先生は潔白だったが、気がつくのが遅かった。長く苦労を共にし千枚にも及ぶ傑作を書き上げたペンはずっと逆さだった。最後の一行を書き終えた時、すべては真っ白だった。「何も書けていないくらいでよかったですね」編集者が慰めた。もしもペンがナイフなら、先生は赤く染まっていた。#twnovel
猫が機械の前に座っている。「ミルクティー?」答えないのは同意のサインか。「ホット? アイス?」やはり猫は答えなかった。「どっち?」答えないのはどうでもいいと同意か。連続して投入したコインは立て続けに返ってくる。猫はその遥か頭上、音もなく流れる青い瞳を見上げていた。#twnovel