Credo, quia absurdum.

旧「Mani_Mani」。ちょっと改名気分でしたので。主に映画、音楽、本について。ときどき日記。

ミケランジェロ・アントニオーニ「欲望」

2005-11-30 14:00:16 | cinema
欲望

ワーナー・ホーム・ビデオ

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1966イギリス・イタリア
監督:ミケランジェロ・アントニオーニ
原作:ジュリオ・コルタザール
脚本:ミケランジェロ・アントニオーニ、トニーノ・グエッラ
   エドワード・ボンド
音楽:ハービー・ハンコック
出演:デヴィッド・ヘミングス、ヴァネッサ・レッドグレーヴ、
   サラ・マイルズ、ジェーン・バーキン

二回観た。最近続けて二回観ないとよくわからんということが多い。
「二度観」は理解するにはいいけれど時間がかかってしょうがない・・・

優雅な生活を送るカメラマン、あるとき公園でカップルの写真を撮った写真を現像してみると、偶然、殺人者と死体が小さく写っていた。そして実際に現場に戻ってみると確かに死体が・・・。しかし、その事実を共有しようと友人を訪ねているあいだに、写真も死体も消えてしまう。

と、よくあらすじに書いてある。けれど実際はそんなサスペンスフルな映画ではなかった。様式美と哲学の映画だった。

写真へのうつりこみを発見するシーンは秀逸。公園での写真の被写体となっている女の視線の先をたどり、部分を引き伸ばしてゆくと、殺人者が見える。そしてそれをさらに引き延ばすと、手にした銃が見える。この発見劇を、全く無言で、たんたんと、引き延ばした写真を順に並べてゆくことで表現している。静止画面の連続によるサスペンス。映画的とはいえない手法が効果をあげているとともに、写真に於ける「意味」は連続した文脈や背景のなかで人間が付与するものだという事実への考察にもなっている。

写真はその後消えてしまうが、かろうじて1枚だけが残っていた。それはまさに引き延ばした死体の写真だが、拡大しすぎて抽象画のような画像である。この写真に証拠としての意味はない。一連の写真のなかで初めて意味を持つものなのだ。
このことは、もくろんだものかどうなのか、主人公の友人の画家が冒頭近くに抽象画について語る言葉のなかで既に提示されていたことでもある。

う~んなかなかさりげなく深い。

死体のあった公園に再度もどってみると、死体は消えている。
途方に暮れる主人公の前に、顔面に白塗りをしたスウィンギング・ロンドンなノリの若者の一団があらわれ、ボールもラケットも持たずにパントマイムでテニスを始める。
ボールを打つ真似をするプレイヤー。ありもしないボールを眼で追う観客達。
これは、非現実でも複数の人間の参加によって現実になりうるということの戯画なのだろうか。一方で、証拠となる写真も死体も消えてしまった今、カメラマンのみが知る殺人は、本当に起こったことなのだろうか。

ほかにもこまか~く「哲学」を混ぜ込んでいる。
プロペラを買うシーンとか、貧困層を扱う写真のシーンとか、
ヤードバーズの演奏シーンでさえ、観客が異常に覚めていて意味ありげ。
いや、意味ありげじゃないシーンなんてどこにもないのかもしれないぞ・・

哲学くささがちょっとウザいかもしれないが、私はあれこれ考えて楽しめました。

*

ジェーン・バーキンがクレジットに入っているんだけれど、どこに出てきたか全然わかりませんでした。昔のジェーンの顔をよく知らないからなぁ。

音楽はほとんど使われていない。静かな映画だ。にも関わらずなぜかDVDには「サウンドトラック」という、画像と音楽のみを再生するトラックが付録で付いている。ほとんど環境ビデオだ。(ああそうか、環境ビデオ用なのかこれ・・)

セックスやマリファナパーティーのシーンなど、当時は非常にセンセーショナルだったということだが、今観るとなんてことはない平和なシーンである。

原題は「Blow Up」、引き延ばし、ですね。「欲望」ってのはちょっとよくわからんです。




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↑なにとぞぼちっとオネガイします。
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マーティン・スコセッシ「最後の誘惑」

2005-11-29 12:36:15 | cinema
最後の誘惑

ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン

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1988アメリカ
監督:マーティン・スコセッシ
原作:ニコス・カザンザキス
脚本:ポール・シュレイダー
音楽:ピーター・ガブリエル
出演:ウィレム・デフォー、ハーヴェイ・カイテル、ヴァーナ・ブルーム
   バーバラ・ハーシー、ハリー・ディーン・スタントン、デヴィッド・ボウイ

冒頭字幕で、原作者の言葉が紹介される。イエス・キリストの持つ二面性、神性と人間性の二面性が長年謎だった。その謎を、福音書によらずフィクションとして追求した。と。(原作は「その男ゾルバ」のカザンザキス)

実際観て、かなりまごついた。
よく知られたイエスにまつわるエピソードが随所で使われているのに、その背景や文脈がまったくフィクションなのだ。すべてを福音書の文脈ではなく、目の前の映画での文脈としてとらえ直さなければならない。
ある意味、こんなにわかりにくい映画には出会ったことがないかも知れないと思った。

しかし、焦眉は架刑のあとからだった。そうかそういうことだったのだ。
なにがって、これこそネタバレになってしまうので書かないが・・・

ユダの存在と裏切りが、神の意志の成就のために役割を持ったものとして、かなり前景に描かれている。これはよく知られた裏切りの行為についてもそうだし、架刑後にも重要な役割を果たす。(ユダは架刑の前に死ぬはずだけど・・?)

イエスより後の時代のパウロと、イエスが会話をするシーンも興味深かった。
パウロの奇跡を否定するような内容で驚き。

救世主の懐胎についてもマグダラのマリアとの交わりが、サウロの妹の懐妊に繋がる、なんてところは、非常に衝撃的じゃないかしら。

イエスが十字架の製作者だったりするのもかなり強烈なフィクション。

かなりクリスチャン的にみてセンセーショナルな場面があるなということは全体を通じてよくわかるが、それが、どのくらい衝撃的なのかについては、どうしても心の底からはわからなかった。
やっぱり平均的日本人なんだな~自分。

ウィレム・デフォーがイエス、ハーヴェイ・カルテルがユダ
デヴィッド・ボウイがピラト、ハリー・ディーン・スタントンがパウロ
ジョン・ルーリーも出ているみたい。
音楽はピーターガブリエル
トランペットにジョン・ハッセル、ヴォイスにユッスー・ンドゥールの名も見える。
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ACROSS THE SKY

2005-11-28 16:39:32 | ひこうき雲
地平線から地平線まで
その命は短いけれど
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ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア「星ぼしの荒野から」

2005-11-27 17:54:41 | book
星ぼしの荒野から

早川書房

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読了。
SF作家ジェイムズ・ティプトリー・ジュニアの81年の短編集。
ティプトリーの、というより、二人の作家、ティプトリーとラクーナ・シェルドンによる短編集というべきか。

ティプトリーは本名アリス・ブラッドリー・シェルドンという女性作家で、ティプトリーとラクーナ・シェルドンの二つのペンネームで作品を発表している。
ティプトリー名義の作品は、その名前と硬派な作風からだれもが男性作家と信じ、ときにはフェミニスト団体からの糾弾さえうけるほどだったという。

「星ぼしの荒野から」は、そのティプトリーの「正体」が明らかになったあとの作品集である。
もともと女性名のラクーナ名義の作品はもちろんのこと、ティプトリー名義での作品にも、女性的な視点が感じられるように思えるのは私だけか?

以下、ラクーナ名義の作品には*

天国の門
コメディタッチのエイリアン遭遇譚で、内容はけっこうブラック。ある夜地球に降り立ったエイリアン、出会った少年に「善人」を紹介してくれるよう頼む。以降いもづる式に「善人」を集めたエイリアンは、「どこでもドア」をつかって大自然のあるユートピア惑星に案内する。その星にすっかり魅せられ、移住すら考える善人たち。しかし、エイリアンの企図するところは・・・
まあ要するに侵略なんだけれど、その方法は極めて紳士的といえるかも。

ビーバーの涙
ビーバーの修正を利用して環境を変える方法にヒントを得た作品。アイディア一本勝負!だけれど、実はこれまたなんともシニカルなお笑いなんじゃないかと思う。ラストの2行で苦笑う。

おお、わが姉妹よ、光満つるその顔よ!
フェミニズムのユートピア/ディストピアを交互に描く。ユートピアが現代文明の廃墟の中、徒歩や馬車による移動という前近代的な文化として描かれているのが興味深い。と同時にディストピアはまさに現代のアメリカの文化として描かれる。ティプトリーが何に希望を持ち、何に絶望したのかを考えさせる。「この広い地球に恐怖はなくなった」という恐怖とは、けっこう単純に「男がいなくなった」と読むといいのかもしれない。

ラセンウジバエ解決法
これも強烈なフェミニズム・ディストピア。女性を殺害する事件が相次ぎ、女性を迫害する教団すらできる。その現象は局所的なものから次第に広範囲に広がりはじめる。原因はなにか?
主人公の妻の言葉は書簡という形式でのみ語られるなど、構成的にも面白い。主人公の男性の登場「北緯2度、西経75度にすわった青年は・・」というおかしな書き出しが、後に大きな意味を持ってくるというような細かな仕掛けも効いている。
しかし「駆除」を人間レベルに持ってくるとかなり凄惨な状況になるんだなあ・・・

時分割の天使
ここからはティプトリー名義。
ここまでは「男ですいません」的な気分で読んだが、ここからは「人間ですみません」的気分で読める(笑)木を切り森を壊し集合住宅を建てる。人間ってろくなことしない。このままでいくと人間は破壊の限りをつくし、のっぴきならないところまで突き進んでしまうのではないか?という、ひとりの少女の心の叫びを、天使が聞き入れた結果は・・・
歯の詰め物がラジオの役割を果たすというネタは、実際にあることらしい。経験はないけど、よく心霊現象の種明かしに出てくる話だ。
時分割っていう概念は汎用コンピュータやってた人にはなじみの概念。しかしそれを人類に適用した結果というのは・・・いまの日本社会ではなんだか笑い事では済まない・・・

われら<夢>を盗みし者
テラ族に隷属し、抑圧されているジョイラニ族。幾世代にもわたる周到な準備を重ね、宇宙船を盗み、必ずやあるジョイラニ族の帝国へと気の遠くなるような旅に出る。たどり着いたところは・・・
抑圧された民族による自爆テロ的な行為も描かれており、単純にフィクションとして手放しでは楽しめない。テラ族=残忍な抑圧者、ジョイラニ=不当に搾取される種族、という図式で行けば、テロ行為も心情的に正当化されてしまうが、ラストで、この図式自体が一気に瓦解する。かろうじて支配-被支配の相対性を訴える作品となっていて、セーフ!

スローミュージック
一転して風光明媚な情景描写にあふれる。どういう事情か最後まで明らかにならないが、多くの人類が「河」に旅立ってしまって、ほとんど人間のいない地上で出会う男女。互いに惹かれながらも心の向きをくるくると変えながら、「河」への旅に出る。動物や植物など、身の回りの知恵で生きようとする女。途中で出会う老いた旅人の語る詩。その死。衝動的でぎこちない二人の交わり。そして「河」の不思議で大きな力を前にして唐突に物語は終わる。

汚れなき戯れ
こ・これはソラリスだ!ソラリスに遭遇した飛行士の回想録に違いない。レムの傑作から20年。ここにも幻惑された人がいた・・・・

星ぼしの荒野から
流麗なサクセスストーリー+SF。無定型な存在の物語と、リアルな人間社会の寓話が合体しているところが面白い。エンギと斥候が会話する時に「しるし」を送る
と表現されているところは、イーガンのディアスポラでのポリス住民の会話と似ていて意外なつながり。
あと近親相姦を結構重要なサイドストーリーに持ってきているところが不思議。わざわざ伏線まで張っているからな。どういうことなんだろう。
あと、種明かしをクライマックスに持ってくることはせず、体験から学んだことをラストの思考に持ってくるあたりが、かっこいい。

たおやかな狂える手に
地球での殺伐とした人生から抜け出し、星々への強いあこがれにみちびかれ、恐ろしい手段で宇宙船を奪い外宇宙へ向かう女性。不思議な惑星にたどり着きエイリアンと出会う。地球の生活の無慈悲さも、宇宙船奪取のサスペンスも、エイリアンとのせつないコンタクトも緻密に描かれ、ティプトリーが何に絶望し、何に深くあこがれていたかがわかる思いがした。

全体として、ティプトリーの絶望とあこがれを見るような、思念のこもった短編集だと思う。
それから、フェミニズム小説としてどう読むことができるか、という観点でもアプローチできそうな作品群でした。

ああ長かった。

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韓流旋風吹く!

2005-11-27 09:54:49 | diary
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オオカミの誘惑 コレクターズBOX(初回限定生産)

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イルパーセントエ・オトン・ゴッ / 1%のあるもの (韓国盤)
Various Artists
Dream Ark Inc.

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妻がはまりにはまって強力席巻中の韓流ドラマ。
一晩で10話くらいは平気で見てしまう。
カン・ドンウォンが特にお気に入りのようです。
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山下毅雄さん死去

2005-11-26 04:11:27 | diary
asahi.com: 「ルパン三世」などの主題歌作曲、山下毅雄さん死去 - おくやみ

やっぱり私にはルパン三世1stシリーズの音楽。
かいま見せる本当の大人のテイストがたまらんでした。

ルパン三世´71ME TRACKS
山下毅雄
バップ



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mixiとリンク~た○ごっち

2005-11-25 14:16:12 | diary
manimani名義でmixiもやってるんですが、あちらの日記があまりにも放置プレイなので、このたびこっちのブログとリンクするようにしました。
ど~でもイイ更新でもマイミクのみなさんにmixiのメールが行っちゃうのは申し訳ないと思いつつも、いまのところこちらメインで行きますので、よろしく。

**

昨日Mちゃんがインターネットで調べもの。
なにかと思ったら、新シリーズの発売された「た○ごっち」の売っている場所を調べていたのでした。
「たま○っち」はいま人気再燃の様子で、新製品は発売当日に朝から並ばないと買えない。
うちはそこまでしてやる熱意はないので、放っておいたんだけど、Mちゃんは独自にAMAZONのページを発見。

すると、定価3000円弱のものが、発売の翌日にしてすでにユーズド価格14000円とかで出品されているではありませんか・・・

やれやれ・・・こうやってよく言うと堅実に、悪く言うと姑息に小金を稼いでいるというのは、頭では存在を知ってはいたけれど、実際眼にするとなんとも心寂しいもんだなあ・・・

人気といえども子供が楽しみにしているものなんだから、自分で欲しくない人は買わないでもらいたいよ。変に利鞘稼ぎに使わずに、欲しい人に適正価格で行き渡るようにして欲しいよ。子供には明るい夢を与えて欲しいよ。

こういう考えって平和すぎますかねえ・・・逆にこの事例に学び、賢くたくましく生きる術を子供には教えるべきでしょうか?

Mちゃん、これが消費社会の現実だよ・・・と力なくつぶやく親でありました・・・

・・・・・・・・つづく(いや続きませんて)
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悪事千里を走る?

2005-11-24 13:56:13 | diary
今日、ちょっとした悪事を働いた。
千里を走るというから内容は伏せるけれども、いちおう吐きだしておかないと、小心者なもんで体に悪い。
これも子を思う親の気持ちからきたものなのです。神様仏様どうか平にご容赦を・・

安部公房の小説で、タイトルをすっかり忘れてしまったけれど、子供に筆入れを買ってやる親の話があった。親はそれはもう貧乏で、新しい筆入れを買う金はない。しかし筆入れを欲しがる子供。親はろくでもないことに命を賭け、姑息な手段ではした金を手に入れる。そして新しい筆入れを買い、しかし子供の前でその筆入れを地面に落とし、踏みつけるのだ。

この小説の、姑息な手段で金を得た親のなんとも情けない気持ち、というのを今、少し理解しつつある私であった。つまらぬ悪事に手を染め、ああなんだか情けないなあ・・・・

でも、子供の前で筆入れを踏みつけるという気持ちは、いまひとつわからない。読んだときもよくわからなかったが、いまの心持ちでも、子供に矛先を向ける心境にはなれない。

でもこれは、まだそこまで自分が追いつめられていないということなんだろうか。なんとなく首根っこを押さえつけられながらも、まだ手足は自由だし、眼や耳から入ってくる世界もほんのりあたたかい。こういう境遇に平和と自由を見いだして満足している。自分は幸せなんだか不幸なんだかさっぱりわからない。

最後、どちらの方向でもイイから突き抜けてみたのが、あの小説なのだろう。親心の果てに、親心なんかクソ食らえという心境に陥ってしまった親・・・


悪事の内容は墓まで持っていこう・・・というほどの悪事でもないか^^;
ところでなんていうタイトルだったかな~~~あの小説(忘)
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キアロスクーロ/ピラネージ

2005-11-23 16:07:44 | art
国立西洋美術館で開催中の「キアロスクーロ-ルネサンスとバロックの多色木版画」展に行く。

キアロスクーロとは、イタリア語で「明暗」を意味する言葉だそうで、同系色の版を重ね合わせて刷ることにより、微妙な明暗や立体感を出す木版画の技法を指す。
この技法は16世紀初めのドイツで発明され、イタリアで発展し、フランドル、オランダ、イギリス、フランスに広まり、しかし18世紀には廃れたということだ。

版画はわりと好きなのだが、この技法については今まで聞いたこともなかった。大変勉強になりました。

どういう技法かはやはり百聞は一見にしかず、見に行ってなるほど~とようやく納得できた。
おそらく極めるには歳月のかかる技法なのだろう。同じ作家でも作品によって技巧的な優劣が見られて面白い。

館内の解説にあったが、同様の多色木版画に日本の浮世絵がある。
しかし、キアロスクーロが、あくまで素描による陰影の表現に版画を近づける試みであったのに対し、浮世絵は立体感や遠近法とは違った色彩豊かな表現になったというのはこれまた面白い。
展示作品は全てモノトーンの陰影によるもので、題材も西洋的なもの、聖書やギリシャ神話である。
同じ技法でも西洋と東洋では目指すものがこうも違うんだなあ。

国立西洋美術館
キアロスクーロ―ルネサンスとバロックの多色木版画 フリッツ・ルフト・コレクションの所蔵作品による/レッツエンジョイ東京

**

同美術館の版画素描室では「ローマの景観:ピラネージのまなざし」も開かれていた。
こいつがまたぐぐっとくる細密な銅版画。この緻密な立体感はツボだ~

ピラネージは18世紀イタリアの版画家で、精力的にローマの景観や古代遺跡の連作を制作した。これがすごい作品群で、よくぞここまで心血を注いだなという、大判で緻密な版画が45点ほど展示してあった。

いやー見てヨカッタ。



ピラネージ画像データベース

**

他には、美術館の常設展示もざっと見た。何回か見ているので手抜き。
15世紀、16世紀ころの色彩豊かな宗教画が好きだ。そこはじっくり見る。

気分が妙に美術めいてしまって、ミュージアムショップでいらぬ本を買ってしまう。
西洋絵画の主題物語〈1〉聖書編

美術出版社



どうも微妙にお買い物の神さまがご光臨のようです。
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ひこうき雲の季節

2005-11-23 10:51:16 | ひこうき雲
寒くなって参りました。
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ノルアドレナリン・アンダーグラウンド・ワールド

2005-11-22 10:05:22 | diary
昨日・新宿へ出かける。
高島屋地下でGODIVAのクリスマスコレクションを購入。チョコ4粒で約1000円也。うむむむ。
そして、絶版となっているティプトリーの在庫を目当てに紀○国屋書店へいくも、在庫なし。うむむむ。

東口へ足を運び、最近都内からどんどん姿を消しつつあるしろたんショップへ赴き、マスコット2体を購入。3体欲しいところ2体しか揃わず、次週までに入荷予定とのことなので取り置きを頼む。

次いで、再度ティプトリーを求め、「新宿最大級」とうたわれる大規模書店へ行く。予想通り置いてあったので収穫。

老いたる霊長類の星への賛歌

ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア 早川書房


ここで突如足腰がふらつき喉が渇いてきたので、殺人的に混んでいる新宿のとあるスタバへ向かう。運良くカウンター席をゲット、今年初のジンジャーブレッドラテを堪能する。疲労のタイミングとよく合致したのか、異常なくらい美味だった。

その後、さる重要人物(ってもkomamuさんですけど)と会い、さる重要物件の受け渡しを行う。待ち合わせ場所が急遽マイシティ1Fスタバになったので、再度スタバへいくはめになる。今度はショートラテ。
重要人物とは、出会うなりお互いの病気の話題となるw。もはや老人の域にある・・

巨頭会談中にアモキサン4錠、レキソタン1錠を投入。20分ほどで重要会談(ってもヨタ話)を終え、物件のお礼に先刻のゴディバをあげる。少し早いけどメリークリスマスだ。

スタバでジョン・レノンの「ハッピークリスマス(ウォーイズオーヴァー)」が流れていたので思い出す。そういえばジョンの「心の壁、愛の橋」のリミックス盤が出たはずだ。
タワーレコードへ行き購入する。と、ジャケットがあのおなじみのジョンの子供の時の絵じゃない!う~んなんで変えちゃうかな~残念。
でも購入。タワレコやアマゾンでは「CCCD」とアナウンスされているけど、実際の盤には、CCCD標記はない・・・けどCDロゴもない・・・いったいなんなんだこれは。

心の壁、愛の橋<リミックス&デジタル・リマスタリング>(CCCD)
ジョン・レノン
東芝EMI



そして今度は西口へ移動。途中トイレにより時間調整しつつ、チェンバロのレッスンへ向かう。相変わらずF.クープランの「クラヴサン奏法」のプレリュード1・2番、バッハのインベンション12番、同じくバッハのフランス組曲4番のジーグというメニュー。
クープランはだいぶいい感じに弾けるようになってきた。うれしい。やっぱり家でピアノで弾いているより、チェンバロの方が響きが曲にあっている。
しかしオーヴァーレガートという、ピアノにはない奏法を要求される。これがなかなかに難しい。レッスン時間は45分、じっとり汗をかく。短いのでいつも濃密で緊張するレッスンになる。終わるとどっと疲れる

どっと疲れたので寄り道せずに電車にのり、最寄り駅に着く。家の近所のいつものスタバで軽~く夕食。その日3度目のスタバw。本を読みながらスコーンを食し、レキソタンとパキシルを投入。しばらくするうちに、異様に眠くなってくる。眠い~~。
這うようにして帰宅。子供が起きていたので、今日受領した重要物件を渡す。子供は大騒ぎ。いやkomamuさんありがとう。子供は喜んでいますよ^^v

風呂に入り、買ったCDを聞く余力もなく、眠る寸前にアモバンを投入、ぐっすり眠りこける。

今日も寒いけれど出かけるかな~
キアロスクーロ
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シュルツ全小説

2005-11-21 13:23:34 | book
以前感想を書いた、ポーランドの作家ブルーノ・シュルツの作品集が出版されました。
当ブログの強力コメンテータであるst/ST氏が教えてくれました。
全集が長らく絶版だったのですが、これでなんとなくすっきり。

以前の感想→その1その2

シュルツ全小説

平凡社


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セロトニン・クライシス!

2005-11-21 12:56:00 | diary
セロトニン欠乏脳なくせにアドレナリンでオーヴァードライヴ状態な最近なのだ。必要なのはクールダウンなのかヒートアップなのかさっぱりわかりませ~ん。
とりあえず出歩く気分は0な週末で、かつ何をしたのか記憶が曖昧。これはなんだかいけない状態。

確か土曜日は夕方のクスリを飲み損ねた。なぜだったのかは覚えていない。夕方のクスリを夜8時に飲んだ。なので、夜のクスリを11時ころに飲み、眠くないのでそれからまたDVDを回した。で、深夜2時ころにアモバン投入。
このくらいのサイクルでいけば夜に自由な時間ができていいなと思ったが、しかし、翌日の午前中にかなり残ってしまった。翌日は朝7時には起きたが結局二度寝。午前はもうろうと過ごした。
やっぱり夜は早寝しないとダメみたい。

**

で、結局全部観てしまった。「威風堂々な彼女」7巻20話。
ペ・ドゥナの笑顔と涙と不屈のパワーに引きずられて最後まで観たけれども、なんとなく中盤からテンポが落ちて中だるみだったかもしれない。
ペ・ドゥナ演じるウニが中盤かなりの苦境におちいってしまうのには、観ていて息苦しくなってしまった。なにしろ自分には苦境乗越力が完全に欠如している状況だから。ウニは泣きながら笑いながら感情をあらわにしながらも結局不屈だ。すごい。学びたい。

長尺TVドラマって伏線をいくつか張っても結局ラストはご都合主義的大団円になってしまうことがよくあるけれど、これもご多分に漏れず。あの人はその後どうなったのか?とても気になる。特にウニの姉のクミのその後。彼女はとても微妙なキャラだったと思う。完全な悪役に分類されない。あの自我を押し通す性格もまたウニと背中あわせのものだったと思える。クミはきっとすべてを失い、一からやり直すだろう。ジフンさんとまた一緒になるかもしれない。

ジフンさんもまた半端な役所だ。ヒロインの初恋の人で、ずっとウニを支え続けているくせに、気持ちは完全にウニには向いていなくて、最後はほったらかしにされて終わる。最も真実を知り理解している人物なのに最後は脇役扱い・・・
ジフンさんとクミのその後くらいは描いて欲しかったな。

面白かったのは「双子」にこだわったキャスティング。双子が3組出てくる。
ところで「ウニ」という名前、日本人にはイイ響きです^^;

威風堂々な彼女 DVD-BOX 1

ジェネオン エンタテインメント


威風堂々な彼女 DVD-BOX 2

ジェネオン エンタテインメント



**

しっかし最近ちょっとブログ書く気力とネタが尽きてきたかもしれぬ。
無理に書く必要なんてどこにもないのだけれど。

今日は17時に新宿で人に会い、ある重要物件の引き渡しを行う。(ドキドキ)
そして19時からチェンバロ。外は寒い。
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アドレナリン・オーバードーズ!

2005-11-18 14:13:11 | diary
鼻血がでそうです。

**

昨日はカウンセリング+診察。2月末復職に向けて年明けから復帰訓練をしたいと思います宣言をする。

カウンセリングのK先生の反応、
・・・・・・・・・・
診察のS先生は
・・・・・・・・・・すぐには無理ですけど、そのくらいで復帰する場合のタイムチャートをそろそろ考えてもよいかもしれませんね。」
どちらも「・・・・」が入る。

先生には、今はダメだというのはわかっても、いつごろなら大丈夫か?というのはわからないのだなと実感した。考えてみりゃそりゃそうだよな。

診察のあと職場の担当者と落ち合う。築地場外のくそ狭い店で海鮮丼を食す。マグロ3切れ、タイ・ウニ各2切れ、サーモン・タコ各1切れにイクラがひとさじ乗って900円。値段の割にかなり美味だった。みそ汁もつけたら、海苔の浮かんだ不思議な汁だった。味はまあ普通。お茶は濃~いほうじ茶でなかなかパンチがある店だった。

あ、いや、メシのことはどうでもいいんだった。
担当者にも年明けから復帰訓練を考えていることを大宣言。手続き的なことを依頼する。というか、担当者も手続きが頭に入っていないので、次回診察までに調べてくることに。やっぱり彼は私との面談は息抜きだと思っているに違いない。

手続き的には復帰訓練内容について、職場上司が以下の面談を行う必要があるらしい。
1 主治医との面談
2 産業医との面談
3 家族との面談
早ければ、次回の診察時にS先生と相談し、次々回診察時には「主治医との面談」ができるよう設定してほしいとのことだった。

う~ん自分で言い出しておいて何だけれど、いろいろ聞くうちに重苦しい気分になってきてしまった。あ~億劫だなあ手続き・・・・

しかしぃ~
職場担当者は話し好きのヘビースモーカー。
昼食を含めたっぷり2時間半は拘束された。
私は話し下手のノースモーカー。水と油だよ・・

**

そういえば(どういえば?)猫沢エミライブのチケットをゲットできました。
12月23日・・って休日なのか!知らなかった。
楽しみだけれど、会場はかなりこじんまり。どんな状態になるのかなあ・・

と思ってたら、mixiで猫沢さん本人がコミュを立てられたようです!
うわっ本人だっと思ったらアドレナリン分泌120%
マイミクのお願いをしたくなるのをぐっとこらえる・・・・いきなりは失礼というもの、ライブのときに知り合いと認知してもらってからにするぞぉっ我慢我慢。
とりあえずコミュに参加のみ。

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「威風堂々な彼女」結局続きも観てしまった。6話制覇。
しかしまだ先はある。う~んペ・ドゥナいいなあ。眼がでかい。
威風堂々な彼女 DVD-BOX 1

ジェネオン エンタテインメント



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で、もう一発、事情により公言できないが、くっそ~な出来事も勃発。
う~む憤懣やるかたなし。く~~っ。うぉ~~~~っ。とぁ~~~~っ。くきぃ~~~~っ。むぉ~~~~~っ。むっきぃ~~~~~~~~~~~~~っ!

と珍しくアドレナリン出っぱなしで、体中がフルフルするわぁ。(他人にはわけわからんってかんじでしょうかね)
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CENOTAPH浅野信二展

2005-11-17 18:29:13 | art
写真がピンぼけだが、画家浅野信二の個展に行った。

「シュルレアリスムの画家」と以前書いたことがあるが、実際そういう定義でよいのかはよくわからない。
というより、実際足をはこんでみて、その作風がシュールレアルでありながらも意外なほど静物画的たたずまいをしていた。

実際にどこかにある風景や情景の絵というふうに感じられた。

写真は・・・おっとタイトル忘れた(^^;)
遠近法ではるか奥まで続く近代都市の廃墟と思しき情景のなかに、無防備に横たわる少女の絵。
廃墟のイメージは非常に現実的なものだ。たとえば戦禍の中の都市に見る破壊のイメージ。
そこにもってくる少女の姿だけは鮮明だ。
これはコラージュ感覚なのだろう。取り合わせは異質であってもどうしても超現実とはとらえることは出来なかった。

下の写真はメイン展示となっていた作品「シシィの浜辺」。
これはコラージュ感覚をフルに発揮したシュールレアリストらしい作風。
だが、これが彼のすべてではなかった。
今後も楽しみな同時代の画家だ。



↑クリックで拡大

ただ、「cenotaph(記念碑・屍が埋葬されていない墓)」というコンセプトについては、見ている間はすっかり頭からとんでしまった。
そこに思いをいたすにはもうちょっと全体の世界に浸る必要があったかもしれない。
浅野信二氏と無駄にヨタ話をしてたのは間違いだったかもしれないw
(お茶も淹れてもらっちゃった)

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作品の大半にはすでに売却済みの赤札がついていた。
これらの作品が相応の場所へ散ってゆくのも寂しい気がした。

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於:青木画廊(東京都中央区銀座 3-5-16 島田ビル2F・3F)
11/7(mon)~11/19(sat)

浅野信二WEBSITE/Asasinsane
AokiGallery

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