Credo, quia absurdum.

旧「Mani_Mani」。ちょっと改名気分でしたので。主に映画、音楽、本について。ときどき日記。

「ラ・ラ・ランド」デミアン・チャゼル

2018-04-30 23:54:18 | cinema
ラ・ラ・ランド(字幕版)
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ラ・ラ・ランド スタンダード・エディション [Blu-ray]
クリエーター情報なし
ポニーキャニオン



録画してたのを観ました。

素晴らしいというところはほぼなく(汗)
ツッコミどころも満載であるのだが、
でも嫌いじゃないのよねこういうのはw

夢がおいそれと抱けない今の世の中に
かなりおいそれと夢を描いてしまうという、
話の根幹の非現実性からして、もう全く腰が座らないわけだけど、
これも、日常はダメダメだけど夢はあるという時代(の映画)へのオマージュ?な訳だから、
まあ仕方がない。

全編骨格から細部から徹頭徹尾オマージュ?リスペクト?参照?引用?だと思われるので、
そういうコンセプト?は見事に成功していると思われる。

そのせいで、この映画は「ステレオタイプのなんも考えてない映画」って線を
辛うじて回避できちゃってるのではないか??

オマージュの快楽?ってあるじゃない?
これってアレっぽいでしょ?いいよねーアレ!いやー最高だ!みたいなw

その快楽はワシは好きだし、ここで指し示す世界だか価値観だかも結構好きだし、
そういう楽しみには浸りましたねー。

それの有効性とかは別の議論ですが。。。。

******

現代性ということでは、セブの生き方の軟弱な感じでしょうかw
古いジャズのささやかな復権に心身を捧げる風なことを言いつつ、
メジャーバンドの軽薄なキーボードプレイで稼いでお金を貯める。
そのことの善悪だか苦悩だかは突き詰められない。

とか、結局店の名前をあれにしてるんじゃんwとか

それはまあ、人間が描かれてない!
というよくある批判にがっつり該当するわけで、
実際描かれないのは残念でもあるけれど、
ワタシの感じ方としては、実際の人生ではそんなに突き詰めたり考えたりしないで行動することも多々あるので、
ことさらに人間の真実だの何だのを必ずしも映画で描かなくても良いのでは。。
むしろそういういい加減性とでもいうか、かっこ悪く適当〜なあり方もまた人生なんだろうと思う次第で、
そういうことが許される時代でもあるだろうと思うのよね。

そういう意味で、セブのモヤっとしたところは現代的。


あとは、彼らのダンスがなんとも下手くそというか、
素人臭いのも、ちょっと耐え難いところでもあるのだが(笑)
これまた今の時代にジンジャー&フレッド的なプロフェッショナル性てんこ盛りのダンスを披露するのも少しうすら寒い気もする。。。

あの、虚構の中にありながら、「俺らはあなた方の望むプロです、今からプロの技を披露しますんでとくとご覧あれ!!」みたいな役者の現実の姿を見せてくるみたいな、微妙な間合いは、当時というか往年の意識に対してしかアピールし得ないのではないかしら。。。

ということで、これも単に下手だと言って笑うこともできない、
この作品にある現実性の一つではなかろうか。。と思いました。。
(しかし一方で、オマージュ芸一徹の作品なのであれば、
昔ならではの過度の職人性のアピールってのをやっても良かったのではないかとも思う。。)

****

ライアン・ゴズリングの驚異的な特訓の成果たるピアノ演奏は、
もしかしたら過度の職人性アピールという往年のノリを醸し出す工夫だったのかもしれない?
が、しかし、あれがオールドスタイルのズージャに心身をささげている男の演奏する曲なのか??
という素朴な疑問にめまいがするわけで、
そこはせっかくの特訓も100%は生きなかったのではなかろうか(涙)

というか、あれが古き良きジャズです、と言った途端に、
いわゆるジャズファンの人たちは一気に敵対勢力に回ってしまっただろう(苦笑)
もったいない。。。


ワタシ的には、ジャズかどうかとは別に、あれらの曲はむしろ好みなタイプでよかったんだけれど。

最初からジャズピアニストじゃなくてもっと普通のポピュラーの人とかに・・・
・・すると、今度はメジャーバンドで稼ぐ背徳感が出せないのか・・・

と考えるとやっぱいろいろ問題はあるねこれは(笑)

****

オープニングは「ロシュフォール」+「ウィークエンド」みたいなノリで
割と好きだけど、「ロシュフォール〜」のあのノリ自体が結構好き嫌いあるよね。

「ウィークエンド」とくるならジャック・タチということになるわよねー
ということで、その辺の物をまた観たい!!!

オープニングの曲は元々は「traffic」というタイトルだったと言うことだから、
きっと踏まえているんだろうね。


あ、あとエマ・ストーンが自分で歌っているということらしいのですが、
彼女の歌は大変好きよ♡



@WOWWOWにて
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「高い城の男」P.K.ディック

2018-04-23 23:06:54 | book
高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF 568)
クリエーター情報なし
早川書房


自称ディックファンでありまして、
自宅本棚には「ディック棚」がありまして、
そこももはや溢れ出て増設を要しているだけでなく、
そこにある本のほとんどはちゃんと読んでもいる。

にもかかわらず、ディックの大出世作であり、ヒューゴー賞を受賞し、
一般的にも代表作のトップと評されている本作を、
これまで読んでおりませんでした。

が、最近、いくらなんでもそれではマズかろうと不意に思い、
ついに「ディック棚」から昔購入した本書を引っ張り出したのです。

「ディック棚」としていたおかげで、我が家としては異例なことに、
本書は20秒くらいで発見されました。

しばらく見ないうちにすっかり赤茶けたなーオマエ。。。
と手にとって開いてみると、文字が小さい!w

最近は文庫本も文字が大きくなったのね〜

****

ディックらしいモチーフというかテーマを真ん中に据え、
ディックにしては珍しく破綻がない(笑)のに感心しました。

世の大きな趨勢に翻弄されその内外で
懸命に生きる個人の心のひだやその揺れ動き、
変遷を、絶妙な細部とともに絶妙に掬い取るのが、
ディックの驚くべき能力のひとつだと思うんだけど、
ここでもその力は遺憾無く発揮されていて感動的。

日本の支配層の重鎮である田上の、
立場に基づく行動の裏で武士道的達観と、
ドイツの観念的な悪と、被支配層アメリカの失われつつあるヒューマニズムとの間で揺れ動き引き裂かれる様は見事であるし、
それを筆頭に、人物一人一人が、
立場や出自の上の必然や偶然を受け止めて
行動を決して行く姿がちゃんと描かれている。

歴史改変モノとしての設定の面白さというよりは、
彼らの生き方、思考によって醸し出される思想が本書のメインテーマ。

とはいえ小説なので、
思想が整理され明示されるのではないところがこれまた魅力。

フランクが自身でも確信のないままに無価値と目される現代工芸に道を見出し、
関係者も無価値と一蹴しながらも心動かさせるところや、
「高い城」に住んでいると目される小説内小説の著者が実は無防備に暮らしていること、
そもそも易という手法が人々の行動原理として定着していることなど、
整理すれば意味を見出すことが出来ようが、
ぼんやりとここには何かあると思わせる力場が小説では生まれるのである。

素敵だわ。

ドイツのあり方について、
彼らの善悪が形而上学的なものだというくだりなど、
さりげなく突然本質を掴みに行くところも大変にディック的。

「ドイツ人にとって『善』はあっても、『この善人』とか『あの善人』というものはない。
観念が具象に優先する。それがナチズムの根本的な狂気の正体だ。それが生命にとって致命的なのだ」


日本が過度に好意的に描かれてているとか、
日本のことがわかってないとかいう批判もあるようだが、表面的というか、
そういう類のリアリズムではないということだとワシは思う。



本作の「精神的な続編」と言われる「ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン」が近年上梓されており、
そちらも楽しく読んだが、
精神的というより現代リアリズム的続編又はサイドストーリーって感じかなと思いましたです。
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猫沢エミ&スフィンクス 大江戸"E-DO"演奏会 行きました

2018-04-18 00:22:06 | 猫沢エミ
4/13(金)ティアラこうとう小ホール
猫沢エミさんの知る限り初めての指定席ライブ行ってきました。

終演後いつもよりなんかからだが楽だな。。と思ったんだが、
あれだ、ホールのちゃんとした椅子だったからだww

*******

ほぼ聴き慣れた曲ばかりであるものの、むしろそれ故にライブの一期一会的な感覚、
ああ今この音の場にいるんだなと、しみじみと今を堪能したです。

というか、ひとつひとついちいち胸が熱くなりもう大変。音楽の来し方を思ったり、
それを聴いてきた自分の変遷なども思ったりして、、いや、思うのとは違う、、、
音の引き起こす感覚にそういうものもなにもかも含まれてる。

ということで、以前はセットリストメモったり写真も撮ったり感想も
たくさん書いたりということが楽しくもあったのだが、
今や、いやもうこの音楽だけでよいっす。十分です、有り難や有り難や的な境地。

********

ほんと完全にいつものメンバーの出す音は、慣れとも洗練とも違う、
安定したしかし何か先に進んでいるって響きで、もはやなんもいうことがない。

新しい選曲としては、昨年(だったかな)マーク・ド・クライヴロウとのコラボで生まれた曲「For You」で、
こういう静謐でエモーショナルで醒めて熱く幅広くうつろうみたいな音も完璧に表現しちゃうのがほんと好き。
なんかライブの方がグッときた。

(モジャゲ氏も関係しているこのコラボの経緯はどこかで読んだんだけどすっかり忘れてしまった。。。
  不覚。。。。
    後で復習しよう。。。。。)


最後のぞわぞわぞのソロ回しでも、それぞれなんというか、
ソロらしいソロをそつなくやって俺どうよ?みたいなカッコつけではなくて、
その場で出る、枠も何もない、えーと、人としての自由の音。

特にピアノソロで、激しい曲の中に静かに流れる空間をどーんと作ったとこが好きよ。
いやーもうこういうの好きよ。


と結局くだくだと書いてしまう。。



MOJAGE - For You (Studio Recording MV)




******

トドメのアンコールのあれはもうまずい。
胸いっぱいになりすぎて、自分の殻に引きこもってさっさと帰りたいって世界。

猫沢さんの胸中を勝手に想像するってのもありますが、
聴く人みんなそれぞれの自分の思いにこと寄せて泣きますよ。あれは。
そういう普遍性のある歌。

終演後はうまく人と話せませんでした。。
(まあいつも上手くは話せんが)



おなじみ真館さんデザインによるパンフとポストカードもお得感。

パンフには猫沢さんの文章があり、
メジャーレーベル?時代はやはりやりたいこととは違うことをやっていた的なことがありました。
たしかに今の音楽とは違う昔のポップソングたち。
でも昔のレコーディングにもやりたいこと、込めたい思いは精一杯込めようとしていただろうと、
ワタシには思えるのよね。

その辺のパッションがずっと続いて流れているので、
昔の音も今の音もワタシはシームレスに好きであるのよね。たぶん。わからんけど。。

うーむ、いっぱい書いた。。。

********


あ、そんで、きーかなさんとスエフジさんが!?!?ってのが実はその日一番衝撃の展開かもww



ステージ写真はそういうわけでこれだけ


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