![デイヴィス(コリン),スウィート(シャロン),ラッペ(ヤドヴィガ),フライ(ポール),グルントヘーバー(フランツ),ドレスデン国立歌劇場合唱団](http://ecx.images-amazon.com/images/I/4106CPC837L._SL160_.jpg) | ベートーヴェン:交響曲第9番 |
デイヴィス(コリン),スウィート(シャロン),ラッペ(ヤドヴィガ),フライ(ポール),グルントヘーバー(フランツ),ドレスデン国立歌劇場合唱団 |
ユニバーサル ミュージック クラシック |
ベートーヴェン交響曲第9番 コリン・デイヴィス+シュターツカペレ・ドレスデン
こりん星の王。
(しーん)
サー・コリン・デイヴィスの演奏はあまり聴いたことがないのだが、アムステルダム・コンセルトヘボウと演ったストラヴィンスキー「春の祭典」は結構好きだった。
ハルサイはワタシは若き頃はエアチェックしたカセットテープでずっと聴いていたのだが(どこのだれの演奏かわからない)、あるとき何気なくデイヴィス盤を買ってみた(LPレコードですね)。
するとテープ盤?とはまるで違う、野蛮でむき出しで大胆なハルサイが鳴り響いてあわてた。テープ盤のあれはなんだったのか?wオレは今まで何を聴いてきたんだ??
なわけで、アムステルダム・コンセルトヘボウとデイヴィス株はワタシ的には結構高い。
(コンセルトヘボウのほうはすでにリムスキー=コルサコフ「シェヘラザード」コンドラシンにて不動の評価を得ていたわけですが)
まあ、あらためて今そのハルサイを聴きなおしてみると、それほど野蛮でも大胆でもないように思えるのだが、そういう刻印を我が青春に残した指揮者なわけですね。
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で、その指揮者と由緒正しきシュターツカペレ・ドレスデンによる第9。93年の録音。
第1楽章冒頭がスタートしたところで感じるのはまず、録音どうなの?という話で(笑)
なんかこう霞のかかったようなざらついた埃っぽい音は弦楽器に特に感じるのだけれど。これは高域と低域が弱いというか明瞭じゃないからかなあ?
まあ大した機械で聴いてるわけではないんでそのあたりはわかりませんが。
(どうも80年代90年代のデジタル録音にはときおりいまひとつな録音がある気がします。70年代のアナログの方がずっと豊かな感じ。)
そのせいか、というか、にもかかわらずというか、逆に中域はこもっている割にはよく聴こえるんですよねーw。
セカンドバイオリン、ビオラ、ホルン、ファゴットあたりが。普段日の目を見ない(笑)そのあたりに急に光が当たるので、いい具合に虫干しできてるっていう清潔感を感じることが出来ます(笑)
マイキングによるのか、録音場所となった教会の特質なのか、ミキシングのくせなのか、そういうコンセプトなのか。
たまたまワタシはちょうどこれからセカンドバイオリンを弾くので、これはいい教材だ。なにしろ第1楽章冒頭から「ざかざかざかざかざかざか」とセカンドの6連符がはっきり聴こえる録音もそう多くはないだろう。よく勉強しよう。
肝心の演奏のほうはというと・・・これはやはり「中庸」とか「オーソドックス」とかいう言葉がやっぱり出てしまうな。テンポにしてもデュナーミクにしても、どこも程よくやりすぎず足りなすぎずという線をよく保っている。
何を持って中庸かというとまたわからないのだが、ワタシがちょうど70年代によくクラシックを聴いた世代なので、まあだいたいフルトヴェングラーあたりから近年のラトル、インマゼールなどを見渡しての中庸感なのだろう。70年代くらいになんとなく形作られた習慣というか作法の継承がこのデイヴィス盤なのかもしれない。
この中庸感をどうとらえるかで評価が分かれるだろう。目新しい解釈や原典回帰の身振りもない、ことさら激情に走ることもないということで、面白みのない演奏と思われることもあるだろう。
ワタシ的には割と好きですねー。自分が若くなくなってきたこともあると思うけど、中庸をキープすることもちゃんとした技が必要なわけで、そういう技をつぎ込んできっちり組み立てられた骨組みに情念が包み込まれている。
長く聴くなら実はこういう手堅い演奏なのかもなと思う。
第3楽章は特にテンポなどが難しいと思うのだが、デイヴィス盤はなんというかそつなく無難にこなしている。(全然褒めている気がしない(笑))
ワタシはこの楽章は4番ホルンがどう処理されているかに耳がいくのだが、最近多いテンポ早めの演奏だとだいたいこのホルンがさらっと流れちゃうか最悪ころころ転がってしまう。デイヴィス盤はテンポ的にはぎりぎり速すぎないというところか。見せ場ではもうちょっと思い入れたっぷりにタメを聴かせてもいいかもしれない。
ただひとつ「中庸」をはずれてしまっている例外箇所はw、第4楽章のバリトンソロではないかな?この歌い方はなんというか下品と言うかw「べらんめい」調ではないか?下のほうから思い切り巻き舌で「ふrrrrろぉいでっ!」てきたあとに群集が「ふろいでっ!!」てくると、ほとんど海賊団の親分と手下たちって感じだ(笑)
これも好みが別れそうだ。ワタシは上品なレディスアンドジェントルメンな合唱よりも多少荒々しいヨーロッパ的群集味のするほうが好みなので、海賊団で問題ない、というか、面白いんだけども!
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3楽章といえば、おなじくサーの称号をもつジェイムズ・ポール・マッカートニーの「Treat Her Gentry/Lonely Old People」で4拍子と3拍子を交錯させるワザは、この第9から着想を得たのではないか?と勝手に踏んでいる。彼にインタビューする機会があったらぜひ訊いてみたい。(その機会っていつだよ?w)