Credo, quia absurdum.

旧「Mani_Mani」。ちょっと改名気分でしたので。主に映画、音楽、本について。ときどき日記。

「ナッシュビル」ロバート・アルトマン

2012-05-31 03:06:36 | cinema
ナッシュビル [DVD]
クリエーター情報なし
パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン



ナッシュビルNASHVILLE
1975アメリカ
監督:ロバート・アルトマン
脚本:ジョーン・テュークスベリー



すごかった。
こんな映画は今は誰にも撮れないだろう。

アメリカ大統領選と
それにからんで利用されたりされなかったりするミュージシャンたちの動向を
ひたすら切り貼りしていく。

滑稽なBBCのリポーターがなんとなく狂言回し的に全編を繋いでいるような気もするが
とにかく冒頭いきなり選挙カーがガレージから出てくるところから
最後まで
ストーリーというものはなく、
というと語弊があるかもしれないが
ストーリーによって組み立てられているのではなく
組み立てられた断片からなにかストーリーめいたものが
もやっと生まれてくるといった風情で

いまなら観客置いてきぼりとか
そういう評価で製作する側がすでに躊躇してしまうようなフィルムである。


70年代にはこういう置いてきぼり映画はそこそこあったようにも思う。
アメリカ映画でも。
なんとなく『オール・ザット・ジャズ』や『レニー・ブルース』とか
あるいはマイナーどころでは『レナルド・アンド・クララ』を思い出す
どっぷりとしたアメリカの世界の置いてきぼり。
そのへんはもっと追求しても良さそうだ。

*****

しかし『ナッシュビル』でのぷんぷんに醸し出される70年代南部臭さは
なんだろうねー
映画がくすぶって臭いを発している。
嗅覚に訴える映画。
冒頭近くのミュージシャン・ヘヴンがレコーディングしている曲がまた
建国150年だかなんだかを歌い上げるこてこての愛国ナンバーで
録音の最中に首にするキーボーディストはどっちかというと西海岸ヒッピー風の若者で
うわ~~

全編音楽が演奏される映画でもあるので
それもまた嗅覚を醸造する。
音楽は本物(といううさんくささ)をずっしりはらんでいるので
実に楽しめる。

知っているミュージシャンの名前は
ロニー・ブレイクリーくらいなのだけど
きっと南部カントリー界では有名どころも出ているのだろう。

あとは『シャイニング』が印象的(で顔も印象的)なシェリー・デュバルとか
先日『トーク・トゥ・ハー』で見たジェラルディン・チャップリンとか



@DVD鑑賞
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「グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉」飛 浩隆

2012-05-21 00:44:01 | book
グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)
飛 浩隆
早川書房


すーごい面白かった。
道具立てはそんなに目新しくはないけれども
奇想にあふれている。
AIや打ち捨てられた仮想世界と
そこへのハッキングという装置を用意することはいまなら誰でも出来そうだけど、
そこにスウシーの逸話や苦痛の肉塊やジュリーとジョゼの誓いを
エロスとタナトスの呪縛の中に絡ませて提示できる人は
ほんの少ししかいないだろう。

道具立てだけ見てこれを古くさいと切り捨ててしまう評を目にしないでもないが
それはあまりにももったいない話である。
これは自分の人生の物語である。
じっくり何が書いてあるかを読み解いてみてからでもよいはずだ。



意外と映画的なところも。
内面描写を大胆に活劇に絡めているところなどは
実に映画にしにくいとは思うのだが、
細部にいちいち奇想をこらしているところは
映画でいちいち拾って描くと見応えがあると思う。
読んでいて映像が脳内を駆け巡る。
リドリー・スコットでどうかな。



続編がある。
続編がないと残された我々はかなり苦しい思いをするだろう。
でも著者は続編は本作とはまるで違ったものになるだろうと
ノートに記しているので
さてどこへ連れて行かれるのか??


ワタシとしては、ディック以来の本当に好きな作品という印象だわ。



コメント (2)
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「テトロ 過去を殺した男」フランシス・フォード・コッポラ

2012-05-21 00:37:20 | cinema
テトロ 過去を殺した男 スペシャル・エディション [DVD]
クリエーター情報なし
パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン


テトロ 過去を殺した男TETRO
2009アメリカ/イタリア/スペイン/アルゼンチン
監督:フランシス・フォード・コッポラ
製作:フランシス・フォード・コッポラ
脚本:フランシス・フォード・コッポラ
出演:ヴィンセント・ギャロ、オールデン・エアエンライク、マリベル・ベルドゥ、クラウス・マリア・ブランダウアー、カルメン・マウラ


なにやらサスペンスフルな副題だけども、観てみると全然そんな映画ではない。
謎めいた兄テトロのもとに転がり込んだ弟。
兄は偏屈のように見えながらも意外と気さく。
だけどテトロの恋人の回想なども交えてテトロが相当に屈折して神経衰弱のような状態から少しずつ抜け出して来たこともわかってくる。

テトロがなぜ家族を離れて名前も変えるに至ったかは
回想シーンでかいま見れるが、
それが本筋というか謎解きのようになると思いきや
むしろ作品の深みを作り出す背景のような扱いである。
しっとりとテトロの過去の胸中を想像しながら
ブエノスアイレスで快活に振る舞うテトロの姿を我々は観る。

テトロの物語はそのように水面下で進む。
そしてラストの弟とのやや衝撃的な相互理解。
そこへ至るまでの長い(精神的に)道のりを
我々はすでに想像し理解する練習をしている。
感動は与えられるのではなく
我々自身が想像したことのなかにある。

地味ながら考え抜かれて作られた映画には
前作『胡蝶の夢』同様に
他の追随を許さない風格がある。
風格もあるし若さもある。
モノクロで撮られた作品は
どこかヌーヴェルバーグのような
ニューアメリカンシネマのような
若さも感じられて。

好きな映画をまたひとつ発見した。

******

舞台芸術や
舞台における権威のふるまいや
そういうことも皮肉っぽく扱っていて
そこらへんはショービジネスに長く居る人の本音のようなものが感じられておもしろい。



@DVD鑑賞
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sonimariumの今

2012-05-16 03:55:25 | son*ima通信
みなさま今晩は。

ワタクシすた☆ばねこがこっそり主宰しますところの歌ユニットsonimariumですが、
やっとこさ6曲のレコーディングを終え、残り3曲予定です。

牛歩的進捗ですがなんとか年内には仕上げてCD化といきたいところでして。
CD化にあたりこんな方法もあるよと知識のある方は
こっそり教えてください。(他力本願)


6曲のベータ版はsonimariumのYouTubeチャンネルにまとまっておりますので
モノは試しに聴いてみてください。

CD化にむけてどの曲ももうちょっといじる予定です~

ではでは
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物欲の森にて

2012-05-08 00:58:17 | cinema
このところいろいろと食手の伸びるブツが出ているので
散財の神降臨にて、その報告というかまとめというか。


ジャン=リュック・ゴダール+ジガ・ヴェルトフ集団 Blu-ray BOX (初回限定生産)
クリエーター情報なし
IVC,Ltd.(VC)(D)


まずはこれが大事件^^;
ゴダールの68年周辺の激動の問題作がソフト化されるという暴挙wを見ぬ振りはできない~
『ウイークエンド』『東風』『万事快調』とジガ・ヴェルトフ集団期の『ありきたりの映画(あたりまえの映画)』『たのしい知識(楽しい科学)』『ウラジミールとローザ』を収録で実売25000円程度。
安い!わけはない。高いよな~~~~。



1900年 Blu-ray (2枚組)
クリエーター情報なし
紀伊國屋書店


暗殺の森 Blu-ray
クリエーター情報なし
紀伊國屋書店


それとこれらベルトルッチの名作が相次いでソフト化。
ワタシはあちこちでベルトルッチのいくつかの作品が入手できない状況はマズいよねとつぶやきまくっていたので、
こりゃ渡りに船とばかり即ぽちってしまった。。。
とくに1900年のソフト化は快挙。長いけど。
これを皮切りに『暗殺のオペラ』や『ルナ』なんかも出ないかな~


ザ・ベスト・オブ・デイヴィッド・リンチ・ドット・コム [DVD]
クリエーター情報なし
パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン


これはなんかマニア向けなのかもしれないが、リンチの有料サイトで公開されていた(公開とは言わんのか)映像を集めたものということらしい。
絶対変なものばかりと推測するが、いかがか??

リンチは監督によるリストア版BDが出ていて欲しくはあるが、すでに持っているものを買い直すのも財力的な問題でアレ・・・



アンダーグラウンド Blu-ray
クリエーター情報なし
紀伊國屋書店


クストリッツァの大名作『アンダーグラウンド』はもう発売されているが、
このスペシャル豪華BOXはTシャツついて6000円弱って安くね?
ということで。
Tシャツいらんと言えばいらんけど(ワタシはすでに持っているからいらんけどw)



霧の中の風景 Blu-ray
クリエーター情報なし
紀伊國屋書店

永遠と一日 Blu-ray
クリエーター情報なし
紀伊國屋書店

エレニの旅 Blu-ray
クリエーター情報なし
紀伊國屋書店

シテール島への船出 Blu-ray
クリエーター情報なし
紀伊國屋書店


他界したアンゲロプロスの4作がBDに。
シテール島以外は未見だったのでこれを気にぽちっと。
『エレニの旅』を特に楽しみにしている。
続いて『旅芸人の記録』が出るべきだとも思う。




ということで、請求が恐い。
というかこんどこそ本当にヤバいかもしれないのだが、
世の中なんとかなるだろうと根拠なき楽天家がここにいる。。。。



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THE BANDのこと

2012-05-04 03:01:50 | music
先日にがんの末期段階にあることを発表した元ザ・バンドのドラマー/ヴォーカリスト、リヴォン・ヘルムが、4月19日にNYの病院で死去した。享年71歳。彼は家族や友人、バンド仲間に見守られながら息を引きとったという。
(TOWERRECORDS ONLINEニュースから引用)

ということを契機にリヴォンのいたTHE BANDにまつわる思い出などを書いてみる。

****

ザ・バンドの存在は、ボブ・ディランのバックを一時期やっていたバンドとして初めて認識した。
ディランのアルバムでは『偉大なる復活』と『プラネットウェイヴス』などで彼らの音が聴ける。

小遣いの乏しかった当時はレコードは特別出費であり
限られたレコードを親の承諾の元に買ってもらう身分だったので
ワタシの音楽の情報源はほとんど友人から借りるレコードでありまして
このディランからザ・バンドの音を知りザ・バンドのレコードに手を出す
というプロセスは、すべて友人がやってくれた。

おかげで映画『ラスト・ワルツ』の日本公開時に間に合うことが出来た。
『ラスト・ワルツ』の公開は78年ということだから多分中学3年生だったワタシと友人は
これまた友人に買って来てもらった(と思う)前売券を握りしめて
有楽町の映画館に出かけて行った。

これが上映館がどこだったのかまるで思い出せないのだが
有楽座でもみゆき座でもなかったと思うのだ・・

映画初日にはザ・バンドの(よくも悪くも)フロントマンだったロビー・ロバートソンのサイン色紙が先着何名だかにプレゼントされるという情報もあり、我々は早い時刻に出かけて行ったのだ。が。

映画館の発券窓口にはすでに長蛇の列が。。
どうすべきか迷った末、我々は当時の慣行に従い、
窓口ではなく劇場入り口に並んだのだ。

当時は映画館は指定席などはなく、人気作はこうして並んだものだが
前売を持っていると券売をスルーして入口に並ぶものだった。

そのときは入口にはほんの少しの人数がならんでおり
これはラッキーと思ったのだが・・・
しばらくすると客のひとりである兄ちゃんがおもむろに我々によって来て
「なんでここで並んでるんだよ、みんなあっちにならんでるだろう」
と。
「ま・前売を持っているので普通ここに並びますよね?」
と我々。
「大学生もいっぱい並んでるんだ。殴られるぞ」

暴力にはかなわない虚弱平和主義者なので
我々はすごすごと長蛇の列の後ろに並びなおすことになったのだ。

やれやれ(とピーナツの影響で当時から「やれやれ」とよく言っていたのだがw)と思っているところに、
「本日の特典ロビーのサインは中止となりました」とのアナウンスが
伝言ゲームのように伝わって来た。
もちろん中止の経緯などわかろうはずもない。
暴動が起きるかとおもいきやそんなこともなかった。
78年。

そして長蛇の列にもかかわらず我々は無事1回目の上映に席を確保できた。
場内は大盛り上がりで、冒頭画面にLevon Helmなどとクレジットが出るたびに
おおきな拍手が沸いた。

映画館で拍手が沸くのはそれいらい数えるほどしか体験していない。

****

そんなわけで思い入れのある映画ラスト・ワルツのサントラを中心に
ザ・バンドのアルバムをやはり友人に借りて愛聴していたので、
社会人になりて小金とノスタルジアが芽生えてくると
早速ラストワルツを筆頭に、ザ・バンドのアルバムを揃えた。

時間がたって再び聴き込んで見るとそれはなかなかの傑作であることが
しみじみとわかりなつかしいのだが
同時期にザ・バンドの評伝が2冊相次いで出版され、
彼らがショウビジネスのダーティな世界を泳いでいることも知り、
同時にロビーとリヴォンの確執も知ることになったわけで。


そのころ、ロビー抜きでザ・バンドは再結成されたり
旧アルバムもリマスターされたり
評伝はでるわラストワルツがDVD化されたり
ラストワルツのアウトテイクを含むリイシューCDが出たりと
妙にザ・バンド周辺は動きのあるころだった。

きっと我々の世代(よりちょっと上?)あたりが
業界で力を持って来たからなのだろう(?)

そんな折、ラストワルツのCD発売を記念して
ロビー・ロバートソンが来日し握手会をやるというので
参加券を入手していそいそと出かけて行った。

タワレコ渋谷店のイベントスペースには
はたしてまた長蛇の列が(笑)
整理番号順に入場した場内もぎゅうぎゅうで、
おおお、またザ・バンドの世が来たのかを天を仰ぐありさま。

ロビーはピーター・バラカン氏と対談する形で登場。
ラストワルツでのヤサオトコぶりの面影を残しつつも
体型はほぼ見た目横に倍という感じで
時代を感じずにはおれんでした。

がっしりロビーと握手して帰ったわけですが
アレだけの人数と握手するのはうんざりだろうと内心思ったりもする。

***

リヴォンのほうはザ・バンド解散後も
RCOオールスターズなど精力的なソロ活動を展開していたのだけれど
ワタシはそちらのほうにはいっさい手を出さずに来てしまった。

なにか散漫なザ・バンドという印象を持ったし
ハイライトは結局ライブでやるザ・バンドの曲だったりするので。

きっと今聴けば評価は大分違うモノになるだろうと思うので
あらためて聴いてみようかとも思う。


再結成ザ・バンドのほうも聴いてはみたけれど
やはり今ひとつ踏み込めずだったし。
ロビーのソングライティングの重要性を感じずにはおれなかった。
ロビーだけが曲作りに貢献したのではないというのはそのとおりだと思うが、
彼の貢献もまた大きいものでもあったのだ。

****

リチャードはソロライブCDが後に出てこれは聴いた。
リックもソロで何枚か出しているがこれはノーチェック。
ガーズも同様。
ロビーのソロは聴いている。最近出たアルバムは良い出来だと思う。

5人のうち3人が鬼籍になった。



最後にリヴォンの勇姿を二つ。
映画『ラスト・ワルツ』から








これは最近のものだけどゴキゲンなサウンドだ!


*************

ザ・バンドは最低これを聴け!的リスト↓

Music From Big Pink
Capitol


The Band
Capitol


Stage Fright
Capitol


Northern Lights Southern Cross
Capitol


ラスト・ワルツ 2枚組特別編 限定仕様版
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン






st/STさん補足をお待ち申し上げますよw
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