眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

君はPayPayを使えるか

2023-06-10 09:10:00 | コーヒー・タイム
 入り口のドアが30センチほど開いていた。すぐに誰かが出るのではなく、ずっと開いているのだ。それは冷房をつけていないことを語っていて有り難かった。
「いらっしゃいませ。どうぞ」
 イートイン客は誰もいないようだった。案内は適当な空間で止まった。あとはお好きなところへということだろう。入り口に近い場所にかけてコーヒーを注文した。10年振りくらいだろうか。相変わらず壁に貼り紙が多い。
7時~19時30分まで 
コーヒー350円(原価高騰のためやむなく値上げしました)
英会話始めませんか?
 昔は21時か22時くらいまで開いていたと思う。時短と値上げが世の中の今の流れのようだ。
☆お知らせ
 席の移動はお控えください。
 一度お座りになった席でお願いします。


 継続は力だろうか?
 継続だけが力をくれるように思える。
 続けたい。ずっと続けていきたい。
 ずっとコーヒーを飲み続けたいと思う。


 昨日は少し怖い夢をみた。少し怖いほど印象に残る。
「行ってみようよ」
 カップルが部屋に近づいていた。彼らはきっとテレビを貸してくれと言うはずだ。中でゲームをやりたいのだ。僕はベルが鳴る前にドアを開けた。カップルではなく、奥にもう一人いたので少し驚いた。一緒に来てほしいと言う。それも予想外だった。あと一人が足りないらしかった。
「哀れなヤンキーを助けると思って」
 一番奥の男が目を光らせながら言った。
「ゲームなんだけど、授業料は千円でいいんで」
(別に勝てばあれだし……)
「いいけど」
 僕は彼らについて部屋を出た。参加者は思ったより多く、ギャラリーもいた。会議室を走り回って、簡単なかけ算の間にしりとりを、動物占いの間に謎々を解いた。ハンカチをたくさん集めて、最終的には暗号化された自分の名札がある場所に着席する。座るだけなのに。わかってはいたが、最後になって自分の体が思うように動かなかった。最下位だ。
「こんなの3000回くらい練習しないと無理だろよ!」
 最下位になって僕はきれた。
「悪かったよ。金はいいから」
「金は払う!」
 ヤンキーはあっさりと金を受け取った。やっぱりな。

 部屋に戻るとすぐに鍵をかけた。もう出ないつもりだ。その時、窓の向こうを誰かが横切ったような気がした。念のため財布の中を確かめた。
 誰だ?
「ママー!」
 2歳くらいの男の子が冷蔵庫の横に立っていた。どこから入ったのだろう。
「ママはどこ?」
「ママー!」
 泣いてばかりの男の子をすぐに連れ出した。会議室に入るとヤンキーたちはスーツを着て立派な大人に成長していた。

「この子を知っていますか?」
「そこに置いといてください」
(見ときますから)
 彼らからは危機感がまるで伝わらなかった。見えているものが違うのかもしれないと思い、僕はぞっとした。

「部長、これ直ると思います?」
「わからない。とりあえず光に当てておこう。あとは時間と、信頼だな」
 

 1時間の間に客は3人ほど来たが皆テイクアウトの客だった。ここは半分ケーキ屋さんなのだ。売り切れですかと残念そうに帰って行った者もいたようだ。シュークリームだろうか。店内に客がいなくてもあまり問題がないのは、ファスト・フードと同じだ。席を立つとすぐに店の人がレジまで来てくれた。

「PayPayで」
「PayPayは650円からになります」
(あー……)
「いらっしゃいませ」

 小銭を出す間に客が入ってきた。前にもこんなことがあったのだ。シールがあっても油断してはならない。PayPayは夜だけとか、週末だけとか、条件付きの店も多いのだ。
 650円からね。
(コーヒーをおかわりしとけばよかった)

コメント
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