1900年 Blu-ray (2枚組) | |
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紀伊國屋書店 |
1900年 (2枚組) [DVD] | |
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1900年に生まれた二人の人物を中心にイタリアの豪農を舞台に激動の時代を描く。
片や地主の子供アルフレード、片や使用人の子供オルモ。二人は立場の違いを乗り越え親友となるが、長じて立場の違いが時代のイデオロギーの影を二人の間に落とす。
ベルトルッチらしく冒頭から時制が飛ぶが、本作ではそのおかげでどこか安心して全編を観ることができるようになっている。
絶対的とも言える前近代的な地主と使用人の関係で運営されてきた農家は、封建的な中で領分を守っている限りは平穏な緩い日々を送ることが出来、地主と使用人の間にもはかとない友情と気のおけなさがあることが、前半の、主人公の祖父(バート・ランカスター)の時代で示される。
変化が訪れるのは祖父が死に、息子の代になった頃から。運営は実利的で冷淡なものになり、天候不順による不作のしわ寄せを使用人に押し付けるなどの事件で、農家内の関係はギクシャクしたものになる。
同時にヨーロッパを席巻する共産主義の影響は農村にも及び、当然ながら使用人たちはその考え方に傾く。その先鋒に立つのが主人公の一人である使用人の子オルモである。
一方で、地主の子であるアルフレードは、そんな家の雰囲気を嫌い、コスモポリタン的に放浪している叔父ジョバンニを訪ねてパリに行き、都会の生活を楽しみ、妻となる自由な女性アダと出会う。
彼がいない間に農家では使用人の一人アッティラが、監督者の立場を踏み台に使用人を威圧的に管理するようになるとともに、当然な成り行きとして、台頭したファシズムの手兵となり黒シャツを着るようになる。
アッティラ一派の暴虐がエスカレートする一方、彼らの雇い主であるはずの
アルフレードはそれを止めることが出来ない。
地主階級は、ある面では共産主義を抑え込むファシストを利用し、ある面ではファシズムの台頭に戸惑い恐れをなし、あるいは現実を直視せず享楽に走りもし、次第に力を失っていく。
その姿をこの映画はよく描いている。
農家での出来事はそのままイタリア社会の縮図なのである。
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というようなことは言わずもがななのだが、ワタシはその時代の人々の心に寄り添いつつも、ロバート・デ・ニーロのしなやかなヤサオトコぶり、ジェラール・ドパルデューの純朴な佇まい、バート・ランカスターの古めかしい不器用さ、そして何よりドミニク・サンダの計算され尽くして恥ずかしいくらいな登場シーンと、狂気が顔かたちを持って現れたようなドナルド・サザーランドの奇矯な振る舞い、そうしたキャラ立ちまくりの群像に心震わせて一喜一憂して立ち会ってしまう。これぞ映画だあぁあぁあっ!!と身悶えして5時間を超える時間を一気観しちゃうのだった。
公開時10代だったワタシの家族は、総出でこの長編を観に行った。それ以来ずっと観る機会はなかったにも関わらず、主だったシーンは心に残り(特にドミニクが登場時に髪をかきあげる瞬間と、ドナルドが子供をぶん回すとこと、ジェラールが豚をしめるとこね)また、エンニオ・モリコーネによる雄壮なテーマ曲のメロディは耳の奥でなり続けていた。
待望のDVD/BD化でありました。
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モリコーネの音楽は最初観た時はブラームスぽいと思ったのだが、今聴くとそうでもない。耳が肥えたんだな。
@自宅BD