Credo, quia absurdum.

旧「Mani_Mani」。ちょっと改名気分でしたので。主に映画、音楽、本について。ときどき日記。

M・ナイト・シャマラン「レディ・イン・ザ・ウォーター」

2006-10-08 06:41:46 | cinema
レディ・イン・ザ・ウォーター公式サイト

2006アメリカ
監督・製作・脚本:M・ナイト・シャマラン
製作:サム・マーサー
出演:ポール・ジアマッティ(クリーブランド・ヒープ)
   ブライス・ダラス・ハワード(ストーリー)


某ブログを読んでいたら、それはもう糞味噌にけなされていたこの映画。
そんな糞味噌ならどんなもんかすごく興味が湧いてきて、見に行ってしまった。

もともとブライス・ダラス・ハワードが水の精をやるっていうんで
それが見たかったし。

で観たんだけど、そうねえ、そんなに糞味噌でもなかったと思うんだけどどうかなあ。

***

わたし、ファンタジーの力っていうものをどこか本気で信じているようなところがあって、不合理な原理にもとづいて何事かを懸命にやり遂げる、ということにはなにか人を救うような力があるような気がしちゃうのです。

たとえばだけど、タルコフスキーの「ノスタルジア」のラストとか。ドメニコの狂信的な思い(=ロウソクを持って水の上をわたること=世界の救済)をアンドレイは自ら背負ってそれをなんとか成し遂げるわけで、その思いを通じて精神性の回復とかいうタルコ的テーマにわれわれはつながっていくわけで。

神秘主義的と言われればその通りなんだけど、そういう不合理に身を委ねて意志を貫くことにファンタジーの力があるんだと思うのだ。

で、この糞味噌な映画も、そういう、不合理なものに全てを託してやり遂げる、という物語であると言う点で、私的には捨て去りがたい映画だったのです。


その意味ではマンションの住民中で水の精を助ける、っていう設定は不要だったのかもしれません。
辛い過去を背負ったどもりの管理人、彼ひとりだけで事を成し遂げた方が、わたしの好みからするともっとよかったでしょう。
それだけで、精神の救済、というテーマは十分描けるのですから。

まあ好意的にみれば、みんながみんな、水の精、という奇想天外な事実を信じて協力するということに、シャマランさんはなにか意味を見いだしているのかもしれません。
厳しい、というかいっそう厳しくなっていく現実の中でそうした設定の映画を撮ること。ファンタジーによる救済も個人の枠内でおさめるべきでないと考えているのかもしれません。

とうとうことを成し遂げる、という瞬間の映像が、水に映った影というのも
私的には好みでした。
ほんとうにあったことなのかどうなのか?
幻影を観ていただけなのではないでしょうか?
という感覚・・・・


ブルーにこんがらがって

で結論:端的に並べてしまうと、
「人生は変わるんだ」
「精神は救われるんだ」
「死んでも思想の種は残るんだ」
「世界は変わるんだ」
というファンタジーにおいて重要なメッセージはしっかりと持っていたと思います。
もちろんそれがあまりに無邪気すぎる。という批判は十分に正しいのかもしれません。
けれど、まあ、イマジン世代な私なんかには、そうあっさりと否定もできないテーマなのでございます。

**

楽しみとしては、本筋のほかに、たとえばボブ・ディランの曲が何か所かで使われていることでしょうか。これも、途中キング牧師の話なんかが出るのと同じように、多分になにがしかのメッセージが織り込まれてのことだと思ってもいいでしょう。

ついでに、あるシーンで日本の誇るスーパーガレージユニット、チボ・マットの曲もちょっと使われていますよ。(名作です)

**

とはいうものの!
肝心のブライス・ダラス・ハワード。
もうちょっとキレイに撮れないもんでしょうか??
シャマランさん!

もちろん水の精だから、青白くて、陸の上では生気を失っている
というのはよくわかります。
でも衰弱なら衰弱の美というものを写し取ってもらいたかったなあ。

裸?
そう、観たかったけれど、作中で言っているように、
家族向けには死体と裸はご法度なのよ
ということで納得しましょう(笑)

あと、シャマランさん自身が結構メインなキャラで出ている。
種は蒔かれる。思想は生き延びる。というご神託を受ける役。
やっぱりこれは自分の活動に対する思いなのかなあ。

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コメント (14)
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