中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

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一見キャッチボール風のコミュニケーション、でも違う!

2016年08月17日 | コンサルティング

Aさん:「お住まいはどちらですか?」

Bさん:「世田谷区です」

Aさん:「世田谷ですか。世田谷は緑がとても豊かですし、住みやすいでしょうね。」

Bさん:「はい、有名人もたくさん住んでいますし、高級住宅街もあります。私は○○駅の近くですが、あの辺りは買い物もしやすいですし、とても便利です」

Aさん:「そうですか、いいですね。世田谷区には長く住んでいらっしゃるのですか?」

Bさん:「10年以上です。」

Aさん「そうですか。世田谷区が気に入ってらっしゃるのですね」

Bさん:「はい、当面住み続ける予定です」

Aさん:「そうですか」

Bさん:・・・・・・ 

Aさん:・・・・・・(「で、あなたは?」と聞いてほしい)

これは、AさんからBさんへの問いかけからコミュニケーションがスタートして、その後もAさんの問いかけ→Bさんの返答→Aさんの問いかけ→Bさんの返答とやりとりが続いていますが、逆にBさんからAさんへの問いかけはなされないまま、会話が終了した例です。

Aさんとしては、Bさんから「Aさんはどちらにお住まいですか?」と聞いてもらえれば、自分のことについて話をするきっかけを得られたわけですが、結局Bさんからの問いかけはなく少々がっかりしているのですが、皆さんもAさんと同じように感じた経験はありませんか?

このようなコミュニケーションは一見、双方向で行われて傍から見ると会話のキャッチボールがうまくいっているように見えますが、Aさんはコミュニケーションのきっかけを作り続け、Bさんはそれに返答することばかりが繰り返されているため、実はAさんが自分のことについて話をするきっかけを得られていないのです。

もちろん、Bさんからの問いかけがなくても、Aさんから「私は○○に住んでいるのですが」と話し始めても良いわけですが、Bさんから「Aさんはどちらにお住まいですか?」と聞いてもらうほうが、スムーズに話しに入れると思います。

これは「返報性の原理」(人は他者から何らかをしてもらった場合に、お返しをしなければならないと感じる心理)が生かされていないコミュニケーションの典型例です。

たとえば、上司が部下と面接をするときや営業が顧客にヒアリングをするような場面では、一方が質問をし続け他方がそれに答え続けるような場面はあり得ます。しかし、通常のコミュニケーションでは、一方が問いかけを続けるばかりで相手からの問いかけがないと、答えている方は自分の話がたくさんできるので楽しく感じるかもしれません。一方で問いかけ役になってしまった方は自分から話ができる場面が少ないため、フラストレーションを感じかねず、その結果、双方が楽しめるコミュニケーションにはならないのではないかと思います。

このように、通常のコミュニケーションで双方が楽しいと感じることができるようにするためには、双方が話しをする割合が大きく異なってしまうことのないように意識してコミュニケーションをすることがコツだと思います

相手が問いかけ上手だったり聴き上手だったりすると、つい自分ばかりが話をしてしまいがちですが、もし自分の話ばかりが続いてしまっているなと感じたら、相手にもコミュニケーションが楽しいと感じてもらうため、お返しに「それで、あなたは?」と問いかけてみることが必要だと考えていますが、皆さんはどう思われますか。

(人材育成社)