| スマイルBEST ブリキの太鼓 HDニューマスター版 スタンダード・エディション [DVD]Happinet(SB)(D)このアイテムの詳細を見る |
ブリキの太鼓DIE BLECHTROMMEL
西ドイツ/フランス1979
監督:フォルカー・シュレンドルフ
原作:ギュンター・グラス
脚本:ジャン=クロード・カリエール、フォルカー・シュレンドルフ、ギュンター・グラス、フランツ・ザイツ
出演:ダーヴィット・ベネント、マリオ・アドルフ、アンゲラ・ヴィンクラー、ハインツ・ベネント、ダニエル・オルブリフスキ、シャルル・アズナヴール、アンドレア・フェレオル、カタリナ・タルバッハ、マリエラ・オリヴェリ、フリッツ・ハクル 他
約30年ぶりに再鑑賞。
この映画については自分にしては内容をよく覚えていて、若い頃の明晰だった記憶力がなつかしい(笑)
それでも構図や動きなどは大分記憶と違っていたところもあり、新鮮に楽しめもした。
フランス映画社配給の映画を見たのは、本作日本公開(81年)の数年前(79年)に『木靴の樹』を観たのが初めてだったと思う。『ブリキの太鼓』もフランス映画社だなあと思い、期待したのを覚えている。その後観る映画観る映画「BOW」の文字がクレジットされていて、大変お世話になることになる。
本作を観た劇場はどこだったか・・もう記憶にない。
そんなに小さな劇場ではなかった。
そのころは今のような中堅ミニシアター的なものはそんなになかったし、ミニシアター(なんて言葉もなかったと思う)と呼べるところは本当に小さく設備もミニマムなものだったと思うので、本作も結構普通の映画館で上映していたのだと思う。
まあ、カンヌやアカデミー賞で立派な賞を取っていたし、それもあるだろう。
今だったら逆に単館上映ものになっているだろう。
立派な賞をとったうえに原作者がノーベル賞作家だとか、そういう話題があったためか、結構子連れのお母さんのようなお客さんも結構見られた。
その結果か、刺激的なシーンの連続に途中で席を立つ人々もちらほらと(笑)
****
3歳の誕生日に成長を止めることを決意した異形の存在としてのオスカルの目を通して、つきはなした冷たくグロテスクな視点で描かれる家族や友人の姿は悲しく滑稽で、時代の大波の渦中であわれにくるくると翻弄された人間の世のなんというか無常/無情をよく表している。
好きな映画なので、細かくあれこれ考える気に全然ならないので適当に言っておくが、こういう無常/無情を、価値判断や感情抜きにあくまでもつきはなして描くという態度は、実際にそういう社会や歴史に生きざるを得ない人間の、表現者としての切実さの表れなのだと思う。
悲惨のなかには滑稽があり、美の中にはグロテスクがある。その逆もしかり。そういう現実をそのまま物語にする態度。そういう映画が可能であること。ワタシはこの映画でそれを学んだのだと思う。
*****
生々しい性交シーンが2ないし3箇所出てくるが、白状すると10代だったワタシの脳にもっともはっきり刻まれたのがこれらのシーンであった(笑)
これにしたって、人間はこういう欲望に動かされた飾り気のない行為を普通にするわけで、それを映画にしたって別にいいんだ、という単純なことを教えてくれたわけですけど。
映画は実はなんでもありで、こういう赤裸々な姿の出てこない多くの映画は、そういう文化的コードの制約を受けているものなんだ。コードはどんどん相対化してしまってもいいんだ、と。
セックスシーンが露骨だと途端に「必要があるのか?」とか言って拒絶する向きも散見するのだが、その反射的判断もなんか不思議なことだよな~
そういや劇場では接合部にはボカシがかかっていたかもな。いや別にもろに写ってるわけではないですけど。
****
オスカルを演じたダーヴィットについてももちろん印象的。
彼はまさに誕生する直前の胎児!から、終盤15歳?だったか?にふたたび成長を始めることを決意した後の微妙に大きくなったように見えるオスカルまでを演じてしまうわけで、実に驚きなのだが、さらに驚くのは、撮影当時ダーヴィットは11歳だとのことで。
後にこの6年後に公開された『レジェンド』(85年)でのダーヴィットも観たが、ほとんど雰囲気は変わっていなかったし。
恐るべし。
****
例の牛だか馬だかのウナギシーンとか(映画で人が吐くのをここではじめて観たかも)、アグネスの貪り食うナマのアレとか、オスカルが撹乱するナチス集会とか、好きなシーンがいっぱいの、心のふるさと的映画でありました。
人気blogランキングへ
↑なにとぞぼちっとオネガイします。