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「聴く」ではなく、「訊く」がコミュニケーションのスタートなのではないか

2016年08月10日 | コンサルティング

 コミュニケーションの中で、「きく」ことの重要性はビジネス書をはじめとして、研修やセミナーでたびたび取り上げられます。

これらの研修やセミナーでは、一般的に「きく」には「聞く」、「聴く」という違いがあり、コミュニケーションにおいて最も重要なのは、こちらが主体的に相手の話の内容に関心を持ち理解しながら「きく」=「聴く」であるとされています。

さらに、相手の話に相槌を打ったり、積極的な態度で丁寧に聴く=「傾聴」と、反対に特に興味や関心を示さない「きき方」との違いをロールプレイングによって体感していただき、「傾聴」がコミュニケーションにとっていかに大切なことであるかを説明することが多いです。

私自身も過去に同様の演習を取り入れたこともありますので、もちろん、これを否定するわけではないのですが、最近改めて思うのは、コミュニケーションのスタートは傾聴よりも、むしろ「訊く」ことではないのか、ということです。

「訊」は常用漢字ではありませんので、普段はあまり使うことのない漢字ですが、その意味は「相手に尋ねる」ことで、コミュニケーションにおいては具体的には「質問をすること」です。

質問というと、多くの場合は相手に疑問や理由を確認したり情報を聞き出すために行うものであると定義されますが、それ以外にも相手に重要なポイントを気づかせたり、考えを整理させたりするために行うという面もあります。

さて、上記のようにコミュニケーションにおいては、とにかく相手の話をよく「聴く」ことが大切であるということが定説のようになっていますが、相手が話をしたくてうずうずしている人ならば、こちらが一所懸命に聴いてあげれば嬉しくなって、どんどん話をすると思います。

でも世の中、話をしたくてうずうずしている人ばかりではありません。相手との関係性がまだ出来ていなかったり、上司と部下の関係であったり、顧客と営業の関係であったりする場合には、必ずしも積極的に話をしたい人ばかりではないと思います。

そのような場面でも一方がタイミングよく質問をすることで、もう一方は話しだすきっかけを得られ、さらに聴き手が熱心に聴いてくれれば、話を続けやすくなるわけです。さらに、自分が話したいと思っている内容についてタイミングよく質問してくれれば、「もっともっと話を続けたい」という気持ちになるだろうと思います。

 

しかし、実際のコミュニケーションの場面では、話のきっかけとなるような質問をしてくれる相手ばかりではありませんから、そういう場面ではつい関係のない雑談を始めてしまったり、自分の話を一方的にしてしまったり、相手に聴くことを求めることになってしまっていることが非常に多いように感じています。

聴き手がどんなに「あなたの話を聴きますよ」という態度を示してくれたとしても、話のきっかけがなければ、話を始めることすら難しいのではないか。

そのように考えると、コミュニケーションのスタートは「聴く」ではなく、実は積極的にこちらの「訊く」から始めるべきではないのかと考えているのですが、いかがでしょうか。

(人材育成社)