「幸せは私を退屈にさせることはない」、120年前に生まれた詩人のモンテルランの一節。
ラウラにとっては、ぴったりの言葉に違いない。幼稚園の園長先生に保護され、源太郎が一目惚れして我が家の一員になった彼女。やりたい放題だし、さみしがり屋だし、いたずらも天下一品だが、寝ているラウラを見るとこんな言葉がぴったりに思う。もう少しダイエットすべきだろうが、まぁ本人が気にしていないからそれでよしとしよう。
久しぶりにMILVAのTANGOの1968年録音の音源を聴いている。「Quest tango(La Cumparsita)」から始まる。とてもゆっくりな歌い出し、「Guardando intorno a te」、「Il cantastorie col bandoneon」、、、と続く38分ほどの音源だから2トラ38のテープの限界の長さで録音されていた。テープ箱の裏の曲名も下手なアルファベットで綴られている。今見るとこれじゃ字じゃないと言いたくなる。
このテープは、歳の離れた兄の7インチテープ録音盤を10年くらい後に借りてダビングしたものだと記憶しているが、今聴くと歪みもなくちょうどいい感じだ。高速に回るリールが時間を忘れさせてくれる。この時代から源太郎はMILVAやMINA、IVAなどの歌手の曲を聴くようになった。
小学校高学年か中学生だっただろうか、親父から譲り受けたカメラやラヂオをいじりまくり、三球スーパーラヂオを組み立ててよくラヂオを聴いた。憧れの同調を示すマジックアイ真空管が欲しかったが、それを組み入れる知恵もなく、ノイズが多いラヂオから流れてくる洋楽を聴いた。
ハンダコテを巧みに使えるようになって、大抵のことは修理することができ、たまにショートさせたり、感電したこともある。
テープを一本聴き終え、和室の本だらけ部屋に戻り、このブログの記事を書いていると、いつのまにか椅子の下にちょこっと座っているラウラがいる。
「何しているの。寝ていたんじゃないの」と聴いても「無言」
「おやつが欲しいの」と聴いても反応しない。
「あっ、そうか。いつも一緒に寝ているジェリーが犬舎に入ってしまったから寂しいのか」
「無言」
「仕方ない、ここにいなよ。でも遊ばないよ」
ラウラは、足元に流れる温風を正面に受けて座っているので、抱きかかえてタイプ打ちとなった。