中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

社員99人以下の会社の人材育成に役立つ情報を発信しています。

第1,131話 人材への投資に向けた取組

2022年08月31日 | コンサルティング

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「トップの方針で研修の予算が削られることになってしまいました。人事部としてもトップの判断に正直驚いていますし、ショックです」

これはコロナ禍の少し前、4,000人規模の社員がいるA組織の研修担当者からお聞きした言葉です。弊社がこの組織の研修を担当させていただくようになって以降、その時点で10年経過していましたので、こちらとしても非常に残念だと感じました。研修を中止した理由をお聞きしたところ、人材育成にかかわるコストを今後は顧客へのサービス提供に振り向けるというトップの考え方ということでした。

顧客へのサービスを厚くすることは組織の戦略としてとても大切なことだと思います。しかしサービスを提供する担い手である社員の育成を中止や削減してしまって、よりよいサービスを提供することはできるのだろうか、目的と手段がちぐはぐになってしまってはいないだろうかと感じたことを覚えています。

組織にとって「ヒト・モノ・カネ」は重要な経営資源です。中でも「ヒト」は最も大切な資源だと考えられており、ここ数年、様々な組織で人材への投資に関心が高まってきています。先が見えない時代と言われて久しいですが、そういう時代だからこそ競争力の源泉は人だと考えられるようになってきているのです。そのために、組織の将来を見据えて自組織にはどういう人材が必要なのか、それをどのように育成するのか。あるべき姿から逆算して考える必要性がこれまで以上に高まってきているということなのでしょう。このように人材とその育成に注目が集まるようになってきたことにより、企業に投資する際に人材戦略が重要な判断材料になる傾向にもあるようです。

かつて、景気が悪くなるとコスト削減の一環として早々にカットされていたのが、広告費、交通費、交際費と並んで教育費でした。実際、「設備投資したため、教育はしばらくお預けにします」という話を経営者から聞いたこともあります。確かに社員を採用し、社員教育を行うなどの人材への投資は、今日行ったからといって必ずしもすぐに効果が現れるものでもありません。設備投資などに比べ目に見えないだけに、その意味や価値がはっきりしないと思われてしまい、費用対効果の面などから効果がすぐに見込めないものは、当然のように後回しにされてしまっていた時代でもあったのです。 

そのような時代を経て、最近はようやく人材の価値を高めることに注目が集まるようになってきています。今後、投資家の関心もますます人材への投資に向けた取組に関する情報に向かっていくのではないでしょうか。

しかし言うまでもなく、人は簡単に育つものではありません。そのための投資も時間をかけてようやく回収ができるものであり、費用対効果の観点から急ぎすぎることなく、じっくり丁寧に行っていただきたいと思うのです。そして、先述のA組織のように人材育成を一旦中止してしまったところも人材育成の重要性を再認識し、取り組みを再開することを期待したいと考えています。

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第1,104話 女性管理職を増やすための意識改革とは

2022年03月09日 | コンサルティング

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「活躍してもらいたくて女性管理職に任命したけれど、実は本人がそれを歓迎していないのです」

これは、ある500人規模の組織の女性副社長から聞いた言葉です。その方は初の女性副社長として社外から抜擢されたのです。その使命の一つに女性社員の活躍支援があったため、女性社員の声を積極的に取り上げたり、活躍が期待される女性を積極的に管理職に登用するために働きかけを行ったとのことです。

ところが、管理職に任命して1年が経過したころ、当の女性から「本当は管理職にはなりたくなかった。」との話を聴いたのだそうです。組織のため、本人のため、後進のために良かれと思って登用したつもりなのに、歓迎されるどころか職を解いてほしいという声を聴いて残念に思ったのだそうです。同時に、女性管理職を増やすことの難しさを改めて感じたという話をしてくださいました。

さて、3月8日は「国際女性デー」でした。国際女性デーとは「国や民族、言語、文化、経済、政治の壁に関係なく、女性が達成してきた成果を認識する日」とのことです。日本では、諸外国と比較して依然として女性リーダーの数が少ない状態が続いています。女性管理職の割合のトップであるフランスの約4割と比べ、日本はわずか1割強(厚生労働省の「雇用均等基本調査」課長相当職以上の「女性管理職割合」は12.4%)です。

私は時々、女性管理職として活躍をされている方々の話を聴く機会がありますが、自ら管理職を志望して職位に就いた人は1割ほどで、それ以外は管理職になることを躊躇したものの、推薦や人事によってなったという人の方が圧倒的に多いと感じています。これらを踏まえると、多くの女性は管理職というポジションに対して、敷居の高さを感じてしまっているのではないかと思っています。

その理由としては、女性管理職として活躍しているロールモデルの数が圧倒的に少ないことがあるのではないかと考えていますが、それに加え男性の側にも女性管理職を受け入れる意識が醸成されていないことも大きいのではないかと思っています。現にある女性管理職から聞いた話では、管理職になった後に一部の男性社員から無視をされたり、意地悪をされたりするなど困った経験があるとのことでした。冒頭で紹介した女性管理職も、こうしたことが壁になっていたのかもしれません。

一方で、管理職になったがゆえのプラスの声もたくさん聴きます。具体的には管理職になって組織全体を俯瞰して見られるようになったという感想は多くの人が口にします。これは上のポジションに就いたからこそ得られた経験によるものだと思います。

それでは、今後女性管理職を増やしていくためにはどのようにすればよいのでしょうか。これまで様々な女性社員の声を聴いてきて私が強く思うのは、女性だけに意識変革を求めるのではなく、男性社員にも意識を変えてもらうために様々な場面で積極的に働きかけていくこと。それを少しずつであっても、根気強く進めていくことが何より大切ではないかと感じています。

日本において女性管理職がなかなか増えないのは、これまで長い時間の中で培われてきた日本の文化や風土といったものも影響しているはずです。だからこそ、焦らず、諦めず、女性にも男性にも意識変革を求め続けることが大切だと改めて思うのです。

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第1,094話 組織の断トツ一位として挙げられる問題

2022年02月02日 | コンサルティング

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

弊社ではこれまで問題発見・課題解決研修を何百回と担当させていただいてきましたが、官民問わず、業種業態を問わず、断トツの一位として挙げられる問題があります。

それは何だと思われますか?

答えは、「情報が共有されていないことによる問題」です。いうまでもなく「情報」はとても大切な経営資源の一つであり、これによる弊害は様々な形で表出するのですが、いずれにしても真の原因として考えられるのは「情報がきちんと共有されていない」ことに尽きます。

たとえば、様々な企業における不祥事の報道を見聞きすることがよくありますが、それらも本をただせば「情報が共有されていない」ことで起こったものが大半ではないかと考えられます。

近年、この情報共有するための方法としてクローズアップされているのが、デジタル化です。実際、大なり小なりデジタルツールを導入している組織が多いと思いますが、それではデジタルツールによって情報の共有は進んだのでしょうか?また、デジタルツールの導入によって組織の不祥事は減ったのでしょうか?

私がコンサルティングや研修を担当させていただく企業を見ている限り、残念ながらデジタルツールを導入しても、結局のところ情報の共有に関して目に見えるような効果が出ているところは少ないと感じています。

さて、それではどうして情報共有が進まないのでしょうか?理由は様々あると思いますし、既に語りつくされている感もありますが、私は一言で言うと「共有するメリットを感じない」人が少なくないということではないかと考えています。具体的には、「情報を共有したことによって怒られた経験がある、一方的に提供ばかりしていて享受するものがない、共有するルールはあっても面倒であるため優先順位が低い」などにより情報の共有への意識が低くなってしまうのではないかと考えているのです。

実際に、これまで様々な組織を見てきて感じるのは、共有すべき情報を決めたり、その方法を皆で考えたりしてもなかなか簡単には進まないようです。積極的に情報共有をしようと人がいる一方で、そうでない人がいるのも事実です。また、一度メンバー間で共有した情報であっても、時間の経過とともに記憶が薄れるなどで結果的に共有されなくなったり、ルール自体が忘れ去られたりすることさえあります。

そうすると共有したはずの情報に従わない人(仮にA)が出てきてしまい、それを発見した人(仮にB)が「○○については一年前に相談して△△で行くことに決まったよね」と注意しても、一方のAは「全く覚えていない。そんなことあったけ?」というように、勝手な行動をとったりしてしまうのです。

それでは、継続的にきちんとした情報共有を続けていくためには、どのようにすればよいのでしょうか?

これまでの私の経験から考えるのは、まず「情報を共有すること、し続けることはそもそも容易なものではない」という前提に立つことが肝要ということです。その前提に立ったうえで、特に共有しないとリスクを伴うような情報に関してはその都度繰り返し繰り返し、また複数の手段を使用して伝え続ける。これしかないということです。もちろん伝える側からすると、これには大変なエネルギーが要りますし非効率なことのようにも思えますが、情報が共有されなかった結果発生してしまう弊害の大きさを考えれば、これを進めるしかないと思うのです。

組織に2人以上の人が存在すれば、考え方はおのずと異なるはずです。それを踏まえ、対面で仕事をしようがテレワークであろうが、情報を共有するためにはトップの明確な意思と継続的な努力が必要だということをしっかりと意識したうえで、取組んでいくことが求められていると考えているこの頃です。

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第1,091話 会議は長いほどいい!?

2022年01月23日 | コンサルティング

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

朝日新聞・朝刊の1面に哲学者の鷲田清一氏が執筆している「折々のことば」という小さな連載コラムがあります。毎回とても良いことばが選ばれているので楽しみにしています。今回は「会議とはものごとを決める場ではない(出版社代表・木村元氏)」ということばでした。

仕事と会議は切っても切れない関係にあります。大企業の社員であれフリーランスであれ、会議を経験したことがない人はいないと思います。ですから、会議を「決める場ではない」と言い切ってしまうことに「え?」と思ってしまうことでしょう。

木村氏は「会議は異なる『声』や視点を提示し共有しあう機会。だから長いほどいい」と言います。

ビジネスパーソンならば「共有しあう機会」には納得できても「長いほどいい」というところには拒否反応を示すはずです。私もそうです。会議は、異なる声(意見)や視点(ものの見方)を全員で共有する機会であることは間違いありません。ただし「長いほどいい」とは思いません。

会議で声や視点を共有する目的は、結論というアウトプットを得るためです。もし結論が不要ならばそれは会議ではなく、座談会か独演会、せいぜい「井戸端会議」でしょう。いずれにしても会社のコストを費やして行うべきものではありません。以前にも書きましたが、会議とは結論という製品を製造する工場なのです。製品を作らない工場に存在意義はありません。

さて、私の知り合いに木村氏と同じような言葉を口にする経営者がいます。日頃社員に「大いに会議をしなさい」と会議を奨励しています。彼はどちらかと言えば気が短いタイプなので意外に思い、それはなぜかと聞いてみました。「会議は決定する場だ。決めたことは参加者の責任になる。そうすればどんなに小さな仕事でも責任をもって取り組むようになる」とのことでした。

そして「責任が伴うからこそ、色々な意見や視点を示して話し合うことが必要だ。そのためには長い時間がかかってもいいじゃないか」と言っていました。

「折々のことば」とは含む意味が逆になりますが、私は大変素晴らしい考え方だと思いました。たとえ短時間で「効率良く」会議を行ったとしても、あいまいな結論や責任の所在がはっきりしない決定しか得られないならば、その会議は無意味だからです。

私は彼の言葉に感銘を受け「なるほど。会議はいくら長くても良いのですね?」と聞いてみました。「もちろんだよ。私も気が短いとよく言われるのだが、会議に関しては長くても構わないと思っている・・・30分以内ならね」という答えが返ってきました。

あなたの会社の会議はどのくらい長いですか?

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第1,089話 営業支援ITツールの使い方にご注意を!

2022年01月16日 | コンサルティング

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どのような仕事にも必ず前工程と後工程があります。少なくとも自分が行った仕事のアウトプットは、自分以外の誰かに渡されます。それは開発門なら製造部、総務部なら社員全員、営業部なら顧客・・・いずれにしても自分の仕事のゴールが後工程の仕事のスタートになります。つまり、仕事の出来不出来を決めるのは後工程ということです。

この数年でテレワークが一気に普及し、仕事の進め方が大きく変わってしまいました。テレワークのプラス面は多々ありますが、最大の難点はコミュニケーションの取り辛さでしょう。それによって後工程からのフィードバックが十分になされなくなってしまう恐れがあります。特に営業部門では「目立たない形で」その難点が問題になっているようです。

「いや、そんなことはない。当社はSFA(営業支援システム)やCRM(顧客関係管理)を導入してから営業担当者別の案件の進捗状況を把握しやすくなった」、「顧客とのやりとりも十分かどうかデータを見ればわかる。何かあれば私から担当者に直接アドバイスできる」これは、ある中堅商社の営業担当役員の言葉です。

しかし、この会社の営業部長はこう言っています。「役員が直接担当者に指示を出すのは極力控えてもらうよう頼んでいます」管理者の頭ごなしに担当者に「アドバイス」されては現場が混乱するというわけです。営業担当者も、役員からの言葉がたとえ「ズレて」いたとしても無視することができず困ってしまうとのことです。

テレワークの普及により、企業では様々なITツールが使われるようになってきました。コミュニケーション上の問題を解決するために大いに役に立っている反面、こうしたマイナス面も無視できなくなりつつあります。

さて、役員をはじめとした経営層の後工程は誰でしょうか?それは株主、社員、顧客、取引先など「全て」です。正確に言うならば「ステークホルダー」です。「後工程はお客様」という言葉があります。多少極端かもしれませんが役員にとっては、いち担当者も「お客様」です。

では、役員は勝手に口を出さないようにすれば良いのでしょうか。ところがそう簡単には行きません。まず役員自身のフラストレーションが溜まります。それが溜まりに溜まると「大噴火」することもあります。それをまともに食らった管理者や担当者はたまったものではありません。

こうした事態に至らないための特効薬はないのですが、有効な手段の一つとして「会議」の有効活用をお勧めしています。会議という一種「公(おおやけ)の場」でしっかりと話し合うのです。多少の叱責やお小言もやむを得ないでしょう。ただし、会議以外の場では役員クラスからの「直接指示」は厳禁とします(多少の例外的なルールは仕方がありません)。

その前提として、経営層はステークホルダーとは何か(誰か)を十分に理解しておくことが重要です。そして会議は控えめにするよう心がけましょう。

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第1,088話 ルールの徹底にはナッジを利用する

2022年01月12日 | コンサルティング

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「仕組みを作っても、社員がその通りにやらない」、「なかなかルールが徹底されない」

これは弊社がお付き合いをいただいている中小企業の社長や、様々な企業の問題発見・課題解決研修を担当させていただいた際に受講者からよく聞く言葉です。

組織に人が2人以上存在する場合には、データの管理方法や書類の保管場所など、大なり小なり仕組みやルールが必要になります。仕組みやルールを作ったり、必要に応じて変更したりすること自体簡単なことではありませんが、さらにエネルギーを要するのが、それを守ること、徹底することです。

几帳面にルールを守る人がいる一方、ほとんど気にしないような人がいることも事実です。このため、ルールを全員で共有し徹底するためには、5W1Hなどの具体的な行動計画にしたり、面倒なものにし過ぎるなど敷居を高くしないようにしたりすることがポイントになります。

とはいえ、どんなに工夫をしてもルールを徹底することは簡単なことではないと思います。また、ルールを設けてしばらくの間は徹底されたとしても、時間の経過とともにいつの間にか形骸化してしまったり、ルールを徹底している人だけが煩わしい思いをしたり、損をしているような気持ちになってしまったりするようなことも起きてしまうこともあります。

こうした場合に私がお勧めしているのが、「ナッジ(nudge)」です。ご存じの方も多いとは思いますが、ナッジとは心理学や行動経済学において明らかになってきた人間の行動の原理に基づき行動のきっかけを提供する手法です。

もともとは「肘で軽く押す」という意味のナッジですが、2017年にシカゴ大学のリチャード・セイラー教授がナッジの研究でノーベル経済学賞を受賞して注目が高まるようになりました。

ナッジは、「人は客観的にみると、誤ったり損したりするような選択を知らぬ間にしてしまう」という前提に立った経済モデルを行動経済学とし、大きな費用をかけずに伝え方や表現の工夫だけで一定の成果を挙げることができるとされています。

実際の取り組み例として、宇治市役所では手洗いを促すための工夫として、庁舎のトイレに「手をしっかり洗いましょう」という通常の表現でなく「となりの人は石鹸で手を洗っていますか」というポスターを張ったところ、手洗いをする人が増えたそうです。これは、自分が手洗いをしているかどうかを周囲から見られていることが気になるという意識が働いた結果だと考えられます。これ以外にも、定期検診の受診率を上げるためにナッジを利用している八王子市役所の例など様々なところで取り組まれており、功を奏しているようです。

組織のみならず社会には守らなければならないルールや仕組みが様々あるわけですが、前述のように徹底することはなかなか難しいものです。しかし、そうした前提のもとでナッジのように表現や伝え方を工夫することで改善を試みてみることも一案です。なかなかうまくいかないと思っていらっしゃる方は、一度試してみてはいかがでしょうか。

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第1,082話 ファシリテーターを学ぶべき人とは

2021年12月15日 | コンサルティング

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「うちの社員は会議中、おとなしいので困る」

これは先日、私が定期的にお会いしている、ある中小企業のM社長からお聴きした言葉です。詳しくお聴きすると、会議ではその日の議題に基づいたテーマを社員が交替で発表する形で進めているそうです。これは、様々な社員にファシリテーターを経験してもらいたい、また会議の場で積極的に意見交換を行ってもらい、今後の業務をよりよく進めるための一助にしたいという社長の考えにより、このような方式を取り入れることになったのだそうです。

しかし、実際にはなかなかM社長が当初想定していたような成果は得られていないとのことでした。この方式を取り入れて既に1年が経過しているそうですが、多くの社員がファシリテーターを経験したものの、会議で積極的に発言する人は相変わらず少数であり、業務の進行にもプラスの影響は出ていないとのことでした。

そこでこの度、私もオブザーバーという立場で会議に参加させていただきました。その日のテーマは、「A業務について効率的な仕事をするためには、どうすればよいか」というものでした。

当日、私は会議の開始前に会社を訪問し、社員が会議の準備をする段階から立ち会わせていただくことにしたのです。準備段階では複数の社員が机の配置を整えたり、プロジェクターの準備を行ったりするなど手際よく進めていましたので、会議をやりなれていることがわかりました。また、準備は社員が協力し合い、活発にコミュニケーションを取りながら行っていましたので、社内の活発な雰囲気も感じていました。

その後会議がスタートし、ファシリテーターの進行のもとテーマに関する発表をある社員が始めました。発表を聴くと、事前にそのテーマに関して入念に準備をしていることが分かるようなしっかりした内容でしたので、私は聴き入っていました。

ところが、そのときです。開始わずか3分後くらいに「まどろっこしい説明だ!聴いていられない。続きは私が説明する」という大きな声が発せられました。

声の主はM社長でした。その後、社長はいきなり大きな声で話を始めましたが、それはもう社長の独壇場で話は延々と続きました。その間、ファシリテーター、発表者、その他の社員は一様に「またか」という表情になっていました。「うちの社員は会議中、おとなしいので困る」とM社長が言っていた原因は、まさにここにあったのです。

つまりは、ファシリテーターが場を進行しようとしても、発表者が丁寧に準備し一生懸命に説明しても、社長が聴く耳を持たずに自分で会議を仕切るようなことになってしまうと、ファシリテーターも発表者も聴き手も会議の場にいる意味がなくなってしまいます。そして、社員からすれば、どうせ自分たちがやっても満足できないのだから、初めから終始社長が仕切ればよいでしょうということになっていまい、やる気も失われてしまうということになってしまうのです。

私がファシリテーター研修を担当させていただく際の受講者には中堅社員が多いのですが、実は社長や管理職などの権限を持っている人こそ、ファシリテーターの意味や役割をきちんと学ぶべきだと思うことが少なくないのです。

社長や管理職の方々で、会議や自分との会話で部下があまり話をしないと感じていらっしゃるのであれば、一度自分が部下の話を遮ってしまっていないか、話しにくくしていないか、振り返ってみる必要があるかもしれません。

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第1,030話 営業部、開発部、製造部など部門の連携を図るためには

2021年06月16日 | コンサルティング

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製造業において営業部、開発部、製造部などの部門間の連携が図りにくいというのは、古くて新しい議論です。

弊社は製造業のコンサルティングや研修を担当させていただくことが多く、これまでに様々な企業の関連部署の人から話を聴く機会がありました。話を聴くと、自部署の前工程や後工程への要望や不満もあり、企業全体として最適の視点を持つことは必ずしも簡単な話ではないと感じています。

これまで伺った内容としては、たとえば営業部門から開発部門への不満として「顧客は値段のことを最重要視しているのに、その点をわかっていない。コストを度外視して高機能なものばかりを作っている」といったものがあります。一方、開発部門は営業部門に対し「顧客は高機能なものの方が良いと考えているに決まっているではないか。営業が顧客に製品の良さを伝えられないところに問題がある」といような不満を持っていることが多いように感じています。

こうした話は営業部門と開発部門の間だけでなく、場合によっては製造部門と営業部門の間でもあるようです。製造部門から営業部門へ対しては、「営業はコストのことを考えずに、受注を獲得することばかり考えている。売上が上がっても、利益が出なければ意味がないではないか」と感じているのです。一方で、営業部門は「売れるから受注しているのに、製造部門は自部署の視点だけで考えて会社の売上アップのことを考えていないじゃないか」といった不満を持っている例もあるようです。

では、このような部署間の溝を埋めるためにはどうすればよいのでしょうか?

日頃から、お互いが置かれている立場や自部署としての問題点などの情報を共有する機会が定期的に設けられるとよいはずです。しかしそのためには「音頭」をとる人が必要ですし、なかなかお互いの時間が合わなかったり、ましてや今のようにテレワークが導入されていたりとすると顔を合わせる機会自体がめっきり減ってしまっています。製造部門は出社していても開発や営業はテレワークという企業も多く、部署間が連携することは思っているよりも簡単ではないようです。

しかし、部署間どころか、異なる会社同士が連携して成功している事例があることを皆さんはご存知でしょうか?それは、大田区の町工場が連携する「仲間まわし」です。

大田区には町工場が、2016年現在4,229企業(ピーク時の1983年には9,190)あるそうです。しかし、高齢化などによる廃業で多くの職人が引退し、技術力が低下してしまった企業も多く、自社のみでは顧客の要望になかなか応えられなくなってしまった企業が少なくないそうです。そこで、自社でできないことを他社に回して行ってもらう「仲間回し」の仕組みができあがったということです。

たとえば、自社では「切削」作業しかできなくても、「穴あけの技術」や「研磨の技術」など自社ではできない技術を持っている近隣の工場にその工程を回すことで、顧客から発注された製品を納品できるネットワークを構築しているのです。

このネットワークが完成した背景には、顧客の要望をまとめる企業(仮にA社)があり、そのA社が顧客へ直接営業活動をし、ネットワークによって製品を完成させるという仕組みを作ったのです。そして、このネットワークを維持継続させるために企業間のコミュニケーションを図る工夫をしたり、受注に関しては契約書を作成したり、支払いのルールを徹底するなどの仕組みを作ったとのことです。やはり「音頭取り」が肝になっているようです。

このように、企業を超えて連携し「仲間まわし」を行うことができるのですから、自社内において営業部、開発部、製造部などの部門の連携が図れないことはないはずです。

ぜひ、大田区の仲間まわしを維持継続しているA社のような音頭取り(幹事)を自社内に設けて、連携が図れる仕組みの構築に向けて積極的に取り組んでいただきたいと考えています。

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第1,016話 部下が思い通りに動かないと悩んでいる上司へ

2021年04月21日 | コンサルティング

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「社員に会社の理念やビジョンがなかなか浸透しない」、「部下に部や課の方針を何度説明しても、行動に結びつかない」、「指示をしてもイメージした通りに動いてくれない」

これは経営者や管理職の方々とお打ち合わせをする際に、「定期的」と言っていいほどにお聞きする言葉です。とはいえ、これらは私が人材育成の仕事に就いた30年ほど前から継続して聞いていますので、上司から部下に対しての普遍的な悩みの一つだと感じています。

このような話を聞くたびに思い出すのは、「大阪城の火事」の話です。出典はわかりませんが、例えとしてよく使われる話で、皆さんはお聞きになったことはありますでしょうか?

戦国時代の武将、豊臣秀吉が冬の強風の夜に家老を集めて「今夜は風が強いから火事に気を付けるように」と指示をしたそうです。それを聞いた家老は自ら行動することなく、そっくりそのまま奉行に対して同様の指示をしたのです。そうしたところ奉行もまた自身では何もせずに、足軽に同様の指示をだしたのです。結局、誰も具体的に動くことがないまま、その夜に大きな火事が起きてしまったという逸話です。

この逸話からは様々な教訓が得られそうですが、大きく分けて3つのことが考えられます。 

1つ目は、それぞれの役割を明確にする必要性です。この例で言えば、秀吉からはじめに指示を受けた家老が奉行へ指示を出す際に、ただ「火事に気を付けろ」で済ますのではなく、「見張りの人数を増やせ」、「今夜は自宅には帰るな。城につめていろ」、「水をたくさん用意しておけ」、「見回りの回数を増やせ」などの具体的な指示をすれば火事を防げたかもしれません。足軽に対する奉行にしても同じことです。

2つ目としては、誰もが主体的な動きをしなかったということです。家老も奉行も上司の言葉をそっくりそのまま部下へ伝言をしているだけだったのです。自分では何もせず伝書鳩のように伝えるだけでは、所詮は他人事の対応にすぎないとも言えます。誰もが他責(他人の責任)や受け身の姿勢でなく、能動的・主体的に動けば火事は防げたかもしれません。

3つ目としては報告・連絡・相談が徹底できていなかったということです。各々の立場で指示した後に、上司に対してきちんと報告をする体制ができていれば、(この場合は指示が足りないので)上司が再確認をして火事は防げたかもしれないのです。

経営者や上司の皆さん、冒頭の例のように「社員や部下が思うように動かない」などと考えられているようであれば、何らかの動かない原因があるはずですので、それを探る必要があります。まずは「大阪城の火事」の教訓を参考に、ぜひ一度自分の「指示」をチェックしてみてください。

指示は具体的にしているか、自分や部下が主体的に動くようにしているか、事後の報連相を徹底させているかなどの観点から問題がないかをチェックすることです。そして必要であれば自分の指示の仕方や表現の仕方を変更するなど、積極的に取り組んでみていただきたいと思います。(冒頭の写真はWikipediaより)

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第1,014話 新入社員の素顔を知るためには

2021年04月14日 | コンサルティング

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多くの企業では新入社員(以下新人)の研修を終え、今週からそれぞれの職場へ配属しているタイミングだと思います。毎年、新人の配属後数週間~数か月が経過すると、OJTを担う先輩社員や上司から様々な声が聞こえてくるようになります。

たとえば「新人に仕事を教え始めたが、指示したことが伝わらない。その結果、とんでもないことになった」、また、「2人の新人が配属されたが、1人は優秀だと感じるが、もう1人は全く話が通じない」などです。いわゆる「打てば響く」人がいる一方で大器晩成型の人もいます。短期間でレッテルを貼ってしまうようなことはしないでいただきたいと思うのですが、このような話を聞くと現場で苦労されている様子が伝わってきます。

また、コロナ禍の今、新人が配属されてもすぐにテレワークとなってしまい、仕事の指示もオンラインで行うことも多いです。そのため一人一人がどういうタイプなのかを見極めるのも難しいことでしょう。

これに関して、先日以前コンサルティングを担当させていただいていた企業のA社長から、参考になる素敵な話を伺いました。

A社長の会社は社員数が200名強の規模ですが、社員数は毎年少しずつ増えていて5年前からは定期的に新人を採用しています。新人教育はOJTが中心なのですが、特筆すべきはA社長自ら新人を対象に1週間に1回、勉強会を実施しているとのことです。そしてその時間は、仕事上のスキルや知識を伝えるのではなく、ともに論語(孔子)や韓非子、荘子、老子などの書物を読み解くことにあてていて、少しずつ読み進めていらっしゃるのだそうです。

そうした時間を新人と共にすると、仕事ではすぐには表れない一人一人の素顔が見えてくるのだそうです。たとえば、1人ずつ順番で音読したときに、読めない字に行き当たることがあります。そうすると、読み方を質問する人がいたり、一生懸命考えたりする人がいる一方で、読めないことをごまかしたり、適当にすっ飛ばして読んだりする人もいるのだそうです。

そういう時間を毎週重ねていると、各々がどういう人なのか、何を大切にしているのかなどの本質的なところが見えてくるとのお話でした。

これを聞いて感じたのが、仕事を教える側からすると、目の前の仕事をミスなく効率よく進めることのみに重きをおいて新人を評価しがちです。しかしそれだけで判断するのはやはり早急だということです。

今後社員として一緒に仕事をしていく上では、仕事を少し離れた一人一人の人間としての本質的な部分を知ることはとても大切です。それを知るためにはこの会社のように仕事にはすぐに直接つながらなくても、このような時間を共有することが大切だということです。

昨年の春に入社した新人からは、入社直後に緊急事態宣言が発令されて即テレワークになってしまい、この1年間で出社した日数は一月にも満たないという話を少なからず聞くことがあります。また、現在もコロナ禍が続いていることから、会社によっては今年も同じような状況になるケースが少なくないと思いますが、オンラインでのやりとりのみでは、仕事上の要件のみに終始してしまいがちです。

ぜひ、経営者や上司、先輩社員の皆さんには新人の人となりを理解するためにも、先に紹介したA社長のような仕事から少し離れてやり取りを行う機会を設けるように心がけていただきたいと思います。

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