Credo, quia absurdum.

旧「Mani_Mani」。ちょっと改名気分でしたので。主に映画、音楽、本について。ときどき日記。

「モリコーネ 映画が恋した音楽家」ジュゼッペ・トルナトーレ

2023-02-14 10:29:00 | cinema

「モリコーネ 映画が恋した音楽家」ジュゼッペ・トルナトーレ

やっとこさ観に行けたモリコーネ
若いころから晩年まで、割とまんべんなく追った印象のドキュメンタリーでした。

映画の音楽をやることで、アカデミックな師匠や同僚との軋轢などから生まれる罪悪感のようなものを
ずっと背負っていたという話が印象的。

重厚で感傷的なサウンドとメロディで魅せる一方で旺盛な実験心を持った作品もあり、
職人と開拓者が同居する稀有な存在だったが、
その罪悪感を音楽の芸術性(というか映画音楽としての芸術性の追求か)を高めることで克服していく過程でもあったのだろう。

後年にはその業績、あるいは映画音楽の芸術的な価値が世界的に認められるとともに、
モリコーネを批判した師匠との和解もあり、観ているこちらもああよかったなと感慨深し。。

このドキュメンタリーでは、様々な映画の具体的なカットを取り上げて、
当初監督が想定したなどの音楽が付いたバージョンと、のちにモリコーネが作曲したバージョンを比較するような箇所も多く、
モリコーネが持つ、映画のシーンをとらえて音楽として呼応する才能を、我々にも実感として与えてくれるのが面白い。

***

さて、と、
私的にはモリコーネというと…

だいたいは子供のころからときどきTV放映される「夕陽のガンマン」などのセルジオ・レオーネ。
イーストウッドのレオーネは大体(TVで)観ているのだが、具体的なシーンの記憶は完全にごっちゃ。

次に意識されたのはおそらく「エクソシスト2」のあの禍々しい音楽
具体的に似ているということでもないが、なぜかジョージ・クラムの「ブラック・エンジェルズ」のようなやはり禍々しい音楽に通じる印象がある。
バズズのテーマのロックバンドバージョンもかっこよくて好きである。
(あれはダリオ・アルジェント味(というかゴブリン味)があるね)

そういうモリコーネの音楽ということを認識しつつ観たのがベルトルッチ「1900年」で、
あのテーマ曲は、映画館で一度観ただけなのに後日もそれなりに歌えたくらいに印象的。
(後にDVDで再観したのでみずみずしい記憶としてはもう残っていないが)

パゾリーニもだいたいモリコーネなんだが、あまり印象に残っていない。
たぶん絵の印象が凄すぎて音に気が回らないのだろう(?)

「ソドムの市」はむしろモリコーネの音楽ってどこにある?という不在感によって印象に残っている(汗)
劇中で演奏されるショパンなどの既成曲しかないように思ったが、
(IMDBでサウンドトラックリストを見てみたところでもそんな感じ)
もう一度見て確認する気力がわかないのであります。。

あとはポランスキー「フランティック」
こちらは暗く洗練されたシティミュージックin 80' soundという趣で、ベースがかっこいいやつ。
映画としてはピアソラ+グレイス・ジョーンズのリベルタンゴのほうが印象的かもしれないが。。

セルジオ・レオーネ「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」も
これは音楽は王道的すばらしさなれど、お話が悲しすぎて(長いのもあるけど)おいそれと見返すことができない。

誰もが推すであろう「ニュー・シネマ・パラダイス」と「ミッション」はなんと観ていない。。

 

というわけで、このドキュメンタリーでは「エクソシスト2」「フランティック」「ソドム~」についてはなにも触れられていなかったのは個人的に残念なところ。

関係者のインタビューの合間や背景には、モリコーネが音楽で関わった無数の作品から引用される無数のカットがさしはさまれるのだが、そこには「ソドム~」はあったけれど「フランティック」はあったかなあ?
無かったと思うが、見落としているだけかもしれない。

2023.1.30@Bunkamura ル・シネマ

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2022年を振り返る~極私的映画鑑賞記録~

2023-02-13 15:18:03 | cinema

2月になってしまいましたが、恒例の振り返りを

2022年に観た映画は以下のとおりでした

「TWIN PEAKS limited event」デヴィッド・リンチ
「屍者の帝国」牧原亮太郎
「ユダヤ人の私」クリスティアン・クレーネス、フロリアン・ヴァイゲンザマー、クリスティアン・ケルマー、ローランド・シュロットホーファー
「スクリーマーズ」クリスチャン・デュゲイ
「ひまわり」ヴィットリオ・デシーカ
「MEMORIAメモリア」アピチャッポン・ウィーラセタクン
アクターズ・ショート・フィルム2
 「理解される体力」前田敦子
 「ありがとう」永山瑛太
 「物語」玉城ティナ
「山猫 イタリア語完全復元版」ルキノ・ヴィスコンティ
「A.W. アピチャッポンの素顔」コナー・ジェサップ
「シャルロット・ゲンズブール 愛されすぎて」ジャック・ドワイヨン
「ポーラX」レオス・カラックス
「アネット」レオス・カラックス
「オフィサー・アンド・スパイ」ロマン・ポランスキー
「ペイ・チェック 消された記憶」ジョン・ウー
「スティング」ジョージ・ロイ・ヒル
「都会のアリス」ヴィム・ヴェンダース
「さすらい」ヴィム・ヴェンダース
「まわり道」ヴィム・ヴェンダース
「ジェームズ・ボンドであること:ダニエル・クレイグの物語」
「冬の旅」アニエス・ヴァルダ
「エディット・ピアフ ~愛の賛歌~」オリヴィエ・ダアン
「DUNE/デューン 砂の惑星」ドゥニ・ヴィルヌーヴ
「ホドロフスキーのDUNE」フランク・パヴィッチ
「ドラキュラ」フランシス・コッポラ
「マイノリティ・リポート」スティーヴン・スピルバーグ

介護関係でいろいろと多忙で映画を観る暇もなく、と思っていたが、
意外にそれなりに観ていましたです。

「TWIN PEAKS limited event」は映画というべきかというとなにですが。。
TWIN PEAKSはTVシリーズや映画や音楽や出版物などの一連の創作によって、
なんだか人間の深淵の混沌を掬い取った稀有な物語になっているように思いました。
ただのブームになったドラマとは違う。。

アピチャッポン・ウィーラセタクンの作品を初めて見ました(MEMORIA)が、
これも実に素晴らしいものでした。
ふだん「映画は映画館で観るべき!」とは言わないですが、
これは大きい音で低音がしっかり出る環境でないと伝わらないものがある
(というのも映画館で観たのでそう思うだけかもしれないが)

カラックス(とスパークス)の新作「アネット」も駆け付け系
同時にそれを機に回顧上映があった「ポーラX」をようやく鑑賞
ずっと見逃していていつの日か~と思っていたので感慨深し

ポランスキー「オフィサー・アンド・スパイ」も駆け付け。
比較的王道な作りの本作なれど、冒頭からポランスキーらしい禍々しさ。
物語としての解決は、普通ならカタルシスとして処理されるはずが、
ここでは全く解消されない差別感情に満ちた社会の前景として、絶望的にただ置かれて終わる。

ヴェンダースのいわゆるロードムーヴィー3つを再鑑賞
ヴェンダースはこの3本が一番素敵と思う。

なぜかフィリップ・K・ディック原作物をいくつか観た
「スクリーマーズ」は終盤はともかく割とディック作品の持つひんやりとした不安感をよくとらえていたと思う。
「マイノリティ~」と「ペイチェック~」は再観

********

この間に岩波ホールが閉館し、ゴダールが亡くなりという2022年でした。

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