眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

トカゲ整骨院

2009-08-27 20:06:24 | 猫を探しています
「いいえ。私は演歌歌手です」
そう否定されて、僕は訴えるべき場所を完全に誤っていたことを知ったのだった。
僕は、拳を蟹のように握り締め、ジェルモアはグーを出して勝利した。
ジェルモアは歌いだした。

  いくつもの電車を乗り継いで
  ついでに僕は探しに行くよ
  この世で一つの宝石箱を

  磨きに磨いたこの拳
  失えなかった8月は
  粘土作りの海の家

  あなたはたった一人の街の人
  舞うように迷い込んだ
  恩も義理も捨てていく

  僕は老いてしまった空家の中で
  いつもせっけんの流れを思い出す

  いくつもの電車を乗り継いで
  ついでに僕は探しに行くよ

「あなたも探しているんでしょう」

ジェルモアは突然、歌をやめて言った。

「たったの猫を。
 猫を探すのは、骨が折れるものです。

 トカゲ整骨院に行くといい」

そう言って、ジェルモアは紙切れに地図を描いて渡してくれた。
地図にはいくつものローソン、いくつものAUが目印として書かれ、大きく弧を描いた道の向こうに「トカゲ整骨院」はあった。

「ありがとう。
 間違えたのに。 ありがとう」
コメント
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