Credo, quia absurdum.

旧「Mani_Mani」。ちょっと改名気分でしたので。主に映画、音楽、本について。ときどき日記。

「マルタ」ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー

2013-01-27 03:14:56 | cinema
マルタMartha
1973/74/西ドイツ
監督:ライナーヴェルナー・ファスビンダー
脚本:ライナーヴェルナー・ファスビンダー
撮影:ミヒャエル・バルハウス
音楽:ペール・ラーベン
出演:マーギット・カーステンゼン、カール・ハインツ・ベーム他

『不安が不安』など、社会病理に焦点を当てて
当事者の行動や心象を生々しく描くタイプに属する、
ファスビンダーらしい映画だった。

映画の中では、旦那はサディストだ、という言葉で表現されていたが、
今の言葉ではきっとサイコパスとかいわれるようなものではないだろうか。
おそろしく自己中心的で、他人に対して(というか配偶者に対して)抑圧的であり
自分の価値観を押しつけ、行動を制限し、
時には暴力的な言動で威圧する。

それでいてそれが愛情から出たものだと口にし、
実際そう思っている。

そういう男と
そういう男に惹かれて嫁いじゃった女性の物語。

。。。重い^^;


このいやな男の言動が実にねちねちとリアルな迫力で描かれているので
非常に疲れるのだが、
ファスビンダーがわざわざ題材にするくらいだから
こういう男は一定数西ドイツの社会に存在していたのだろうと想像する。
今よりは男性優位の考え方が強かったであろう社会では、
こういう男性も局面によっては存在が許されもしたのだろう。

その歪んだ人間像をしっかり切り出してフィルムにしたこの映画は
ファスビンダーの面目躍如というところではないか。




同時に、こういう男に関わっていながら
なぜか自分を抑圧して男に従ってしまう女性のほうの心理もしっかりとらえているのもこの映画の面白いところか。

おそらくは、やはりある程度強圧的な父親と、
理不尽な非難を子供に向ける愛情薄い母親の存在。
そのもとで育てられ成人したマルタは本当の愛情を知らず、
ヘルムート(ヤバい男ね)の理不尽な抑圧も
これが愛情から発していて、少し変だけどもワタシが受け入れなくてはならないわ的に思い込もうとしてしまう。
そんな感じですかね。

マルタの周囲もろくな助言をしない。
というかマルタ自身が適切にSOSを出せないのだ
不安で抑圧されているが、なにが問題でどうしたいかが自分でもわからないから。

ここでは支配しようとする側の理論(というかやり方)とともに
支配される側の理論(というか心理)もまた
支配構造を形成する力に作用していることが明らかになる。

男と女の関係の映画であるけれども
支配/被支配の力学として考えると
応用範囲は広いだろう。

恐い恐い。
ああ恐い。

****

ヘルムートは森田健作に似ている(笑)

マルタの母親がまた強烈に濃い。この母に育てられたくない!!

唯一まともでちゃんとした現状分析のできる若者カイザーくんは唯一の希望の星なのだが・・・しかし・・・(略



@イメージフォーラム



【追記】
ファスビンダーの魅力を語り続けている渋谷氏が某所でつぶやいていたのだけれど、
奥さんが働いている場合に、旦那が勝手に退職願などを出してしまうというようなやりかたは
最近まであって法的にもマズいことではなかったというようなことでした。
この映画が撮られたころにはそういうこともしばしばあったということですね。

男女が対等に社会参加というのも
ほんとに最近までは実現していなかったわけだし、
婚外子の戸籍の問題とか
いまだにもやもやしているし、
地方によっては、あるいは人によってはいまだに男尊女卑的な考えを持っているし、
先日の世論調査だかなんだかで、若い人は「女性は家庭に」みたいな考え方が増えている
なんて話もあって、長年の女性の抑圧の歴史は
まだまだ亡霊のようにそこらにただよっている。

ということで、全然古びない映画なのだった。

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「バッハという、新しい聖歌隊監督」ヘレヴェッヘ+コレギウム・ヴォカーレ・ヘント

2013-01-25 04:17:59 | music
Ach Susser Trost! Leipzig Cantatas
J.S. Bach
Phi


バッハという、新しい聖歌隊監督~1723年ライプツィヒ、赴任初年度の教会カンタータ4編~
ヘレヴェッヘ(フィリップ),コレギウム・ヴォカーレ・ヘント
マーキュリー



バッハのカンタータが4つ入った盤です。ヘレヴェッヘ+コレギウム・ヴォカーレ・ヘントによる演奏ですが、2012年録音のほやほや。とても繊細でまとまりのよい演奏で美しい~

これは例によって日本ではマーキュリーから「バッハという、新しい聖歌隊監督」というタイトルがつけられて発売されています。ワタシは解説文翻訳が欲しいので国内盤を買いますが、英語、仏語、独語堪能な方なら輸入盤でよいですね。

バッハが1723年にライプツィヒ聖トーマス教会のカントルに就任した、その初年度に作られたカンタータを集めたものです。ライプツィヒ時代にカンタータは量産されスタイルも内容も確立していくのですが、ここにはスタイルが定まる前の、いろいろな要素を含む試行錯誤の形が残っています。試行錯誤だからといって音楽的に質が劣るということは全然なく、むしろ変化に富み技巧的にも多彩な面白く気高い曲です。
カンタータどれ聴いても同じだよな~と思う人にはおすすめの盤ですね(笑)

ワタシはライプツィヒ時代の完成したカンタータも好きですが、それ以前、ワイマール時代やさらにはミュールハウゼンでの素朴というか古風な作風も混じったりするものも好きです。聴いて魂を抜かれる音響体験としては古い時代のカンタータのほうが即効性はあるかもしれません。

ということでまたCDが増えて行くのです。。



(某所に書いたものとまったく同文です)
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ヴィラ=ロボス:ブラジル風バッハ

2013-01-17 02:01:47 | music
ヴィラ=ロボス:ブラジル風バッハ 全9曲
クリエーター情報なし
EMIミュージックジャパン


なかなかカッコいいんで、ときどき聴いてます。

第1番の始まりはワクワクする弦楽合奏のドライブ感あふれるリフで
これはなんというかロック世代に受けそうなノリである。

ピアソラやヨーロッパのチェンバーロックが好きなら
ちょっとアドレナリンがでると思う。

でもワタシが好きなのは第2番で
これはサックスとかトロンボーンとかが入ったもので
ジャズっぽいゆるさがあるイントロがたまらなくよいのね。
頽廃してるな~って感じの。
でもなんか情熱もあるよみたいな。

どのへんがバッハなの?と思わなくもないんだけど
ときどきフーガとかトッカータという楽章があって
ブラジル風の主題でフーガをやったりしているので
そういうことかな


ヴィラ=ロボスは19世紀末(1887年)に生まれて1959年に没。
マーラーより20年くらい後の人ですね。
自分のルーツであるブラジル音楽をベースに据え
西洋的なアカデミックな方法を駆使しつつ独自の表現を追求したという感じです。

ボサノヴァ前夜のブラジル音楽という点でもちょっと面白い。


ブラジル音楽というのはほんとに豊かで高度でしかもエモーショナルな音楽で
こういう音楽が環境にあったらよいよなと素朴に思ってしまう。
一口にブラジルとくくれない面もあるし、
その成立史にはいろいろと暗い面もあるし
でも音楽はこんなにすばらしくやさしく輝かしいんだ。


ヴィラ=ロボス、1000曲くらい残しているということで
すごいね。

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「ローラ」ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー

2013-01-14 03:22:22 | cinema
本年一発目の映画鑑賞は
幸いなことにファスビンダー3本一気観ということになりました^^

まあファスビンダーの映画は観ている間は^^←こんな顔にはならないんですけどねw

『マリア・ブラウンの結婚』
『ローラ』
『マルタ』
の3本でしたが、『マリア~』は以前観てここにも書いているので、
まずは『ローラ』から。



例によってあまり予備知識無しに観るのですが、
直前にチラシを観てたしかそこに、ジョセフ・フォン・スタンバーグ監督の『嘆きの天使』を下敷きにして・・と書いてあったのを目にしたのです。

観始めて、ああ、たしかにそんな雰囲気だ。。
と納得したわけですが、
どうも最後の方にいくとなにやら雲行きが怪しくなってくる(笑)

んんん?と思っていると
最後に、えええっ??となって、
やられた~これはファスビンダーらしい皮肉たっぷりの映画になっているじゃないか~

ということになるのです。
(なんのこっちゃ)

その顛末を書いちゃうと壮大なネタバレになるわけで、
いやーどうしたもんでしょう。


【ということでここからは若干のネタバレを含みます】


『嘆きの天使』は、ワタシ的な考えでは、
愛の勝利といいますか、
打算もなにもかも受け付けない愛情の恐ろしい力、それが勝利するわけです。
絶対的な愛が勝って、その周りにいる人間なんぞは破滅するわけです。
それがあの映画の主題だったように思うのだけど。。

『ローラ』は、
同じように堅物のおじさんがイケナイ世界に魅了されちゃって
困ったことになるんだけれど、
堅物のおじさん、実は結構器用で、最後にはその愛を現世的な形で成就させちゃうんだよね。
しかもその成功の裏には、ローラと自分をくっつけるように周りをしむけるための打算があり
なんというか
利害が一致するというような方向でうまくまとまっちゃう。
しかもおじさん自分の信念をあっさり曲げちゃったらしくてw

これが『ローラ』における「愛の勝利」の形で、
それは愛が勝つと同時に、社会の汚い仕組みや力学の勝利であって、
勝ち組はこのようにして愛と私欲を両立させている、という解説のようなものになっている。
そこでは、変節する人間が勝つんだよという教訓?が感じられる。

『嘆きの天使』を下敷きにしたとするならば、
それは思い切り換骨奪胎されて、『ローラ』の舞台となる50年代のドイツ(の建設業界)における
資本主義的な社会の「愛の勝利」を描いたものになっていて、
潤いもロマンも、頽廃すらないカサカサの現代っぽい皮肉な手触りの映画に変わってしまっている。

このカサカサの手触りがなんともある種のファスビンダーっぽさを感じさせるのですよ。
『自由の代償』とか『13回の新月のある年に』のようなものすごくウェットなものも大好きだけど
こういう身もふたもないうっすら笑うしかない作風もいいんだね。

【ネタバレ解除】

ついでに、
『嘆きの天使』はドイツで最初のトーキー作品だったんですねー。
1930年。
マレーネ・ディートリッヒの売り出し作。
でもスタンバーグはウィーン生まれだけどもアメリカ育ちでハリウッドで売れ出した監督。
輸出作みたいなものだったんですね。
(wikipedia見ました)



ファスビンダーの映画については、
彼は映画が撮りたかったけども演劇も熱心にやっていたのだということを思いだしながら観ることにしている。
ああ、ここは演劇なのだ、と思うとなにか理解できる瞬間がある。
映像的にしっとりした完璧なカメラワークみたいなものはあまり感じられないのに
よく見ると妙に構図とかアングルとか(同じ?w)凝っていたりして
ああ、これは演劇的な凝りかたなんだなと思ったりする。

そういうのは映画じゃないとか
きれいなショットがないとなんとなく納得いかないという向きには
あまりおすすめできない作家なのかもしれないが、
逆に演劇的な方法を大胆に用いた映画のつくりかたというのもあってよいし
それはそれで面白いと思うので、
ファスビンダーなにか納得いかない!と思った時は「演劇」と唱えてみるといいかも。。

もちろんワタシは映画として魅力がないとかそういうことは思ってないですけどね。
ひとつの糸口としてね。
『ローラ』も、画面の色調をたぶんかなり考えて撮っているように見受けられたし、
(いかがわしい場所ではピンクっぽいとかねw)
映画的な工夫をいっぱいしている感じです。



あと『マリア~』『ヴェロニカ・フォスのあこがれ』とあわせて
ドイツ3部作(あるいは西ドイツ3部作)とあつかわれているが、
他2作にくらべてはるかに本作は軽いよん。

雑感みたいになっちまったな。



@イメージフォーラム
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"111ème Pyramide"-111番目のピラミッド ~Emi NECOZAWA & Sphinx LIVE 行ってきました

2013-01-13 03:15:28 | 猫沢エミ
"111ème Pyramide"-111番目のピラミッド
~Emi NECOZAWA & Sphinx LIVE avec:DJ 敷島 a.k.a 安治川親方~
2013年1 月11日(金)


今回はあの快適空間JZ Bratでの初ライブでした。
猫沢エミあんどスフィンクスもとうとうこんなところでライブをやるようになったのですねー

メジャー時代はクアトロを満員にした猫沢エミですが
それでも売れた部類には入らない
音楽業界というのはなんとも厳しいというか
なんだかナンセンスな感じがしてしまう。

こうしてそんなに多くない人数で
近しい距離をもって
そんなに大音響にならずに
生の音や息づかいを感じながら
みんなで音楽を楽しむ
そういう形態がいちばん自然で
音楽も生き生きする

絶対失敗できないようなお金のかけかたをして
がっちり作り込んだ音楽をやるのも
まあ面白くないとは思わないけども、
もっと身近に音楽があっていいと思う。

そういう意味で猫沢エミがメジャーを離れて自分の納得いくバンドをゆっくり作り上げていった過程は
音楽を取り戻す過程であったのだなあと思う。

日本じゃなくて音楽を取り戻す!

****

今回はワタシ的には、仕事で消耗した週の週末だったので
きっちりセットリストをおさえて写真も撮って、という参戦はやめて、
ライブをふつうに体験して、癒しや生きる喜びみたいなものを感じたいと思いまして、
なので、セットリストはなしです。

基本的には最近のスフィンクスのレパートリーをやったのですが、
イケイケでがんがん押しまくるスタイルを微妙に軌道修正しているな、と感じました。

具体的には、そうだなあ、、
テンポが上がって盛り上がりに走るようなところで
今回はボリュームをグッとおさえて静かなビートにしてみたり、
ソロ回しのところでそれぞれ意外性のあるソロをとって変化を付けたりとか。

まあ、そう聴こえたなーということですけどね。


「橋の上のふたり」が復活したのは嬉しかったな。
これはやっぱり名曲であるし、
バンドでもいっぱいやっている曲なので、逆に毎回変化がある曲になっているので
聴いていて面白い。
ノリもとてもよいし。
ほんといい曲だわ。。

あと最近レパートリーになっている、スローでジャジーな雰囲気の2曲
えーと、「セプタゴン」と「サレ」もすごく気に入っているのです。
ライブだとどっちがどっちの曲だったかな?とか思ったりもするんですが(笑)
(今はちゃんとわかってます)

なんか異国の情緒みたいなのがあって
夜の雰囲気があって
遠くのどこかにいるもう一人の自分がひとりで夜に切ないメロディを聴いているような気分。
まあ、映画のワンシーンがうかぶような・・というとなんか月並みだけど。


アンコールで「マンダリンワールド」をやったけど
そのとき猫沢さんは「これはピラミッドの曲ではないけれど・・・」と言ったのが印象的で。
そうか、これは猫沢エミの曲であってピラミッドではないのか、、ということは
メジャー時代の素敵な歌たちはピラミッドでは基本やらないのはそういうことなんだな~
となんか納得。

ポップで繊細な歌の世界もワタシは大好きなので
そのうちピラミッドのなかで新しい花となって甦ることも期待してよう。
歌はもうやらないぞ!とかかたくなに決めているような感じでもないので。。

しかしマンダリンワールドはほんとに幸せな歌だな~
世界がオレンジ色にトロケていくよ。


ということで、仕事疲れのワタシはほんわかととろとろになって
最後の方は眠くなっておりましたww


***

JZ bratはこじんまりとしたブルーノートみたいな印象ですよね。
PAが低音の巨大ウーファーを除き天上から下をむいて設置されているので、
バンドや歌の音が基本上から聴こえるのです。
そのせいか、歌声が上から遠くに飛んで行ってしまって
聴こえにくい感じがしました。

マイクのせいもあるかも?
小さい声は拾いにくそうでした。
大きい声は逆に拾いすぎていきなり大きく鳴る。
これはどう解決するんだろうね。
コンプレッサーとかリミッターとかライブのPAで思い切りかけたりするもんなんだろうかな??

モニターはどうだったんだろうかの
バンドがフルで鳴っているときはちょっと歌いにくそうにみえたんだけどそんなこともないのかな。

歌や全体の音については
サラヴァ東京のときに素晴らしい音を聴いているので
あれはよいよ。
バンドはしっかり鳴るのに歌がすーっと通る。
どうやってやるんだろうあれは。



なんだか散漫な走り書きになっておりますな・・・


ということで、ゆったり座れてテーブルがあって食事もお酒も(ワタシは酒は飲めないのだが)楽しめるという点では
とてもよいライブでしたが、音はサラヴァのほうがいいな~という感想です。

演奏はとてもよかったです。
どんどんよくなっていると思います。



次回ライブや、昨年出たアルバムなどについては
スフィンクスのページ


今回は写真なしよ~

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2012年を振り返る~極私的映画ランキング~

2013-01-09 02:00:18 | cinema
2012年を振り返る~極私的映画ランキング~

毎度言うことですが、ワタシの映画鑑賞スタイルは劇場に足繁く通うというよりは、旧作中心にDVDでというものなので、年間公開作のランキングはできません。
なので、新旧作とりまぜてのmanimani脳内限定ランキングをやって喜ぼうという私的企画です。

という文章自体、昨年のランキングページからコピペしてるくらい毎年言ってますw

あ、コピペしたらmanimaniになっているではないですか(笑)
ということで、今回はすた☆ばねこのランキングです。

2012年は多忙で観た本数も少ないし
あまり記事も書いてないので、極私的ランキングはお休みしようかと思っていましたが、
やって欲しいという声がちょびっとあり、
望む方が少しでもあればそれはもう嬉しいかぎりなのでやります。

****

まず昨年観た映画はざっとこんな感じです。

「希望の国」園子温
「残酷メルヘン 親指トムの冒険」マリナ・ドゥ・ヴァン
「カール・マイ」ハンス・ユルゲン・ジーバーベルク
「トータル・リコール」レン・ワイズマン
「夢売るふたり」西川美和
「ヒトラー、あるいはドイツ映画」ハンス・ユルゲン・ジーバーベルク
「ルートヴィヒ2世のためのレクイエム」ハンス・ユルゲン・ジーバーベルク
「ヘルタースケルター」蜷川実花
「モスクワ・エレジー」アレクサンドル・ソクーロフ
「ミッドナイト・イン・パリ」ウディ・アレン
「エレニの旅」テオ・アンゲロプロス
「霧の中の風景」テオ・アンゲロプロス
「ファウスト」アレクサンドル・ソクーロフ
「第9地区」ニール・ブロムカンプ
「ナッシュビル」ロバート・アルトマン
「テトロ 過去を殺した男」フランシス・フォード・コッポラ
「トーク・トゥ・ハー」ペドロ・アルモドバル
「サバイバル・オブ・ザ・デッド」ジョージ・A・ロメロ
「レイキャヴィク・ホエール・ウォッチング・マサカー」ユリウス・ケンプ
「ヒューゴの不思議な発明」マーティン・スコセッシ
「Pina ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち」ヴィム・ヴェンダース
「陽炎座」鈴木清順
「戦火の馬」スティーヴン・スピルバーグ
「ドラゴン・タトゥーの女」デヴィッド・フィンチャー
「メランコリア」ラース・フォン・トリアー
「ニーチェの馬」タル・ベーラ
「夢二」鈴木清順

なんか他にも観たような気がするのだが・・・

あ、フレデリック・ワイズマンを観たな。
あとあれも「マルドゥック・スクランブル 圧縮」と「マルドゥック・スクランブル 排気」。
なぜか真ん中の「マルドゥック・スクランブル 燃焼」は未見w
あ、あれも観た!「プリズナー・オブ・パワー 囚われの惑星」。ストルガツキー兄弟「収容所惑星」が原作の!

ほかにもいくつか観たけど思い出せない映画があると思われる。

そして、冒頭のお断りにも関わらず、意外と劇場鑑賞が多いじゃんw
最近家ではTV権が剥奪されているからなー^^;


さて、2012の極私的ランキングは・・・

第1位「エレニの旅」テオ・アンゲロプロス
思えばテオの訃報で明けた2012年だったのです。
「エレニの旅」は悲しい映画でしたが、その悲しさのなかにこそ、人が生きることへの深い敬意と希望を込めることができたのです。こんな映画を作れる人が事故でなくなってしまうのは本当に惜しいことです。
迷わず1位にしました。

第2位「ニーチェの馬」タル・ベーラ
なんというか、自分でも意外性のない選択ではありますがwまあこういう映画が好きなのでしょうがない。
ここでは絶望ということが描かれていますが、絶望の末期という風情で、ワタシたちの抱く絶望にはまだ潤いがあるなということを思い出させてくれます。そんなことを目的にタルさんは撮らなかったとは思うんですけどね。
あの馬の造形。同時期にみたスピルバーグの馬との対比によりそれぞれの作家の資質の違いがよくわかりますね~。

第3位「ミッドナイト・イン・パリ」ウディ・アレン
えええ?ウディかよ?と思われる向きもあろうかと思いますが、自分でもびっくりです(笑)
上手く言えませんが、俗物を描く映画を撮っているうちに、映画自体を俗物にしてしまい、自己言及的な皮肉が内と外をぐるぐるエンドレスで回ってしまうような映画になっていると思います。すごい楽しめたし、パリの風景も堪能できたし、無邪気にランクイン。


というベスト3でした。

そして恒例の番外編。
事件で賞「ヒトラー、あるいはドイツ映画」第1部第2部第3部第4部ハンス・ユルゲン・ジーバーベルク
これを上映したのはやっぱり事件でしょう。長年観ることの出来なかった日本語字幕付きのこの映画。長いです。変です。ニュージャーマンシネマというのはどういう胎動だったのかを実感できます。

観れないなんてあり得ないで賞「サラゴサの写本」ヴォイチェフ・イエジー・ハス
これは観ませんでした!20年以上も観たい~観たい~と呪詛を唱え続けた映画がなんとポーランド映画祭で上映されたのですが、上映回数は平日2回・・・のみ・・・仕事の関係でまったく観に行く余地無しでしたしくしく。
通常ならば仕事を放り出して観に行くのですが、今回ばかりはそうもいかず。。
何故、よりによって、この映画を、このワタシが、観 な い の か ~ !
という賞ですw

あとはですねー「トータル・リコール」も割といい感じでしたね。ディック臭さがもっとあればランクインしたかも。
それと「希望の国」はランキングとは別の価値を持っているのと思うので。観るべき映画と思います。
スピルバーグとコッポラはもっといいモノが撮れそうなので残念賞。
トリアーも好きだけど心の中のなにかが邪魔してランクに入れられなかった(笑)
ロメロも「ダイアリー~」の出来がよかったのでそれは越えなかったかも。
ソクーロフ「ファウスト」は2回観たが2回ともぽつぽつと寝ちゃったので評価定まらず。
日本勢は不発・・というかワタシの方がちゃんと観ていないということですね。


今年はどんな映画を観るかな~?
みなさんも有意義な映画生活を送ってくださいねー
まあ有意義でなくてもいいか。



special thanks to とらねこさん
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Bach 「Missa 1733」 アンサンブル・ピグマリオン

2013-01-06 02:52:20 | music
Missa 1733
J.S. Bach
Alpha Productions


バッハの宗教音楽の集大成として知られる「ミサ曲ロ短調」ですが、
その原型は1733年に書かれたミサ・ブレヴィスなわけです。

ミサ・ブレヴィスというのは「短いミサ曲」というような意味で、
通常のというか「長い」ミサは
キリエ、グローリア、クレド、サンクトゥス、アニュス・デイ
の5つの部分からなるわけですが
ミサ・ブレヴィスは最初の2つ、キリエとグローリアのみのものを言うそうです。

ミサ自体が本来はカトリックの祈りの言葉なのですが、
短い形のミサの祈りはルター派教会でも特別な儀式のおりに用いられていたということです。
バッハも基本的にはプロテスタントの世界で曲を作っていたので、
ほとんどはドイツ語によるカンタータを作ったのですが、
ラテン語によるミサ・ブレヴィスも4曲(たぶん4曲)ほど作っています。

「ミサ曲ロ短調」が大きいミサ曲として成立する経緯や背景などは
とても興味深いものがあるのですが
まあここでは大変なので別の機会に。

で、このCDはその原型であるミサ・ブレヴィスを
その献呈先であったドレスデンの宮殿での楽団の規模の考証や、
残された手稿譜やパート譜からわかる「ロ短調」との違いなどを踏まえて
再現を試みた演奏です。

通奏低音の使用楽器について、とか、バッハがパート譜に書き込んだ表情記号とか
いろいろと面白いことがあるようなのですが
その辺は聴いてみてのお楽しみといたしましょう。

音の方はとにかく冒頭からよく考えられ練習された丁寧な演奏です。
キリエの冒頭はそれはもう魅力的な和声による祈りなのですが
そこからすでにこの先の曲の出来が期待できる感じです。

もちろん古楽器を使用したものですが
テンポもゆったり目で激しくもりあげることもほとんどなく
残響も控えめで
おちついた、こころに語りかけるような
素敵な演奏になっていると思います。

すっかり気に入ってしまった。


タワレコや山野楽器などに行くと、この盤に日本語解説を付けたものが
マーキュリーから出ているので、
詳しく知りたい方はそれをお求めになるのがよいでしょう。
もちろんフランス語と英語の読解力のあるかたは輸入盤で十分です。


すっごいいいです。


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ソヒエフ+トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団「火の鳥」「春の祭典」

2013-01-05 04:24:30 | music
ストラヴィンスキー: バレエ組曲 「火の鳥」 (1919年版)、バレエ音楽 「春の祭典」 (Stravinsky : The Firebird, The Rite of Spring / Tugan Sokhiev) [CD+ボーナスDVD] [輸入盤]
ソヒエフ+トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団
Naive


先日日本ツアーを行ったトゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団の最新盤を聴いてみました。

来日公演では、サントリーホールでの「幻想交響曲」を聴く機会がありまして(猫さまありがとう)
初めて聴くオケで期待大でした。
「幻想」は色彩豊かでキラキラとした元気な演奏だったのですが、
暗く重い側面の表現はあまり感じられないかなーという感じでした。
が、とにかく弦楽器のアンサンブルはかっちりしつつドライブ感があって、
ぐいぐい引き込ん突っ走るのがとてもよかったです。

で、その元気の良いドライブするオケの新譜は
ストラヴィンスキー「火の鳥」「春の祭典」のカップリングということで
これは面白そうだなと。

録音は残響少なめで、楽器が近くで鳴っている。
指揮台にマイクが立っているイメージの音です。

やはり若々しく前へ前へと進む演奏ですね。
弦楽器がやはり近くでがっちりしたアンサンブルを組みつつドライブする演奏です。
チェロやビオラの刻みなど埋もれがちな音も近くで聴こえて
なかなかスリリングなアンサンブルがよくわかっていい感じです。

残念なのはちょっと金管と打楽器が小さめなことで、
ぐわしゃ~んという破壊力にはちょっと欠ける感じがしますね~
このドライブ感を持ちつつ要所ではもっと大胆に崩壊感を出せれば
最高におもしろい演奏/録音になったかなー


ハルサイの演奏はDVDもついているようで
こちらは未見なんですが
これも期待ですね~~


同管弦楽団と先日のツアーについてはこちら



公演ではロビーで粒オケ関係者とばったり会ったりして
世間は狭いのだ。

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