Credo, quia absurdum.

旧「Mani_Mani」。ちょっと改名気分でしたので。主に映画、音楽、本について。ときどき日記。

ベネット・ミラー「カポーティ」

2006-10-05 19:22:57 | cinema
「カポーティ」オフィシャルサイト

監督:ベネット・ミラー
原作:ジェラルド・クラーク
脚本:ダン・ファターマン
音楽:マイケル・ダナ  
出演:フィリップ・シーモア・ホフマン 、キャサリン・キーナー 、クリフトン・コリンズ・Jr


なんだろうこの居心地悪い感じは???????
??????????????????????
??????????????????????
と考えながら見ていたんだけれど、
ああ、そうか、
これはなんというか「物まねショー」なんだな、
これからカポーティの真似をします。どうぞ御覧下さい~~

というわけで、全編比較的平穏で、抑制が効いている、
そのタッチは好きだけれども・・・
肝心の

・なぜカポーティはこの事件に興味をもったのか?
・この事件と犯人の有り様に肉薄しようという情熱がどのように高まってきたのか
・取材した内容をどんな苦労で作品に仕立て上げたのか?

という、「当然の」興味にはほとんど答えていないような気がする。

だから予告編でも使われた、「彼は裏口から、自分は表玄関から出た」
とかいう心情吐露もなんだかいかにもセリフを喋っているだけに見えたし、
「結末が見えない~」と苦しむ姿も妙に唐突で。
カポーティ自身が小説のために犯人との友情を結果的に翻弄した、その「冷血」だってあまり伝わってこなかった。

要するに内面が描けていないわけ。
そのくせ外面は非常に努力して表現方法を獲得した形跡が見えるわけ。
だからこれは構造的に「物まねショー!」なわけで。

そりゃあ実際のカポーティの物腰や喋り方なんてしらなかったから
似てるかどうかさえわからないけどさ。
(客入れのときに実際のカポーティのテキストリーディングを流していたけどね)


くやしいからカポーティの小説を読むことに決定。
帰りに「冷血」新訳版を購入する。

**

わたしの親父はまあ文学かぶれなので、子供の頃私に、
「冷血」というすごい小説がある。
実話をもとにした小説だ。
今日TVで「冷血」をやるから観るぞ。
といって、そのおどろおどろしいタイトルとともに幼い心を脅かしたのを
よくおぼえている。

めぐりめぐってその小説をこの日購入することになろうとは
いまのいままで思ってもいなかったよ(笑)

音楽はいいですね。
抑制ききまくり。

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チョン・ジェウン「子猫をお願い」

2006-10-05 18:55:35 | cinema
子猫をお願い



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2001韓国
監督・脚本:チョン・ジェウン
出演:ペ・ドゥナ、イ・ヨウォン、オク・ジヨン
   イ・ウンシル、イ・ウンジュ

青春群像劇。
と、ひとことで言ってしまうと身もふたもないですが。
あの、なつかしい、未来はあるけれどもなぜか方向が定まらない、
期待と不安に満ちたお年頃の明るくも冷たくもある日常。

高校の同級生だった5人。
対等でオープンだった5人も、卒業してそれぞれの道を歩み出し、
それぞれの人生の濃淡を味わうようになる。
時々はみんなんであつまって騒いだりするけれども、
それぞれで違う濃淡はいつしかすれ違いと物憂い気分をはらんでいる。

その空気をしっとりと映し出して映画はあやうくはかない一線上にそっと成立している。
奇跡のように。


ペ・ドゥナいいなあ~~


ジヨンが作品の核になるのかもしれない。
テキスタイルの勉強をしたいと思ってはいるが、家は貧しく、両親を亡くし、仕事もない。
天井が日増しに歪んで落ち窪んでくるような家に祖父母と住んでいるジヨン。
そんな彼女が、路地の隅でひそかに子猫にえさを与えている、
その切ない心持ちがよく伝わってくる。
どこかぱっとしないキャラもここではかえってリアルに生きている。
(まあ、貧乏なわりにはいい服着てケータイ持ってるのが不思議なんだが)

そのジヨンが、子猫を、仲間うちの出世頭的な存在のヘジュに託そうとするのもなんとも切ないし、その心の内をあまり明示しない映画のつくりも良い。
で、ヘジュは子猫を突き返すわけだけど、このぶっきらぼうに過ぎてしまうシーンにこの二人の関係がきゅっと濃縮されている。ふとここで脳裏に冒頭の5人の学生時代の映像が、オーバーラップする。肩を並べてあるいていたこの二人はきっと親友だったのだ。ちょっと目頭が軽く熱くなる。でもちょっとだけ。この軽さの度合いもまたよし。


ジヨンにそっとよりそうのはぺ・ドゥナ演じるテヒだ。
彼女も家庭にぼんやりとした不満を抱きながらもそれは表に出さずに
5人のなかで連絡役をなんとなくやっている。
5人の微妙なズレに気づいて心をくだくのは彼女だ。

ジヨンの家に突然起こった不幸。
ジヨンは参考人として取り調べを受けるが、黙秘を通したため、鑑別所?送りになるわけだけど、今度は子猫をテヒに託す。
面会に来たテヒに、「ここをでても行くところがない」というジオン。このひとことはジヨンにとどまらず5人の(というかまあテヒとヘジュの)それぞれの状況をいいあらわしているんだろう。
テヒはこのあと、こっそり荷造りをして、家族写真から自分の部分だけを切り取って、家を出る。

テヒの言葉が胸に残る。

「両親がいやで家を出るのは10代のすること。わたしは別のなにかのために家をでる。」

別のなにかが見つかったのだろうか。
たぶん見つかっているわけではないのだ。
それに出会うかもしれない旅に出るのだろう。行き場のないジヨンとともに。
もちろんなににも出会わないかもしれない。
でも人生は続いていく。

**

一見フォトジェニックでない風景を大事に見せる画面作りに感心する。
ジヨンの家の立地が、後半になってテヒが家を訪ねるシーンではじめて
入り組んだスラムのようなところだというのがわかる。
そんな工夫が自然に施されていて好感。

季節が冬というのもテーマのおぼろげな雰囲気によくマッチしていると思う。
開放的でなく、いつもコートに身を包まれている。
ラストに旅立つ二人のシーンは夏になっているのも効果的。

5人のうちの双子は、存在はおもしろいけれど、本筋にはあまりからまないのでご愛嬌的。でもそのせいで、最終的に子猫を預かる役回りとなるわけで、これ計算していたとすればすごい!
かつ憎めないのは、この双子、ペ・ドゥナとともにTVシリーズの「威風堂々な彼女」にもしっかり顔を出すからなのよ。

ペ・ドゥナ 身長171cm。モデル出身。
でほかの女優さんたちもほぼ同じ身長。
あの5人の中に囲まれたら自分は外が見えないでしょう^^;

テヒのお母さん役はペ・ドゥナの本当のお母さんだそうです。


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今日は沈没

2006-10-05 13:01:30 | diary
力つきて仕事を休む。
そんなに働いてないのに。
気分が落ち、気力が萎える。
一週間まともに続いたことがないんではないだろうか??
ふがいないあいあい♪(by YUKI)

まあ休んじゃったものは仕方ないので、
よおし映画でも観にいくべえと、これからでかけるところです。
なにごとも明るく前向きに考えることに。
今日は「カポーティ」にしようかと。
なんかはずしそうな予感もするんですが・・・



いま読んでるのはメルヴィルの「白鯨」
予想よりかなり面白く。

主人公のイシュメールが意気揚々と捕鯨船に乗り組もうと旅立ったのはいいけど、
最初の宿の主人の名前が「棺桶」
で立ち寄った教会には捕鯨で消息を絶った人の記念碑がびっしり。
でもって次の宿にいったら絞首台そっくりのマストが入り口に立ってるとか。

のりが妙に軽妙でして。

「しらふの人食い人種と一緒に寝る方が、酔ったキリスト教徒と寝るよりまし」

とか名言も頻発。

ドストエフスキーにしろウェルズにしろ
私的に19世紀文学ってけっこうツボなのかも。


おっと、でかけなければ

↓新訳なのです。おすすめ。
白鯨―モービィ・ディック〈上〉

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