Credo, quia absurdum.

旧「Mani_Mani」。ちょっと改名気分でしたので。主に映画、音楽、本について。ときどき日記。

「メッセージ」ドゥニ・ヴィルヌーヴ

2017-06-21 02:36:35 | cinema
テッド・チャン「あなたの人生の物語」を原案とした映画ということで、
楽しみにしておりましたが、やっと観ました。

*****

原作はいかにも映画化が難しそうなものでしたので、
いったいどうやって映像化しているのか?と興味津々。

原作では、異なる言語を習得することで、物事の認識の仕方も変化する、という、
「サピア=ウォーフの仮説」に基づき、言語学者がエイリアン(ヘプタポッド)の言語を理解するにつれ、
これまでとは違った認識を得るようになる。

ということの一方で、その新しい認識とはどのようなものかを、
変分原理の一つである「フェルマーの原理」により基礎づけ描写している。

この2点が小説の面白さの核であり、また特に変分原理による「なるほど!」感は、
一番映画化が難しそうだなーと思っていた。


本作では、その困難な部分は潔くバッサリ切って、
ヘプタポッドの認識においては時間という概念がないことを所与のものとして扱い、
ヘプタポッドとのコミュニケーション成立の過程、それにより主人公が自分の人生をどう再構築するか、
そしてそのような認識を得た後にどのようなことが起こりうるか、に絞って、
小粋なタイムパラドックス風味のエンタテイメントに仕上げている。

原作にないモチーフも上手く組み込まれており、よく考えられた作品になっている。
さすが。

****

原作にないものの一つが、ヘプタポッドに対する世界の各国の対応の描写。
そこに世界は協同してより良き世界を作る努力をしなければならないという「メッセージ」を込めている。
こういう発展の仕方もこの物語にはあるのだな。

あと、ヘプタポッドの文字の成り立ちについても、
彼らの認識様態を踏まえた面白い説明が原作にはあるんだけど
ここらへんもカット。
ここは映画に入れてもよかったかもしれないが
ちょっと冗長な感じはするかもね。

******

映像も、暗い色調をベースに、「現場」の殺伐とした雰囲気と、
それに対する主人公の「人生」を対比的に描き出してグッド。


音楽もよいねー。サントラ欲しいかも。
冒頭と終盤に使われるのはマックス・リヒターの「on the nature of daylight」で、
こういう曲は映像とともに流れると、なかなか来るものがあるねー

もう1曲既成曲があったと思ったが、クレジット読み損ねました。

ヨハン・ヨハンソンによるその他の音楽も、
ヘプタポッドの認識を表現するかのような不思議感があり大変に好み。

クレジットにはボーカル指揮にポール・ヒリアーの名があったけど、
ボーカルアンサンブルの曲ってあったかしら?


Max Richter - On the Nature of Daylight


リヒターについてはこちらの記事がまとまっているかも。

あと原作についての昔の(超適当な)記事はこちら
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