Credo, quia absurdum.

旧「Mani_Mani」。ちょっと改名気分でしたので。主に映画、音楽、本について。ときどき日記。

「トーク・トゥ・ハー」ペドロ・アルモドバル

2012-04-21 03:10:07 | cinema
トーク・トゥ・ハー リミテッド・エディション [DVD]
クリエーター情報なし
日活



トーク・トゥ・ハーHABLE CON ELLA
2002スペイン
監督・脚本:ペドロ・アルモドバル
出演:ハビエル・カマラ、ダリオ・グランディネッティ、レオノール・ワトリング、ロサリオ・フローレス、ジェラルディン・チャップリン

美しい映画でしたよー。
絵が美しいし脚本が美しいし、ベニグノが献身的(というか怪しく)に尽くす植物状態のアリシアがまた美しい^^
『神経衰弱ぎりぎりの女たち』のころの猥雑な感じは細部に残しつつも映画としては洗練されているなあと感心するのです。

ベニグノはもうあきらかに怪しいヤツで、もともとストーカー気味だったところアリシアが事故にあったところで合法的にストーキングを全うしてしまったようなものである。
嫌われる契機を失ったストーカーの愛の姿は不気味であるけれども美しくもある。
看護士のケアを逸脱ぎりぎりの彼のケアはやはり周囲からは怪しまれるが、よくケアできているという点ではとても美しいのだ。

こういうぎりぎりの愛情の姿を描いたんだと思う。危険で望ましくない愛情にも一分の愛の真実はあるのだということを。

診療所でベニグノを知り合ったマルコは(いや実際には劇場ですでに会っているが)、ベニグノの愛の理解者であるが、ベニグノをすべて肯定するわけではない。
それでもどこかベニグノの孤独と愛の真実を知っていて、ベニグノの後を見届けることになる。
マルコのような存在を持つことが出来たのはベニグノの幸せだったかもしれない。

マルコにそういうものを理解する魂があるということが冒頭の劇場で示される。
ピナ・バウシュの『カフェ・ミュラー』のもの悲しさ。パーセルの音楽とやせ細った女の踊り。
そこでマルコは一人涙を流す。マルコはベニグノと出会う前にあらかじめ泣いてみせたのだ。美しい脚本だ。

アルモドバルはもっと観なければいけないな。



ジェラルディン・チャップリンを久しぶりにみたが、お父様の面影があった。彼女のバレエ教師もなかなかよい風情だった。

カエターノ・ヴェローゾもあまり聴いたことはないんだけれど、すばらしいパフォーマンスだった。天才はおそろしい。


@自宅DVD
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Emi NECOZAWA & Sphinx 【Pyramidia】Release Anniversary LIVE @SARAVAH東京!!行ってきました!

2012-04-18 23:38:26 | 猫沢エミ
Emi NECOZAWA & Sphinx 【Pyramidia】Release Anniversary LIVE @SARAVAH東京
2014.4.14sat

先日行われたレコーディングライブでの録音が
アルバム『Pyramidia』として実を結び、
関西を含む発売記念ライブツアーを敢行した猫沢さん。
そのツアーの東京でのライブに行ってきましたん。

強く感じたのは、猫沢さん「次のステージ」に上がったな、という印象。
とりあえずライブ冒頭からMCのテンションがこれまでになく高い。
きっと意識的にハイテンションで持って行こうとしているんだと思った。勝手に。
最初から「群馬サファリパーク」宣言wをしていた。
これまでのライブをみているワタシは、いつも勝手にこれから観るライブの内容を想定して遊ぶのだが、
このサファリパーク宣言によって、やっと悟ったのだった。

猫沢さんは、当面はサファリパークなのだ。
ぶちかまし系なのだ。
ここにひとつスタイルが出来上がった。
長いこれまでの試行期間から
ひとつのスタイルを引っ張り出した。
今回のライブはアレだ。あの路線だ。

そしてしばらくはあの路線で勝負をするだろう。

こういう定まった感覚は
過去のライブではなかったことだと思うのだ。
いままでのライブはこちらが何が起きるか見守っていたのだけれど
これからしばらくは、変な言い方だけど、がんばってこいよ!と見送るような感覚だ。
送り出した感じ。
ワシは親か(笑)



****

てなことを考えつつ。。以下雑感を

バンドは、スフィンクスは、
がっちり固まりつつも音は定型を破るようにはじけてるという演奏で、
サファリパーク路線としてはかなり来る。
目をつぶって聴いていると、ほんとにジャングルだか草原だかが浮かんでくる。
熱い暑い。

ピアノとギターとサックスとアコーディオンと
ウワものが常に層を成しているので
音圧もけっこうなのだが
それぞれのパートを楽しめる音作りがされていて
歌だけでなくそういう楽しみもあり。
目をつぶっているとなにやら
力の躍動が見えてくるんだよね
「シンコペーション」などではぐるぐる渦巻いているんだけど
新曲の「サレ」(ってどういう意味だ?ケークサレ?wこれから調べまする)などは
コード進行にそって力が下から上へぎゅんぎゅん飛んでゆく。
(意味不明なこと言ってます)

アコーディオン田ノ岡さん


レコーディングライブの重圧を解かれたか
あるいはツアーの道中で解き放たれたか
みんなのびのびと楽しんでぶっとんでいて
とくにぞびらむーしゅのときのグル岩見さんが前へ前へ出て来るところとか
自由な感じでした(笑)
猫沢さんはあの背後のグルの挙動を認識しているのだろうか?(笑)

オープニングに短いインストナンバーをやったのは新鮮だった。
歌にこだわらずこういうこともできるわけで、面白いですな。

ギター円山天使!


ぶちかまし路線で、長いインスト部分にソロ回しという曲が
サファリパークとしてはメインなのだが、
ワタシの好みとしては、形の決まったコード進行の豊富な歌の曲に
ジャズでもロックでもない(あるいはその両方の)スフィンクス的なアレンジが施されたものに
心惹かれるのだった。
例えば「レントゲン」のような。
サファリパークに美しく建つ透明な構築物のような感じに聴こえる。
こういう幻視しちゃうんだよね音楽聴いてると。

いつも客席左よりの席に座っちゃうのに気づいたので、
今回右側に陣取ってみましたら、
初めてドラム末藤氏を激写することが出来ましたw




とりとめもなく雑感でした

*****

セットリスト
(introduction)
Le Tourbillon
C'est vous sur le pont
Requiem pour un C.
Septagon
Colors
Rontgen
Syncopation
Zobi la mouche
Madrigal
Zo-wa-z'oiseaux
Boia de TABAC

サレ



ほぼ毎回やっていた「私の世界」などは姿を見せず
「ぞび~」と「ぞわぞ~」が定番に。
そして新曲がこれから増えて行く気配が。

シンコペーション、新曲サレと、新しい曲がパワフルでウレシイ。

いまだパワフルな旧作傑作群もこのバンドで生まれ変わってほしいとは思うが、
当面はこれで突っ走ってください(笑)






ライブでやった曲のほとんどが聴けるすてきなアルバム
興味ある方はぜひお買い求めください!!(ステマ)

Pyramidia
 
disques monoprix

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「サバイバル・オブ・ザ・デッド」ジョージ・A・ロメロ

2012-04-14 15:38:01 | cinema
サバイバル・オブ・ザ・デッド [DVD]
クリエーター情報なし
Happinet(SB)(D)



サバイバル・オブ・ザ・デッドSURVIVAL OF THE DEAD
2009アメリカ/カナダ
監督・脚本:ジョージ・A・ロメロ
出演:アラン・ヴァン・スプラング、ケネス・ウェルシュ、キャスリーン・マンロー、デヴォン・ボスティック、リチャード・フィッツパトリック

主役は人間だっ!
ということで、前作『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』のスピンオフ的な設定で始まるこの映画、ゾンビの存在はもはや既定事実。「ゾンビ後」をどう生きるかで鋭く対立する人間集団のこれまた悲惨な末路を描くという変則技で来た。いや変則ではないか・・

設定がアメリカの田舎の島というせいもあるのか、ある種の西部劇を思わせる。といって想起されるのは黒澤『用心棒』を下敷きにしたイーストウッド主演『荒野の用心棒』における両家の争いなのではあるが。。。。


【以下ネタバレよ】

田舎の島でどうやら因縁深い確執のありそうな二つの地主家族。「ゾンビ後」における両家の争いは、ゾンビたちの扱い方をめぐるものってのがいい。
片方の家はゾンビは片っ端から止めを刺して(頭をつぶせば葬れるという「ゾンビルール」踏襲w)島からゾンビを一掃しようという意図。
それに対してもう片方は、ゾンビといえども生命ある(?)ものを殺すのは神の道に反する(!)とばかりに、ゾンビを飼いならし共存の道を探ろうという主張。
こりゃあすごい対立だ。

一旦は勢力負けして島外へ追放された前者の家族が、ゾンビ後の世界でYouTubeを活用して「安全な島があるよ~」と宣伝し、集まってきた逃亡者から身ぐるみ剥ぐ悪行で生活しているってのも実に味わい深い(笑)
そのYouTubeにまんまと引っかかってきたのが、前作でやはり追いはぎをしていた州兵崩れの一団。追放されていた家族の長はその州兵崩れを利用して再び島に舞い戻ってみると、そこではゾンビが鎖につながれ、郵便を配達していたり農作業をしていたりしていた(笑)←ゾンビは生前の習慣を死後繰り返すというゾンビルール踏襲。

いや、これどうなるんだろうねという話ですよ。


ということで、両家の対立に若い娘の冷徹な視線とか闖入者である州兵のスタンドプレイとか細かく仕込みがあるわりには案外盛り上がらない(^^;)
ゾンビの不意打ち登場とかそれをぶっ飛ばすやり方とかもいちいち工夫が凝らされているけれども、だんだんゾンビ自体による恐ろしさとかスリルには慣れてきちゃって、ほとんど背景のようなものである。

なのでホラー映画としての期待を胸いっぱいに持って観るとちょっとがっかりするかもしれない。最初の『ナイト・オブ・ザ・リヴィングデッド』から本作まで、通して観るならば、こういう作風もありだよなと納得するとは思うのだが。
単体としては前作のほうが面白かったかも。

あの姉妹は一人二役やってるのね?同時に出ていたけどどうだったかな。。


@自宅DVD
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「レイキャヴィク・ホエール・ウォッチング・マサカー」ユリウス・ケンプ

2012-04-12 01:53:22 | cinema
レイキャヴィク・ホエール・ウォッチング・マサカー [DVD]
クリエーター情報なし
アップリンク



レイキャヴィク・ホエール・ウォッチング・マサカー
REYKJAVIK WHALE WATCHING MASSACRE
2009アイスランド
監督:ユリウス・ケンプ
脚本:ショーン・シグルドソン
撮影:ジャン=ノエル・ムストーネン
音楽:ヒルマル・オルン・ヒルマルソン
出演:ガンナー・ハンセン、ピヒラ・ヴィータラ、裕木奈江、テレンス・アンダーソン、ミランダ・ヘネシー、グズルーン・ギスラドッティル、ヘルギ・ビョルンソン、ステファン・ヨンソン


とても面白かったぜ。
スプラッタとしてもスリラーとしても詰は甘い感じはするのだが、
ちょっと普通でない映画を作ってやろうという意気込みのようなものは感じられたよ。

有数の捕鯨国だったが、捕鯨反対の世論から今はホエールウォッチングを観光資源としているアイスランドが舞台なわけだけど、それを背景にかなりブラックなネタを仕込んでいて、その毒にノックアウトされる。
露骨に反捕鯨活動家をコケにするようなセリフ満載で、ことにグリーンピースに対してはもう身の危険が心配なほどすげーことを言ったりする。
同様に鯨に夢を抱いてツアーにくる観光客に対しても毒牙は向けられて(てかそれがこの映画のキモなわけだけど)ほとんどアホマヌケ呼ばわりである。

これは自然保護に身をささげてるような人が観たらもう憤死である。スプラッター部分を除いて観たとしてもそこには血の雨が降ること間違いなし。。。

ワタシはある程度自然環境は保護しないといけないと思っているし、できれば鯨も必要以上には殺すべきではないとも思っているのだが、鯨は哺乳類で高等動物だから殺すべきではないとは思わないし、鯨が人間の友人であるとも思ってはいない。行き過ぎた正論が大手を振ってまかり通る状況は好きではないし、正論の蔭にはたとえ間違っていようともそれによって利益を損なっている人がいる可能性は見失いたくないとも思っている。

その意味で、天下の正論に対して、ざけんじゃね甘ったるいことぬかしてると蹴飛ばすぞ、的なこの映画のブラックさは誤解を恐れずにいえば「痛快」である。反権威の反骨精神である。わしゃ気に入った。


【以下ネタバレあり!】

同様に知的障害者についても皮肉にこの映画に登場する。邪念の記号としては殺戮一家の一員として、邪念の隠れ蓑としては最後に裕木奈江を逃がす彼として、障害者のイメージのステレオタイプをあからさまに利用している。これもデリケートな問題に波及しそうなヤバイネタだ。

その裕木奈江は、日本人の金持ち(には見えないがw)のお付き人として登場するが、かなり卑劣な手を尽くして最後まで生き残る。かと思えば彼女の雇い主と思しき日本人夫婦はまた船上でリバースするは罵倒語にお礼を言ってみたりするはで、同じ捕鯨国である日本と連帯を表明するかと思えばぜーんぜんそんなことはない(笑)

さらには、フィアンセが事故で死んで、彼の夢だったホエールウォッチングに一人で来たの・・とか殊勝なことをいうか弱き観光客女子は、最後には結構利己心丸出しになって結局ああいうことになるので、これも観光客への暗―い仕打ちのひとつだ。

Nae!



惨禍に巻き込まれる彼らを運ぶ船長さんは、『悪魔のいけにえ』で殺人鬼レザーフェイスを演じたアイスランド人俳優ガンナー・ハンセンさんだそうだ。
また、若干ヒロイックな活躍をする黒人青年が辿った末路については、あれはやはりロメロ『ナイト・オブ・ザ・リヴィングデッド』のラストから連なるものだろう。アイスランド初のホラー映画ということで正統な敬意の表しかたをしているのだろうところがまた好感が持てる。
一方で同年に製作されたロメロの『サバイバル・オブ・ザ・デッド』にも同じ殺し方(照明弾ね)が出てくるのは、同じ志を持つものの共鳴か??

DVDの特典のインタビュー映像では次回作も計画されていて、そこでは唯一裕木奈江の出演だけが確定していると監督が言っていた。日本でバッシングされた彼女がこうして国外で活路を見出しているのは応援したくなる。リンチ映画にも出ていたことだし、もっと活躍している姿を見たい。
もしいわれのないバッシングに加担したという後ろめたさを持っているなら、日本のマスコミよ、どこか1社でも罪滅ぼしに彼女を起用してドラマを1本でも作ってみたら?(どうせもうそんなこと忘れてしまっているんだろうけどね)



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