その時、誰1人言葉を発することのできるものはいなかったけれど、私の周りではざわざわとした葉触りのようなものが湧き起こっていたのでした。扉が閉まるとそこは完全に暗闇で、ご主人様の背中で揺られている時のように真っ暗で、けれども、そこは冷え冷えとした世界でどこか地の底の方からブーンという音と振動が伝わってくるのでした。きっと、ご主人様は誤ったのです。私と私に似た何かを取り違えて、私をここに入れてしまった。私をここに残しておいてしまった。いったい誰と、いったい誰と……。私はその間、誰とも話さなかったし、誰とも仲良くなることもなく、ただ私であり続けました。たいした罪もなく、大きな意味もなく、私はただいつもより少し冷たくなって、元の場所に帰ることになりました。
ご主人様の手の中で踊りながら、ご主人様の目の前に広がる世界の中で、ただ1つの現在地を知らせるために、時に物静かに時に忙しなく動き回り、私は私に与えられた本来の仕事に全力を尽くします。
そして、時には突然、ご主人様の意思に逆らって一切の命令を無視する時があります。その時、私はあの瞬間のことを思い出しているのかもしれません。あの扉が開き、閉じられた瞬間のことを……。
水っぽいレタスと、ごつごつとしたじゃが芋の間に、ご主人様はそっと私を置きました。
ご主人様の手の中で踊りながら、ご主人様の目の前に広がる世界の中で、ただ1つの現在地を知らせるために、時に物静かに時に忙しなく動き回り、私は私に与えられた本来の仕事に全力を尽くします。
そして、時には突然、ご主人様の意思に逆らって一切の命令を無視する時があります。その時、私はあの瞬間のことを思い出しているのかもしれません。あの扉が開き、閉じられた瞬間のことを……。
水っぽいレタスと、ごつごつとしたじゃが芋の間に、ご主人様はそっと私を置きました。
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